骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2012-05-26 01:07


「この曲にある行き場のないフラストレーションが映画になっている」

5/26凱旋上映が行われる『世界グッドモーニング!!』音楽を担当したARTLESS NOTEに聞く
「この曲にある行き場のないフラストレーションが映画になっている」
ARTLESS NOTE 左よりセキネジュンリ(Gu+Vox)、カネダツカサ(Dr+Cho)、ミズタニタカツグ(Dr+Syn)

webDICEで連載中の『オールモスト・フェイマス-未配給映画探訪』連動企画として5月26日(土)に開催される、【『世界グッドモーニング!!』な夜】。バンクーバー国際映画祭でグランプリを受賞し、ベルリン映画祭をはじめ世界中の映画祭で評価された『世界グッドモーニング!!』の一夜限りの上映にあたり、廣原暁監督をはじめ、木下雄介、森岡龍両監督がトークで出演。さらに本作の音楽を手がけたバンドARTLESS NOTEが映画の世界観にリンクしたライブセットを披露する。

映画よりも曲が先にあった『世界グッドモーニング!!』

ドラム×2、ギター×1という特異な編成で都内のライブハウスを中心に活動を続けるARTLESS NOTEの3人は、『世界グッドモーニング!!』の音楽を手がけることになった経緯について次のように語る。「廣原は監督の同級生で、ずっと僕らバンドのことを好きと言ってくれていたんです。『世界グッドモーニング!!』という僕らの曲がだいぶ前からあって、彼から『この曲を使わせてほしい』という話がありました。映画のタイトルも、その後で決まったんだと思います。結果的に、映画のなかでも主人公が歌ったり、がっつり使ってくれることになりました」(セキネジュンリ/Gu+Vox)。

当初は、彼らはタイトルにまで使われることは予想していなかったという。「今となっては映画がオリジナルみたいになっているけどね……」(カネダツカサ/Dr+Cho)「僕らとしてはARTLESS NOTEありきの映画でしょ」(セキネ)と笑ってみせる。とはいえ、「メンバーの僕からしても、すごく印象に残る曲ですね」(ミズタニタカツグ/Dr+Syn)と、バンドにとってもライブで数多く演奏した曲であり、思い入れが深い楽曲だと解説する。

そして、「廣原にも言われるんですけれど、メッセージ性があるようでぜんぜんない。からっぽな感じの曲ですよ」(セキネ)「初期衝動的な曲ですね」(カネダ)「高校のときから同じ空気を吸っていたから、行き場のないフラストレーションとか、高校の時の空気や、曲の趣旨とか背景をなんとなく廣原はわかってくれてるような気がします。そういうところを廣原としても映画にしてみたかったのかな。それは映画を観ても思いました」(ミズタニ)と、楽曲にただようある種の「若気の至り」のようなものや虚無感が、映画の世界観と関わり合っていると語る。
この曲に代表されるように、ハードコアやポストロック、エモがベースになっていると感じられるものの、ARTLESS NOTEが鳴らすサウンドはなんとも形容し難い。「僕らも、楽曲自体は、影響を受けたアーティストをそのまま出しているかもしれないけれど、編成が特殊だから、あまりそれっぽくならないし、自分でも想像していた音にならない。それがいい方向にバンドの特徴になっているんじゃないかと思います」(セキネ)。

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「突拍子もないようで脈略がある」楽曲たち

今作で主人公の少年の鬱屈を丁寧に描いた廣原監督が「同世代へ向けて映画を届けようとしている」と語っていることに対して、彼らは「とりあえずお客さんのことを考えずデカい音を出す、ということしかないですね」(カネダ)と、表現に対するスタンスの違いを明らかにする。しかし、この両者のスタンスをふまえ、単純な音楽の映画化ではない、バンドのサウンドと映画が対等でいられるような、廣原監督なりのARTLESS NOTEへのリスペクトが感じられる音楽の使い方になっているように感じられるのだ。

2012年は新しい作品をリリースしたいと意欲をみせる3人。「最近の新曲は、より俺らっぽくなっていると思う」(セキネ)「昔は意識して変拍子をいれようとかしていたけれど、すごく今はなめらかになっている。突拍子もないようで脈略がある」(カネダ)。
「僕らはライブハウスに出る他のバンドと比べたらロックっぽくないと思う。だから映画から僕らを知ってくれた人がもっと増えたら嬉しい」(ミズタニ)。

好評につき既に予約で満席となっている今回の渋谷アップリンクでのイベント。映画館での貴重なパフォーマンスは彼らの今後の活動にとっても重要な意味合いを持つことだろう。

(取材・文:駒井憲嗣)



ARTLESS NOTE プロフィール

200X年結成。主に都内で活動する“Gt+Vo/Dr/Dr+Syn”の間違った編成の3ピース・ロック・バンド。2008年に自主制作CDR『Door,Door,Door!!』(現在廃盤)、同年The morningsとのスプリットCD『ARTLESS NOTE × The mornings』をリリース。その後『TOKYO NEW WAVE 2010』、diskunionとCRJ-Tokyoの監修による『サウンドポタージュ』などいくつかのコンピレーションアルバムに楽曲を提供。2012 年3月からライブ会場限定販売のデモCDR『3』を発表。2009年の『世界グッドモーニング!!』をはじめ、廣原暁監督作品に欠かせない存在として、ほぼ全ての作品で音楽を担当している。2012年5月26日の上映会では、特別ゲストを迎え、映画の世界観にフォーカスしたアレンジで演奏する。
http://www.geocities.jp/artlessnote/




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『世界グッドモーニング!!』

主人公のユウタは高校一年生で、母親と二人暮らし。あだ名ジャミラ。クラスではさえない方だけど、音楽が好きな、平均的な男子高校生。家と学校の往復だけの日々。ある日、ユウタは、ホームレスの鞄を盗んでしまう。特に理由なんてなかった。次の朝、こっそり鞄を返しに行くと、ホームレスの男性は死んでいた──。

監督・脚本・編集:廣原暁
撮影:小荒井寛達、廣原暁
音楽:ARTLESS NOTE
照明:丹山浩克 録音:高橋 玄、藤川史人
製作・美術:篠原彩子
出演:小泉陽一朗、新井美穂、泉 光典、森本73子ほか
(2009年/81分/カラー)




『オールモスト・フェイマス-未配給映画探訪』連動企画
『世界グッドモーニング!!』な夜
(ライブ出演:ARTLESS NOTE、トーク出演:木下雄介×森岡龍×廣原暁)

『世界グッドモーニング!!』が一夜限りの上映決定!本作上映だけでなく、同作品で音楽を担当しているARTLESS NOTEが一夜限りの特別編成で、映画の世界観に沿ったライブ演奏を披露するほか、廣原暁監督そして同世代の新鋭監督によるトークイベントも行われる。

日時:2012年5月26日(土)
会場:渋谷アップリンク・ファクトリー

(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F tel.03-6825-5502)[地図を表示]
料金:当日一般2,300円/予約2,000円/学生1,800円(ともに1ドリンク付)
上映作品:『世界グッドモーニング!!』(監督:廣原暁/81分)
ライブ出演:ARTLESS NOTE(『世界グッドモーニング!!』音楽担当)
トーク出演:木下雄介(映画監督)、森岡龍(俳優/映画監督)、廣原暁(映画監督)
※本イベントはご予約が定員に達したため、通常の受付を終了いたしました。
http://www.uplink.co.jp/factory/log/004437.php


▼『世界グッドモーニング!!』予告編


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