骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-06-28 14:32


坂口恭平さんの熱に巻き込まれハウスを作り上げてゆく様子に希望が見えた

材料費2万6千円で家を作るドキュメンタリー『モバイルハウスのつくりかた』クロスレビュー
坂口恭平さんの熱に巻き込まれハウスを作り上げてゆく様子に希望が見えた
映画『モバイルハウスのつくりかた』より

本田孝義監督のことばにもあるように、すがすがしい余韻を感じるドキュメンタリー作品である。路上生活者に学び、都市に散乱するゴミから必要なものを集めたり、無料のサービスを利用し生活するという「都市型狩猟採集生活」を提唱し実践する建築家・坂口恭平さん。彼がここ数年で行なってきたワークショップやトークショー、インタビューのフッテージを盛り込み、坂口さんの頭のなかをのぞいているように思考の変遷を写していく。幼少時代に秘密基地作りに夢中になったことが建築に興味を持つことになったきっかけだという回想を交えながら、坂口さんがこのような思想に至ることになった過程に踏み込んでいく。

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映画『モバイルハウスのつくりかた』より

坂口さんの世界を見る眼差しの源泉を知ることができるうえに興味深いのが、今作のテーマである移動式の家屋・モバイルハウス製作の過程を追いかけるきっかけとなった、多摩川のロビンソンクルーソーこと鈴木さんのキャラクターだ。飄々と河川敷で鍛えた家づくりのノウハウを伝授する姿のたくましさと柔軟な思考には、私たちが生きるうえでのささかかだけれど大切なヒントを見つけだすことができるはずだ。建築を通して政治・経済・生活を見つめなおしてみること。『モバイルハウスのつくりかた』に感じるすがすがしさ、とは、そうした視座の変化こそが、我々の生き方を変える根本の原動力になるのではないかと気づかせてくれるからではないかと思う。

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映画『モバイルハウスのつくりかた』より



映画『モバイルハウスのつくりかた』
2012年6月30日(土)、渋谷・ユーロスペースにてレイトロードショー、
以下全国順次公開

監督・撮影・編集:本田孝義
出演:坂口恭平、鈴木正三、船越ロビンソン、隈研吾、磯部涼
整音:米山靖
音楽:あらかじめ決められた恋人たちへ「calling」
製作:戸山創作所
配給:戸山創作所、スリーピン
坂口恭平著『モバイルハウスのつくりかた』(集英社新書、近刊)
2011年/日本/HD/98分

公式サイト:http://mobilehouse-movie.com/




▼『モバイルハウスのつくりかた』予告編


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