骰子の眼

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埼玉県 さいたま市

2011-10-25 19:30


ダンスと劇場と現代の身体をめぐる、ジェローム・ベルからの意表を突く問いかけ『The Show Must Go On』

ジェローム・ベルが語る“ザ・ショー・マスト・ゴー・オン”誕生から今日まで
ダンスと劇場と現代の身体をめぐる、ジェローム・ベルからの意表を突く問いかけ『The Show Must Go On』
『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(2004年のローマ公演より) ©Mussacchio Laniello

11/12(土)・11/13(日)、日本版キャスト26名により上演されるジェローム・ベル『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』。ベルの代表作であると同時に、"悪名高い"ともいわれる本作は、観客に混乱、衝撃を与えるとともに賛否両論を呼んできた。誰もがよく知るポップソングが流れるなか、舞台上で繰り広げられるのは奇しくも反スペクタクルなパフォーマンス。現在開催中のフェスティバル/トーキョー11の最終公演となる本作は、現在の日本でどう展開され受け入れられてゆくのか。前回掲載したベルの作品解説に続き、今回は本作についてベル自身が語るインタビューをお届けする。


――『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』は一体どこから着想を得たのでしょうか。

もともとはダンサーと役者の両方が出演する作品を作ることになっていました。そこで私は、ダンサーと関わりのある「音楽」と、役者と関わりのある「言葉」の、そのどちらもあわせ持つ「歌」を使うアイデアを思い付きました。そして、誰でもパフォーマーになることができ、観客の誰でも理解できるようにと、コンセプトを絞っていきました。こういう理由で、誰もが慣れ親しんでいるとても有名なポップソングだけを使うことに決めたのです。そして選曲は、自分が面白いと思える演劇的もしくはダンス的なシーンを創れるかどうかを基準にしました。歌自体は作品の目的ではなく、自分が面白いと思えるシチュエーションを創り出すための道具にすぎません。

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『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(2004年のローマ公演より) ©Mussacchio Laniello

――パリでの初演時、この作品は観客の物議を醸しました。しかし、今や世界50都市以上で上演され、リヨン・オペラ座バレエ団のレパートリー作品にもなりました。

何が起こるかは誰にもわかりません。当時、作品は認められれば、批判から守られると思っていましたが、そうなりませんでした。しかし今も初演と変わらない形で上演していて、この10年で私はこの作品をより強く信じられるようになってきています。この作品には潜在的な力があり、今日に至っても上演する意義を持っていると思うのです。でもそれは僕にとってであって、もちろん観客はこの作品を好まない可能性もあります。それで全く構いません。私は劇場での体験を提供するだけで、それを受け取るか受け取らないかは観客次第ですから。

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『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(2004年のローマ公演より) ©Mussacchio Laniello

――ある時からこの作品は、公演する都市で生活する人々を集めて上演しています。

数年前に、オリジナルとは異なるパフォーマーで作品を上演することに決めましたが、これは最初エコを考えたからでした。この作品は、20から30人もの出演者を必要とし、私はこの大人数で海外をまわるのに罪悪感を抱いていました。そして、ヨーロッパ以外の都市で上演しようとした時に、この方法を思い付いたのです。パフォーマーは観客を映し出す鏡でもあります。1000人ものアジアや南米の人々の目の前に、ヨーロッパ出身のパフォーマー達を出しても何ら関係性は持てません。身体や仕草がパフォーマーたちと全く違うのですから。そして、同じ作品の上演でも、パフォーマーや観客の雰囲気によって異なってくるのです。今回の日本バージョンでは26人のパフォーマーに集まっていただきました。彼らと日本の観客を前に、この作品が一体どうなるのか、とても楽しみにしています。

〔出典:埼玉アーツシアター通信35号〕

■ジェローム・ベル PROFILE

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 1964年フランス生まれ。世界的に活躍するダンサー、振付家、演出家。身体表現に説明的な言葉を織り交ぜたコンセプチュアルな作品で知られる。92年のアルベールビルオリンピックでは開会式・閉会式の演出を担当したフィリップ・ドゥクフレの助手を務める。94年に最初の振付作品を発表して以来、多数の作品を発表している。2004年パリ・オペラ座バレエ団に招かれ、引退間際のダンサーのモノローグで綴られる『ヴェロニク・ドワノー』を上演し絶賛された。
 日本においては、05年にタイを代表する古典舞踊の名手ピチェ・クランチェンとのコラボレーションで創作した『ピチェ・クランチェンと私』を、08年横浜トリエンナーレに出品。10年、ローザスのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルと共同制作した『3Abschiedドライアップシート(3つの別れ)』を愛知・静岡・埼玉にて上演。
 01年に発表した代表作『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』は、05年のニューヨーク公演においてベッシー賞を受賞。08年には、『ピチェ・クランチェンと私』の文化的多様性に対し、ジェローム・ベルとピチェ・クランチェンにルート・マルグリット・プリンセス賞が贈られた。
〔Photo:©Feran Mc Rope〕


ジェローム・ベル
『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』 (The Show Must Go On)
2011年11月12日(土)・11月13日(日)

演出・構成 ジェローム・ベル
出演 日本版キャスト26名
東丸、足立智美、五十嵐萌、今井尋也、太田ゆかり、岡田智代、川村知也、佐々木香弥、篠田千明、篠村博昭、タケヤアケミ、田代絵麻、鄭順栄、富田大介、直江早苗、長坂美智子、長谷川寧、林亮佑、藤沢紀子、藤田一樹、前澤香苗、ますだいっこう、松澤輝朝、マルタン・ジャン-フィリップ、山口恵理香、リー・アルド
演出助手 エド・ディク・ディナ、ネヴェス・エンリック
主催 公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/フェスティバル/トーキョー
協力 東京・横浜日仏学院
後援 在日フランス大使館
会場 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール[地図を表示]
時間 各日開演16:00(上演時間約90分、途中休憩なし)
      ※12日(土)公演終了後、ジェローム・ベルによるアフタートークあり
料金 全席指定
     【一般】前売3,000円/当日3,500円/学生(前売・当日とも)2,500円
     【メンバーズ】前売2,700円/当日3,200円


※その他、詳細は彩の国さいたま芸術劇場公式サイトをご覧下さい。


【関連リンク】

コンテンポラリー・ダンス界の「異才」ジェローム・ベルによる、このうえなくポップで反スペクタクルな『The Show Must Go On』〔ダンス研究者・越智雄磨によるジェローム・ベル作品解説〕(2011.10.14)



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