骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-08-17 15:30


南北朝鮮で心と肉体がどのように人為的に分断されたかという本質的な問いを描く

キム・ギドクが製作総指揮・脚本を手がけた異色のエンターテインメント『プンサンケ』クロスレビュー
南北朝鮮で心と肉体がどのように人為的に分断されたかという本質的な問いを描く
映画『プンサンケ』より (c)2011 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

今作の製作総指揮と脚本を手がけたキム・ギドクが「南北朝鮮の統一を願うすべての人々に観てもらいたい」と語るように、ガンアクションを多用したエンターテインメント作品でありながら、離散家族の悲しみや、工作員や情報員の暗躍、脱北者の運命など、韓国と北朝鮮の間に現前する問題を正面から捉えている、メッセージ性の高いストーリーでもある。南北国境線上の休戦ラインを行き来し、国籍を越えて、離ればなれになった人と人を結びつける男“プンサンケ”を演じるユン・ゲザンは、セリフの全くないキャラクターを、その表情と肉体を駆使し演じきった。また、ヒロイン・イノク役のキム・ギュリの可憐な魅力も光る。

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映画『プンサンケ』より (c)2011 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

『ダークナイト』で囚人と一般客の乗った船にジョーカーが仕掛けた罠を思わせる、韓国情報員と北朝鮮工作員を密室に閉じ込めてそこに拳銃を投げ込むクライマックスの設定は、北と南、正義と悪というあらゆる対立構造に疑問を投げかける秀逸な場面だ。ソウル=ピョンヤン間を駆け巡る正体不明の運び屋の活躍、キム・ギドクが生んだダーク・ヒーローとも言えるその“プンサンケ”とイノクの関係の行方を軸に、そこに挟まれる捉えられた情報員への過酷な拷問や、有刺鉄線に無数に貼られた離散した人々の痛切なメッセージなどのディティールが、娯楽作であると同時に社会的な問題提起も忘れないこの物語を、さらにエキサイティングなものにしている。

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映画『プンサンケ』より (c)2011 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.



映画『プンサンケ』
8月18日(土)よりユーロスペースにてロードショー
8月25日(土)より銀座シネパトスほか全国順次公開

製作総指揮:キム・ギドク、豊山犬スタッフ
製作:チョン・ユンチャン
脚本:キム・ギドク
監督:チョン・ジェホン
撮影:イ・ジョンイン
美術:イ・ジョンゴン
編集:シン・チョル
照明:イ・ビョンソン
音響デザイン:イ・スンヨプ
録音:キム・サンウン
音楽:パク・イニョン
特殊効果:キム・ソンテ
衣装:シン・ジヨン
セットデザイン:ヤン・フンソプ
出演:ユン・ゲサン、キム・ギュリ、キム・ジョンス
提供:マクザム、パルコ、太秦、アジア映画社
配給:太秦
(2011年/韓国/121分/カラー/ビスタ/ドルビー/HD)

公式サイト:http://www.u-picc.com/poongsan

▼『プンサンケ』予告編



レビュー(2)


  • Rekiさんのレビュー   2012-07-13 21:11

    『プンサンケ』クロスレビュー 「沈黙の意味」

    ソウルとピョンヤン その距離を3時間以内で往復して 依頼されたものを運ぶ謎の男。 往復して届けられるのは、 ビデオメッセージや手紙、時には幼い子供。 北と南。 あまりにも環境の異なる中で生きる人々。 一緒に生きていた家族であって...  続きを読む

  • なあごさんのレビュー   2012-08-16 12:41

    『プンサンケ』クロスレビュー:ギドク的なビターな作品

    キム・ギドクが脚本を書き、その愛弟子であるチョン・ジェホンがメガホンを取り、キドク組とも言うべきクルー達によって撮影された作品であるせいか、キム・ギドクのカラーが色濃く出ています。主人公が一言もしゃべらない設定も、彼の生い立ちや不法に国境を越えて運び...  続きを読む

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