骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-10-26 21:18


[CINEMA]『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』クロスレビュー「人間関係の不器用さ、家族への豊かな愛情など様々な顔をみせてくれる」

ミステリアスであるがゆえに、近づきたいという思いを掻き立て、多く語られるグレン・グールドに迫るドキュメンタリー。
[CINEMA]『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』クロスレビュー「人間関係の不器用さ、家族への豊かな愛情など様々な顔をみせてくれる」
『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』より (c) Personal photo of Christopher Foss (son of Cornelia Foss)

グールド研究の大家である宮澤淳一氏も指摘するように、映画や書籍、写真集に至るまで、グールドほど数多く関連作品が発表されているクラシックのピアニストはいない。録音された楽曲はもちろん、彼のパーソナリティになぜこれほどまでに惹きつけられる存在なのか、グレン・グールドの功績と人生を遺漏なくまとめたのがこのドキュメンタリーである。

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『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』より

数々の逸話のなかでも、モスクワ公演で最初は空いていたホールが、彼の演奏を聴いて驚いた観客が休憩時間に電話をかけたことから、コンサート後半には満員になったというエピソードや、キャリア後半に編集技術を駆使しラジオ番組制作にのめりこみ、のちのデスクトップ・ミュージックの出現を予測するように、メディアを介在して広まることに尽力したことなど、彼の大衆性と先鋭的なセンスを検証する場面がいくつも登場する。つまり、Youtubeやニコニコ動画を通してユーザーがアップした音楽を楽しむのが日常となった現代にこそ、グールドの音楽は聴かれるべきであり、また彼のメッセージは有効となるのではないだろうか。

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『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』より

今作のハイライトのひとつである、彼を取り巻く女性たちの証言もまた、神格化された彼のイメージを地に引きずり下ろすような、とても生々しいもので、やはり彼も人間だったのか、という当たり前の感想だけでなく、表現者にとって、生活と周囲の人との関係性がいかに重要なのかということをあらためて教えてくれる。とはいえ、決して彼がその後の世界の音楽界に与えた甚大な功績が揺らぐことなく、むしろ、家族を愛し、恋人を愛した人間グールドとしての姿が、さらに彼の革新的なピアノの響きに豊かさを与えてくれるような気がしてならない。

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『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』より

▼『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』予告編





公開初日、2日目にトークイベント開催!!

『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』公開記念トークイベント
第一夜
2011年10月29日(土) 18:45の回、上映前 (18:30開場、17:30受付開始)
ゲスト:吉野朔実(漫画家)、宮澤淳一(青山学院大学教授・グールド研究)
第二夜
2011年10月30日(日) 18:45の回、上映後 (18:30開場、17:30受付開始)
ゲスト:片寄明人(ミュージシャン・プロデューサー)、國崎晋(サウンド&レコーディング・マガジン編集長)
会場:渋谷アップリンク・ファクトリー(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F tel.03-6825-5502)[地図を表示]

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映画『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』
10月29日(土)、渋谷アップリンク銀座テアトルシネマ他、全国順次公開

監督:ミシェル・オゼ、ピーター・レイモント
プロデューサー:ピーター・レイモント
編集:ミシェル・オゼ
撮影:ウォルター・コルベット
出演:グレン・グールド、ジョン・ロバーツ、ウラディーミル・アシュケナージ、コーネリア・フォス、ローン・トーク、ペトゥラ・クラーク、ケヴィン・バザーナ、ロクソラーナ・ロスラック、フランシス・バロー、ハイメ・ラレード、フレッド・シェリー、他
2009年/カナダ/HD/16:9/英語/カラー/108分
公式サイト


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