骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-04-26 23:30


漁船の壮絶な航海を追う『リヴァイアサン』やバラバーノフの新作も イメージフォーラム・フェスティバル2013

世界を映画的に感じる映像アートの祭典、全87作品から観てほしい11作をチョイス
漁船の壮絶な航海を追う『リヴァイアサン』やバラバーノフの新作も イメージフォーラム・フェスティバル2013
『リヴァイアサン』より

回を重ね今年が第27回となる映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル」が4月27日(土)から東京でスタート、その後も京都、福岡、名古屋、横浜の全国5都市で開催される。今年は一般公募部門作品を集めた「ジャパン・トゥモロウ」、日本招待部門の「ニューフィルム・ジャパン」、海外招待部門の「ニューフィルム・インターナショナル」の3部門に加え、特集として「創造するドキュメンタリー、無限の映画眼」と題し、“事実を客観的に記録する”だけにとどまらない映像表現としてのドキュメンタリーをラインナップ。その他にも「追悼ドナルド・リチー」、特別招待上映「JURY」など、国内外の新作を中心に歴史的な重要作も加えた充実の内容で開催される。今回は東京会場で上映される日本作品57本、海外作品30本、計87作品のなかから注目の11作を紹介する。




ニューフィルム・ジャパン 日本招待部門

『NINJA & SOLDIER』
平林勇

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『NINJA & SOLDIER』

ある日本のNPOの方から世界には少年兵という問題があると聞かされました。6歳の息子と同じような子供たちが、誘拐され少年兵にされる過程を知りショックを受けました。アフリカで起きている事は、日本では他人事のように感じますが、無関係ではありません。なぜ争いが起きるのかを考えたときに、「違い」の意識がすごく関係していると思いました。「違い」の意識から湧き出る憎しみの感情が、少しでも減って欲しいと思います。(平林勇)
(デジタル/10分/2012)

Aプログラム『ジャパン・アニメーション・パノラマ』
東京パークタワーホール:4月29日(祝月)13:45、5月5日(日)13:45
京都シネマ:5月18日(土)14:00




『秋丸・春丸』
萩原朔美

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『秋丸・春丸』

左目が駄目になったので、去年『目の中の水』という映像作品を作った。今年も、その続きを撮影した。今回は、何故左目だけが失明したのだろうか、という疑問に答える旅の映像化だ。澁澤龍彦の「高丘親王航海記」に出てくる、まるで双子のような秋丸と春丸が念頭にあった。春丸の出現によって秋丸が忽然と居なくなる。何故なのだ。同じものは、一緒にはいられない。片方の旅の始まりである。それが映画『秋丸・春丸』なのだ。(萩原朔実)
(デジタル/2分/2013)

Eプログラム『対象である自分 セルフドキュメンタリーの現在』
東京パークタワーホール:5月1日(水)13:45、5月4日(土)13:45
京都シネマ:5月22日(水)14:00




ニューフィルム・インターナショナル 海外招待部門

『シャーリー リアリティーのビジョン』
グスタフ・ドイチュ

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『シャーリー リアリティーのビジョン』 Still image of SHIRLEY - VISIONS OF REALITY by Gustav Deutsch (c)Jerzy Palacz

女優“シャーリー”が語る人生が、エドワード・ホッパー(1882-1967)の13点の絵画を一つに紡ぐ。絵画と映画、個人史と政治史の絶妙な融合と言える本作のために、実験映画の巨匠グスタフ・ドイチュはホッパーの絵画の完璧な映画的再現であるセットデザインを手がけた。ドイチュによる初めての劇映画。2013年ベルリン国際映画祭招待作品。
(オーストリア/デジタル/92分/2013)

Iプログラム『シャーリー リアリティーのビジョン』
東京パークタワーホール:5月6日(祝月)13:45
京都シネマ:5月18日(土)19:00




ニューフィルム・インターナショナル 海外招待部門

『チャイニーズ・カーニバル No.10』
チェン・ツォ+ホァン・カーイー

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『チャイニーズ・カーニバル No.10』

「チャイニーズ・カーニバル」シリーズは、中国を大騒ぎのテーマパークとして描いている。そこでは、毛沢東がジェットコースターの乗客を祝福し、買い物でロマンティックな愛が芽生え、空は嘘のように青い。しかし、この映像の背後には、全ての人の顔が同じで、ロボットのように動く群衆や血のような赤さの風船といった気味の悪さが潜んでいる。
(中国/デジタル/6分/2008)

Kプログラム『中国実験映画事情2013』
東京パークタワーホール:5月2日(木)16:15、5月4日(土)18:45
京都シネマ:5月22日(水)19:00




フィルムメーカーズ・イン・フォーカス

『声に導かれて』
ストム・ソゴー

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『声に導かれて』

「映画は、できるだけ汚らわしくて、狂ってなければいけない。みんなが映画館から逃げ出して、人生にもっとましなものを望むようになるために……。僕の映画には、メッセージや言葉さえも入れないようにしている。でも僕は、それぞれの作品の裏に病んだ物語を潜ませている。それは精神に作用する視覚的キャンディーで、最初は甘く感じるけど、次には発作を起こさせるのだ」(ストム・ソゴー)。

ジョナス・メカスによって現代で最も刺激的な映画作家とされ、2000年代初頭のニューヨークのアンダーグラウンド映画シーンを牽引していた日本人ストム・ソゴー(1975-2012)の作品集。今回が日本では初めての紹介となる。
(アメリカ/デジタル/11分/2000)

Lプログラム『ストム・ソゴー 甘美から発作へ』
東京パークタワーホール:4月28日(日)11:15、4月30日(火)18:45
京都シネマ:5月23日(木)19:00




『私も幸せが欲しい』
アレクセイ・バラバーノフ

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『私も幸せが欲しい』

5人の同乗者-悪党、彼の友人マトヴェル、マトヴェルの年老いた父、音楽家と若い女-が大きな黒いジープに乗って、幸福の鐘の塔を探して、空虚な道を進む。伝説によればその塔は、ペテルブルグとウグリチの間の、打ち捨てられた原子力発電所の近くにあると言われている。塔は人を運んでくれる。ただ全ての人をというわけではない。5人の乗客はそれぞれ、自分こそが選ばれると信じている。

現在、個性的な若手映画作家を次々と輩出しているロシア。国際映画祭上映の常連作家でありながら、その特異でショッキングな作風のためか、日本でほぼ紹介されることのなかったアレクセイ・バラバーノフ(『ロシアン・ブラザー』、『フリークスも人間も』)。今回は彼の最新作『私も幸せが欲しい』そして『アフガン発・貨物200便』の2作品を上映。カウリスマキやジャームッシュとも比較されるが、予測不可能な展開と突発的な暴力描写や、その幻惑的な作風で、バラバーノフ独特の世界観を作り上げている。
(ロシア/デジタル/83分/2012)

Mプログラム『私も幸せが欲しい』
シアター・イメージフォーラム:4月27日(土)21:10、5月3日(祝金)21:10
京都シネマ:5月20日(月)19:00




特集 創造するドキュメンタリー、無限の映画眼

『リヴァイアサン』
ルシアン・キャステイン=テイラー+ ヴェレーナ・パラヴェル

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『リヴァイアサン』

ハーバード大学の感覚人類学研究所に所属する映像作家兼人類学者の二人による、漁船漁業の様子を極小カメラで捉えた圧倒的なドキュメンタリー。カメラは網の中でもがく魚たちや、空中を飛ぶカモメ、あるいは魚をさばく漁師たちの目線となり、虚空から海中へとダイブする。波の音やクレーンのきしむ金属音、船が波に揉まれ叫ぶようにあげる轟音などのノイズが観客を覆う。時には数ヶ月に渡る航海に同行し、過酷な状況の中、驚くような撮影方法で完成させた本作は、現在世界各地の映画祭の話題作だ。2012年ロカルノ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品。
(アメリカ+フランス+イギリス/デジタル/87分/2012)

Oプログラム『リヴァイアサン』
東京パークタワーホール:4月29日(祝月)18:45、5月6日(祝月)11:15
京都シネマ:5月19日(日)14:00




『ステンプル・パス』
ジェームス・ベニング

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『ステンプル・パス』

1970年代から90年代にかけて大学の研究者や、航空会社に爆発物を送りつけ、アメリカを震撼させた反産業社会のテロリスト、テッド・カジンスキー(ユナボマー)。数学者として非常に優秀だった彼は、ある日大学を辞め、山奥で自給自足の生活に入った。風景映画の巨匠ジェームス・ベニングは、カジンスキーが生活していた小屋のレプリカをカリフォルニア山中に建て、その四季を捉えた4ショットをこの『ステンプル・パス』という長編映画にした。サウンドトラックはカジンスキーの残した日記の朗読。リスを狩り、その肉を調理するかたわら、企業に小包爆弾を送り、上空を横切る飛行機に呪詛の言葉を投げかける隠遁者の日々が、ジェームス・ベニングの声を通して立ち上がる。
(アメリカ/ デジタル/123分/2012)

Pプログラム『ステンプル・パス』
シアター・イメージフォーラム:5月2日(木)21:10、東京パークタワーホール:5月3日(祝金)18:45
京都シネマ:5月19日(日)16:30




『レイシー家の儀式 レイシー家の人々』
ブルース・レイシー

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『レイシー家の儀式 レイシー家の人々』

映画監督ケン・ラッセルの映画の題材になり、コメディアンのレニー・ブルースの友人であり、アンソニー・バージェスに貶められ、リチャード・レスター監督『ヘルプ!』に出演し、スパイク・ミリガンやピーター・セラーズのTVショウに出演だけでなく小道具を提供し、様々なアイデアを与えたイギリス希代の奇人アーティスト、ブルース・レイシー。ロンドンで開催された回顧展を機にリマスターされた彼のフィルム作品を上映する。レイシーの家族全員が参加した『レイシー家の儀式』は、楽しさ、ドラマチズム、アナーキー、ユーモアが同居する傑作・実験ホーム・ムービーである。
(イギリス/16ミリ[デジタル版]/61分/1973)

Rプログラム『ブルース・レイシー教授の人間王国』
シアター・イメージフォーラム:4月29日(祝月)21:10、5月5日(日)21:10
京都シネマ:5月21日(火)19:00




『セントラル・リージョン』
マイケル・スノウ

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『セントラル・リージョン』

ミュージシャン、美術家、映像作家のマイケル・スノウは、技術者と共同で、カメラを垂直・平行、自在に動かせるロボット・アームを開発し、本作を撮影した。人の手を介さないプログラムによって人間の目が見ることが出来ない、カメラだけが捉えられる脅威の時空間に到達した本作は、スノウの代表作というだけでなく、映像史に残る一本となった。“肉体の無い目”(スノウ)によってより純粋な映画の高みに近づく試み。
(カナダ/16ミリ/180分/1971)

Sプログラム『セントラル・リージョン』
東京パークタワーホール:4月28日(日)16:15
京都シネマ:5月24日(金)14:00




『ウォールデン』
ジョナス・メカス

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『ウォールデン』

昨年90歳を迎えた詩人でアメリカのカウンター・カルチャーのヒーロー、ジョナス・メカスは映画に日記というスタイルを生み出した。『ウォールデン』は彼の最初の日記映画であり、1960年代ニューヨークのアヴァンギャルド・アートシーンの壮大な記録となっている。個人映画における転回点となった作品。

ウォールデンには時系列に数珠つながりになった1956年から69年までの素材が入っている。サウンドトラックには同じ時期に集めた音源を使った。声、地下鉄、街路の騒音、ショパンの断片(わたしはロマンチックなのだ)、そしてその他の暗示的なそしてとるに足らない音も。(ジョナス・メカス)
(アメリカ/16ミリ[デジタル版]/180分/1969)

Tプログラム『ウォールデン』
東京パークタワーホール:4月28日(日)16:15、5月2日(木)11:15
京都シネマ:5月24日(金)14:00




イメージフォーラム・フェスティバル2013

東京:2013年4月27日(土)~2012年5月6日(祝月)
パークタワーホール
シアター・イメージフォーラム
京都:2013年5月18日(土)~2013年5月24日(金)
京都シネマ
福岡:2013年6月5日(水)~2012年6月9日(日)
福岡市総合図書館
名古屋:2013年6月12日(水)~2012年6月16日(日)
愛知芸術文化センター
横浜:2013年7月13日(土)~2012年7月15日(祝月)
横浜美術館


主催:イメージフォーラム
共催:京都シネマ
協賛:株式会社リビング・デザインセンター
助成:芸術文化振興基金助成事業、公益財団法人ポーラ美術振興財団
協力:株式会社ダゲレオ出版
後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
http://imageforumfestival.com/

▼『リヴァイアサン』予告編


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