骰子の眼

神奈川県 横浜市

2012-01-14 23:58


脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA開幕

「ウランから廃棄物に続く核のサイクルを終わらせる為に」1/14,15国境を越えたネットワーク作りの場として開催
脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA開幕
『脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA』開会式より、オーストラリアのピーター・ワッツ氏と、オリンピック・ダム鉱山の様子

1月14日(土)と15日(日)『脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA』が開催。会場のパシフィコ横浜では、50名を超える海外のゲストを含めた多くの専門家や活動家、そして一般参加者により、多くのトークセッションやシンポジウム、イベントが催される。福島第一原発事故の教訓を活かし、国のエネルギー政策はもちろん、自らの毎日の暮らし方をあらため、子供たちへ明るい未来を託すための様々な提言が2日間にわたり行われる。会場の様子は、USTREAMインターネット中継も行われる。

本日13時より開催された開会式では、実行委員長の吉岡達也氏の「国境を超えたネットワークを作っていく」という挨拶の後、最初に佐藤栄佐久前福島県知事が登壇。2006年に自らが参加した欧州地方自治体会議でチェルノブイリ事故20年記念として採択されたスラヴィティチ基本原則を引用し、「原発の一番の関係者は地方自治体であるはずなのに、福島第一原発の事故では適切な情報が開示されなかった」と、世代間の共生ができない原発と国の原子力政策の問題について批判した。

続いて壇上に登場した欧州議会議員、緑の党、欧州自由同盟代表であるレベッカ・ハルムス氏は、311以降、ただちに8つの原発を止めることを一夜で決め、その後電力を輸入することなく、値上げもすることをしなかったというドイツの立場から発言。「福島は政治的なインパクトがあった。だが日本ではまだ6基の原発が動いている。世論が原発を止めたドイツから、正しい教訓を学んでください」と強調した。

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ドイツのレベッカ・ハルムス氏(欧州議会議員、緑の党、欧州自由同盟代表)

そして実行委員会も務める環境エネルギー政策研究所の所長・飯田哲也氏は、我が国はいま日本版のジャスミン革命とも言える転換点にいる、とフェイスブックやツイッターを利用し世界とコミュニケーションをとる〈ネットワークグローバリー〉な状況から、地域から環境エネルギー革命を起こすべきだと提言した。

次にオーストラリアからのゲストであるオーストラリア非核連合共同代表のピーター・ワッツ氏が登壇。先住民アボリジニのアラブンナ族であるワッツ氏は次のように語った。

「1950年代、私たちが先祖から受け継いだ土地でイギリス政府が核兵器の実験を行いました。放射能は土地や人々に、そして国全体に降り注ぎました。今回の福島の事故を人事とは思えないのは、私たちも核兵器が全ての生き物の健康に対してどれほどの脅威であるかを知っているからです。

この脱原発世界会議は、核燃料のサイクルを止めることが目的だと思います。それには原料のウランの採掘を止めることが必要です。オーストラリアは、世界のウランの3分の1を生産しています。そしてアメリカ、フランス、イギリス、日本、韓国、中国、台湾、スペイン、スウェーデン、ドイツ、ベルギー、フィンランド、カナダそして南アフリカと14ヵ国に輸出している。私たちはこれらの国々の政府に対して、ウランの輸入を止めるよう圧力をかける必要があります。

私たちの隣に住むクーコタ(Kokotha)の人たちの地域にBHP社のウランの鉱山があります。オリンピック・ダムというその鉱山は、先住民の土地から毎日3,300万リットルの地下水を汲み上げ、ただで使っているのに、我々には一切お金は支払われていない。アボリジニは太古の昔からオーストラリアの土地を大切にしてきました。しかしウラン鉱山は、水と土地と命を放射能で汚染するのです。

福島の人たちが今後何年もの間苦しみ続けることについて、私たちはほんとうに気の毒に思いましたし、連帯感を感じました。しかし愕然としたのが、オーストラリアがウランを東電に売っていた事実です。私たちの国から生まれているウランが福島の全ての原子炉で使われ、今なお、そして将来の世代に対して被曝を与え続けるということが事故から7ヵ月後の10月になってようやく明らかにされたのです。

今回オーストラリアから代表団として参りましたのは、ほんとうに申し訳ないと思っている気持ちを伝えるためと同時に、私たちもこの有毒な産業を終えるためにさらにがんばりたい、ということを示すためでもあります。一緒に、ウランから廃棄物に続くこの核のサイクルの危険を、莫大なお金のかかるこの産業を終わらせましょう」。

さらに、1945年広島の原子爆弾で被爆しながら、現在まで被爆者の救援と治療、そして原子力の危険を訴える講演活動を続けている肥田舜太郎医師も、「人間は原子力を安全に操作することはできない」と、あらためて日本の原発の危険と廃炉にすることの必要性を唱えた。

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肥田舜太郎医師

また、日本が原発を輸出することを決めたヨルダンから、国会議員で保健・環境委員会委員長のモオタシム・アワームレ氏が「確かに原発を日本から輸入することに同意はしたが、市民の大半は反対し、首都のアンマンなどではデモも行われている。このプロジェクトは必ず止めるべき」と、原子力エネルギーが解決策でないこと、生き延びるために持続可能な生活を目指さなければならないことを語った。

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ヨルダンのモオタシム・アワームレ氏

最後には、「ふくしまから世界へ」と題し、福島避難母子の会のかん澤沙織さんと冨塚悠吏くんが福島を離れざるをえなくなった痛切な心境を語り、「原発より安全なエネルギーはあると思います。そしてそのエネルギーは僕たちを苦しめることはないと思うのです。国の偉い人たちに言いたいです。大切なのは、僕たちの命ですか、それともお金ですか」と大人たちへメッセージを投げかけ、世界的会議の開会式を締めくくった。
『脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA』は明日15日も引続き行われる。

(取材・文:駒井憲嗣)
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冨塚悠吏くん(右から1番目)とかん澤沙織さん(右から2番目)そして福島避難母子の会の皆さん



【関連記事】
『イエロー・ケーキ~クリーンなエネルギーという嘘』レビュアー募集:脱原発掲げたドイツから警告するウランの危険、チルナー監督シンポジウム付試写会開催(2012-01-08)




『脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA』

2012年1月14日(土)、15(日)
会場:パシフィコ横浜
(横浜市西区みなとみらい1-1-1)[地図を表示]
公式サイト:http://npfree.jp/

▼2012.1.14 開会イベント アーカイブ





『イエロー・ケーキ~クリーンなエネルギーという嘘』
2012年1月28日(土)より渋谷アップリンクにてロードショー

原子力発電の燃料として使われるウランが、鉱石採掘の段階で処理不可能な放射性物質を大量に発生させている事実を、世界各地のウラン採掘現場への5年間に渡る取材により明らかにした衝撃的な作品。3.11以降脱原発を決意・宣言したドイツから全世界に発せられた、現代の黙示録。
監督:ヨアヒム・チルナー
2010年/ドイツ/デジタル/108分
(c) 2010Un Welt Film Produktionsgesellshaft
日本版字幕:渋谷哲也
特別協力:東京ドイツ文化センター
配給:パンドラ
公式サイト:http://pandorafilms.wordpress.com/roadshow/yellow


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映画『プリピャチ』
3月3日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次公開

チェルノブイリ原発事故から12年。
『いのちの食べ方』のニコラウス・ゲイハルター監督による、「死のゾーン」で生きる人々をとらえたドキュメンタリー。
監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター
1999年/オーストリア/100分/HDCAM/モノクロ


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映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』
3月中旬より、渋谷アップリンクほか全国順次公開

自身の被曝体験を原点に、戦後66年間、被曝者治療と核廃絶運動に献身し、内部被曝の実相を訴え続ける現在94歳の肥田舜太郎医師の歩みを追ったドキュメンタリー作品
監督・脚本・撮影・録音:マーク・プティジャン
フランス/2006年/日本語・英語/53分


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