骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-01-21 11:58


クリエイション=アラン・マッギーの栄光と挫折

今こそ80~90年代UKロックを再検証する─『アップサイド・ダウン』1/21から渋谷アップリンクで再上映
クリエイション=アラン・マッギーの栄光と挫折
映画『アップサイド・ダウン』より

ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーのベーシストであるピーター・フックやハッピー・マンデーズのダンサー、ベズが出演するイベント「FAC51 THE HACIENDA」が開催されるなど、いままた80年代から90年代にかけてのUKロックの熱気が注目を集めるなか、シーンを牽引したレーベル、クリエイション・レコーズの激動の歴史を描いたドキュメンタリー『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』が1月21日より渋谷渋谷アップリンクにて再上映される。
創設者アラン・マッキーは17年のレーベルの歴史のなかでプライマル・スクリーム、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、そしてオアシスといった世界的バンドを多数輩出し、80年代から90年代にかけてのロックの勢力地図を塗り替えた。このドキュメンタリーはワーキング・クラスのスピリットを失わず酒とドラッグ、そしてロックンロールを愛し続けた彼を中心に、レーベルを取り巻く数多くのアーティスト、関係者による証言により、クリエイション・レーベルの歴史を紐解いていく。

アラン・マッギー インタビュー
「クリエイションのスピリットはとてもアナーキーだった」

──映画への率直な感想を聞かせてもらえますか。

最初に観たときは、正直どう捉えていいものかわからなかったんだ。まあ、自分が出演しているからね(笑)。でも、3回目にはピンときた。いい映画だなと思えたよ。特にクリエイションが持っていたスピリットを、しっかりと捉えてくれているというところがね。

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──クリエイションのスピリットというのは?

とてもアナーキーだったということになるかな。その精神とクリエイティヴな姿勢を94年まで貫いていたから、クリエイションは起業とかビジネスというものとは無縁だったんだけど、94年以降はソニーが経営に乗り込んできたということもあって、だんだんと彼らにコントロールされていくようになって変わっていったんだ。

──そのアナーキーというスタンスを意識的に取っていたのか、それとも自然に自分たちの中に沸き起こっていたものなのでしょうか。

自分たちにとって、リアルな状態だったということだろうね。人生の中で、そういう地点にぼくらが立っていたということでもある。

──パンクの精神とも通じるんでしょうか?

そうだね。ぼくとボビー(・ギレスピー)はパンク・ロックで育ったしね。ただ、パンクという以上のなにかが、アナーキーズムにはあったと思う。それは自分たちがグラスゴーの労働者階級の出身であったことも関係しているんだ。ボビーは印刷工で、ぼくは電気系の技術者として日々の暮らしのための仕事をしていて、そういうやり切れない境遇から開放されることを目指していた。つまり、大きな社会の歯車に組み込まれることから、どうにかして逃れようと成功を夢見ていたんだ。

──当時、何を持って成功と考えていましたか?

グラスゴーに住んでいた時の成功は、生活のための仕事をしなくてもいいくらいの、ささやかなものだった(笑)。ぼくはクリエイションの成功というのは、2種類あったと思っているんだ。クリエイティヴな面で言うと、それは91年に訪れた。わすか6週間という時間の間でプライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』、ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』がリリースされたこと。それぞれが強い影響力を持ったアルバムで、それがたまたまごく短い期間にリリースが集中したんだ。一方、商業的なサクセスはオアシスとともに訪れた。ぼくらの想像と理解をはるかに超えて、6,000万枚も作品が売れた。そこにはクリエイティヴも伴っていたからね、とても信じられないような経験であり、成功だったよ。

──では、逆に苦しかったことは何でしょう?初期のジーザス&メリー・チェインやザ・ハウス・オブ・ラヴの移籍は当てはまると思うのですが?

うん、大きなレーベルじゃなかったからね、まだ。メリー・チェインの頃は小さなアパートの一室で運営されていて、ザ・ハウス・オブ・ラヴも同様だった。その後、ハックニーにオフィスを借りたときから、バンドたちが残るようになったんだ。

(『アップサイド・ダウン』パンフレットより インタヴュー・文:油納将志 通訳:大蔵美子 写真:岡田祐一郎[CIDER inc.])



001 のコヒー

俺にだって何かできると思った。だからクリエイションレコーズを作ったんだ。─アラン・マッギー

004 のコヒー

レコード契約が欲しいかと聞かれた。クリエイションだと分かりすぐ了承した。─ノエル・ギャラガー/オアシス

003 のコヒー

はみ出し者や麻薬中毒者の寄せ集めさ。スピードをやって徹夜でジャケットにレコードを入れながら考えたよ。マーク・ボランはこんなことしなかっただろう、もっとましな何かがあるはずだってね。─ジム・リード/ジーザス&メリー・チェイン

006 のコヒー

僕らはとにかく怒りに任せてエネルギーに満ちていた。─ケヴィン・シールズ/マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン

002 のコヒー

クリエイションが終わった時、インディーミュージックも終わったんだ─ボビー・ギレスピー/プライマル・スクリーム




『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』
1月21日(土)から2月3日(金)まで渋谷アップリンクにて
リ・リヴァイヴァル・レイトショー(連日20:45~)

監督・製作:ダニー・オコナー
製作:マーク・クランウェル
音楽監督:マーク・ガードナー(Ride)ほか
キャスト:アラン・マッギー、ジョー・フォスター(共同経営者)、ノエル・ギャラガー(Oasis)、ボビー・ギレスピー(Primal Scream)、ジム・リード(The Jesus & Mary Chain)、ケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)、ノーマン・ブレイク(Teenage Fanclub)、グリフ・リーズ(Super Furry Animals)、アンディ・ベル(Ride、Oasis)、マーク・ガードナー(Ride)、ガイ・チャドウィック(The House Of Love)、ボブ・モールド(Husker Du、Sugar)、アーヴィン・ウェルシュ(『トレインスポッティング』原作者)ほか多数
提供・配給:キングレコード
配給・宣伝:ビーズインターナショナル
2010年/イギリス/カラー(一部モノクロ)/101分
公式HP:http://www.udcrs.net/

▼『アップサイド・ダウン』予告編


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