骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-07-22 22:02


煙草を吸い続け、満たされないままのゲンスブールの激しいエネルギーと孤独が伝わってきた

巧みな編集でセルジュ・ゲンスブールの内面に迫るドキュメンタリー『ノーコメント by ゲンスブール』クロスレビュー
煙草を吸い続け、満たされないままのゲンスブールの激しいエネルギーと孤独が伝わってきた
映画『ノーコメント by ゲンスブール』より (c) Zeta Productions/ARTE France Cinéma/Ina/2011

数々の女性たちと浮名を流したプレイボーイ、フランス・ギャルやフランソワーズ・アルディ、ジュリエット・グレコなど錚々たるシンガーに楽曲を提供した稀代の作詞作曲家、テレビ出演時に紙幣を燃やしたり、フランス国家をレゲエ・アレンジでカヴァーし右翼グループに取り囲まれるなど、常にスキャンダラスな言動で物議を醸したアーティスト、セルジュ・ゲンスブール。彼が実は音楽家を志す前、建築と絵画の道を目指していたことはあまり知られていない。今作は、デビュー当時から晩年に至るまでの彼の数多くのインタビューや出演番組からの発言と、アーカイヴ映像を丁寧に編纂。あたかも彼自身が蘇って自らを語り尽くしているような構成により、深い教養とバックグラウンドを持ち、妻や子供たち家族に愛情を注いだ「人間・セルジュ・ゲンスブール」に迫っている。

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映画『ノーコメント by ゲンスブール』より (c) Zeta Productions/ARTE France Cinéma/Ina/2011

興味深いのは、自らの出自や父母についてなどパーソナルな内容も語りながら、同時にナボコフの『ロリータ』の引用やクラシック音楽からの影響など彼の作品の「元ネタ」を公開していくことで、ゲンスブールの文化的なアンテナの張り方が明るみになる点だ。素足にダンスシューズ、無精髭といった現在までファッション・アイコンとして親しまれているあの着こなしについても、今作で自らが語るように常にビジュアルを意識していたことから生まれたスタイルであることが分かる。今でこそいかに自分をプレゼンテーションするかは、インディーズのアーティストのみならず必須の要素であるけれど、ゲンスブールの知性とそのプレゼンの仕方は、決して伝説ではなく、今でこそリアルに受け止められるのではないだろうか。


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映画『ノーコメント by ゲンスブール』より (c) Zeta Productions/ARTE France Cinéma/Ina/2011



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映画『ノーコメント by ゲンスブール』より (c) Zeta Productions/ARTE France Cinéma/Ina/2011

映画『ノーコメント by ゲンスブール』
7月27日(土)より、Bunkamuraル・シネマにて特別ロードショー
8月3日(土)より、渋谷アップリンクにてロードショー
ほか全国順次公開

監督:ピエール=アンリ・サルファティ
出演:セルジュ・ゲンスブール、ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンスブール、ルル・ゲンスブール、ジュリエット・グレコ、ブリジット・バルドー、アンナ・カリーナ、エディット・ピアフ、ヴァネッサ・パラディ 他
原題:Gainsbourg by Gainsbourg: An Intimate Self-Portrait
(2011年/フランス/99分/カラー/DCP)
字幕監修:永瀧達治
配給・宣伝:アップリンク
提供:キングレコード

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▼映画『ノーコメント by ゲンスブール』予告編



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