骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-11-26 19:25


独立映画が現代中国を内側からあぶり出す、中国インディペンデント映画祭2013開催

映画産業システムや検閲から独立した、自由な精神を持つ中国映画を知る
独立映画が現代中国を内側からあぶり出す、中国インディペンデント映画祭2013開催
映画『小荷(シャオホー)』より

中国インディペンデント映画祭が11月30日(土)より渋谷オーディトリウムで開催される。2008年8月からスタートし、今年で4回目を迎えるこの映画祭は、中国や国内からゲストを招聘し、当局の管理下にあり検閲が行われている商業映画や映画産業のシステムから独立したインディペンデント映画=「独立電影」を日本に紹介し続けている。監督の登壇も多数予定されているので、ぜひ会場で映画を通して現代中国の現状を目撃し、制作者とディスカッションを交わしてみてほしい。webDICEでは今回、今年の上映作品14作を紹介。また今後、会期中に来日する監督による対談企画を掲載する。




中国インディペンデント映画祭
『ホメられないかも』

『ホメられないかも』

小学校を卒業した夏休み、ヤンジンは長距離バスに乗って同級生のシャオポーの田舎に遊びに行く。優等生のヤンジンと、怒られてばかりのシャオポー。山西の農村でいろんな人と出会いながら、彼らは少しずつ成長していく。
監督は『牛乳先生』『冬に生まれて』に続き本映画祭3作目となる楊瑾。この作品はアニメーションを交えながら、ほのぼのとしたタッチで描いているが、独特の飄々とした作風は健在。今回はベルリン国際映画祭の児童映画部門で上映された100分バージョンで上映。

協力/東京国際映画祭
有人讚美聰慧,有人則不/Don't Expect Praises/2012年/100分/字幕 Jp
監督:楊瑾(ヤン・ジン)




中国インディペンデント映画祭
『卵と石』

『卵と石』

14歳の少女・紅貴は、都会で働く両親と離れて農村に留まり、もう7年ものあいだ叔父夫婦と生活している。幼なじみの男友達・阿九と会えるのを唯一の楽しみとしている普通の女の子だが、実は深刻な悩みを抱えていた。
84年生まれの黄驥監督は、パートナーの大塚竜治とほぼ二人だけでこの映画を作り上げたというが、そのクオリティの高さには驚かされる。ロッテルダム国際映画祭で大賞を受賞したのを始め、各国で高い評価を受けている注目作。

協力/大阪アジアン映画祭インディー・フォーラム部門
雞蛋和石頭/EGG AND STONE/2012年/101分/字幕 Jp+En+Ch
監督:黄驥(ホアン・ジー)




03_shaoho
『小荷(シャオホー)』

『小荷(シャオホー)』

田舎の高校で国語教師をしている小荷(シャオホー)は、型破りな授業をすることから生徒たちには人気があるが、保護者や同僚からは疎ましがられていた。職場の空気に耐えられなくなった彼女は北京に出て行くことにするが、北京での暮らしは理想とは程遠く…。
理想を持つほど生きづらい中国社会の現実を、女性監督らしい目線で描いた作品。主演は『スプリング・フィーバー』『ミスター・ツリー』でヒロインを演じた譚卓(タン・ジュオ)。2012年ヴェネツィア国際映画祭国際批評家週間で上映された。

小荷/Lotus/2012年/90分/字幕 Jp
監督:劉姝(リウ・シュー)




中国インディペンデント映画祭
『白鶴に乗って』

『白鶴に乗って』

中国西部の農村で暮らす大工の馬さんは、棺桶作りの名人でもある。政府が土葬を禁ずるようになった今では、棺桶を注文されることもめっきり減ったが、多くの老人たちは依然として土葬を望んでいる。彼の親友は死後密かに土葬されたが、役人にバレて掘り返されてしまう。それを目の当たりにした馬さんが下した決心とは…。
蘇童の小説を、若手監督として注目されている李睿珺が自分の故郷に舞台を移して映画化。甘粛の美しい風景も魅力的。ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門参加作品。

告訴他們我乘白鶴去了/FLY WITH THE CRANE/2012年/99分/字幕 Jp
監督:李睿珺(リー・ルイジン)




中国インディペンデント映画祭
『嫁ぐ死体』

『嫁ぐ死体』

火葬場で働く曹には、人には言えない副業がある。それは女性の遺体を「鬼妻(独身で亡くなった男性の霊を慰めるため、女性の遺体を一緒に葬るという古い風習)」として売買するブローカーであった。重い病気を患った曹は、自分の死期が近づいていることを悟り、自分用に若い女性の死体をキープしておくことにする。そんな時、一人の女性が彼の働く火葬場を訪ねてくる。
『小蛾の行方』で人々に衝撃を与えた彭韜監督の新作。中国な奇妙な風習をモチーフに、市井の人々の姿をリアルに描いた興味深い一本。

告訴他們我乘白鶴去了/FLY WITH THE CRANE/2012年/99分/字幕 Jp
監督:李睿珺(リー・ルイジン)




中国インディペンデント映画祭
『春夢』

『春夢』

妻として、また幼い娘の母として、そつなくこなしてきたファン・レイだったが、ある時から夢に出てくる男に惹かれ始め、すっかり心を奪われてしまう。夢の中での肉体関係に溺れてしまった彼女は、罪悪感を抱くようになるのだが…。
女性監督の目線で女性の性を露骨に描いているのみならず、スリリングでホラーチックな展開も見どころ。監督の楊荔鈉は、かつて女優やドキュメンタリー監督していたが、本作が初のフィクション作品。音楽は日本の半野喜弘が担当。

協力/SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
春夢/Longing for the Rain/2012年/98分/字幕 Jp+En
監督:楊荔鈉(ヤン・リーナー)
<18歳未満の方の鑑賞には相応しくない描写あり>




中国インディペンデント映画祭
『マダム』

『マダム』

服飾デザイナーをする傍ら、派手な女装をし、マダム・ビランダと名乗ってステージに立つクラブ歌手。同性愛者がまだまだ生きづらい中国にあって、ゲイである彼がここに至るまでには様々な苦労があった。赤裸々に語られるインタビュー映像と、クロスして流れる彼のステージシーンが、ときに笑わせ、ときに涙を誘う。
画家としても活躍する邱炯炯監督によるドキュメンタリー。撮影後、この歌手は亡くなってしまったため、彼のステージが見られる貴重な映画となってしまった。

姑奶奶/Madame/2010年/120分/字幕 Jp
監督:邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)




中国インディペンデント映画祭
『治療』

『治療』

2007年に母親を亡くした監督が、母親についての映像作品を作ろうとこれまでに撮りためてきた映像を編集し始める。しかし、亡くなった母親の生き生きとした姿を改めて見返す作業は、監督にとって辛くもあり、自分自身を治療する過程でもあった。
中国でインディペンデントなドキュメンタリー映画づくりにいち早く取り組み、ドキュメンタリー映画の父とまで呼ばれる呉文光監督。この映画ではそれまでの手法とはまるで違い、セルフ・ドキュメンタリーとなっている。

治療/Treatment/2010年/80分/字幕 Jp
監督:呉文光(ウー・ウェングアン)




中国インディペンデント映画祭
『唐爺さん』

『唐爺さん』

前作『占い師』で、売春の元締めをしていて逮捕された唐小雁は、その後釈放され、故郷で新年を迎えるため黒竜江省に帰省する。そこには80歳を超える彼女の父親が住んでいた。娘に劣らず元気で濃いキャラクターの唐爺さん。彼は、訪ねてきた監督のカメラに向かい、自分の半生を饒舌に語りだす。
たくましく生きる市井の人々を撮り続ける徐童監督の3本目の作品。監督はこの作品を『収穫』『占い師』と合わせて「游民三部作」と名づけている。

老唐頭/Shattered/2011年/89分/字幕 Jp
監督:徐童(シュー・トン)




■張律(チャン・リュル)監督特集


『キムチを売る女』の奇才・張律監督の魅力に迫る特集。中国と韓国で映画製作に取り組む朝鮮族の張律は、カンヌやベルリンでも賞を獲ってきた知る人ぞ知る存在。今回は彼が中国国内で撮影した3本を紹介する。




中国インディペンデント映画祭
『豆満江』

『豆満江』

中国と北朝鮮の国境を流れる豆満江(とまんこう)沿いの、中国側の村で暮らすチャンホは、北朝鮮からやってきた少年・ジョンジンと知り合う。ジョンジンは病気の妹のために食べ物を探そうと、危険を犯してやって来たのだった。チャンホは彼を助け、二人の間には友情が芽生える。だが、次第に増えてくる脱北者のせいで村の治安は悪化。二人の関係も険悪になってくる。
実際に豆満江沿いの村で育った朝鮮族の張律監督だからこそ作れた作品。ベルリン映画祭ジェネレーション部門受賞作。

協力/アジアフォーカス福岡国際映画祭
豆滿江/Dooman River/2010年/90分/字幕 Jp
監督:張律(チャン・リュル)




中国インディペンデント映画祭
『重慶』

『重慶』

留学生たちに中国語を教えている蘇芸は、早くに母を亡くし、父親と二人暮しをしている。その父が、売春をした疑いで娼婦とともに検挙されてしまう。警官・王の計らいで釈放させてもらったことから、蘇芸と王は親しくなり、体を許すまでになるのだが…。独特な雰囲気を漂わせる都市・重慶を舞台に展開される人間模様。主演は『レッドチェリー』の郭柯宇と、『ホメられないかも』『白鶴に乗って』『スーツケース』などでは音楽も手がけている小河(何国鋒)。

重慶/Chongqing/2008年/93分/字幕 Jp+Kr
監督:張律(チャン・リュル)
<18歳未満の方の鑑賞には相応しくない描写あり>




中国インディペンデント映画祭
『唐詩』

『唐詩』

ある男がアパートでひとり静かに暮らしている。女がひとりやって来る以外、とくに人付き合いもなく、いつも無表情で黙々と植物に水をやり、アイロンをかけ、テレビで唐詩の番組を見ている。女は彼とのコミュニケーションを図るが、一向に掛けあってこない。女はナイトクラブで踊りの演出家として働くことになるが、その目的は職場の金を盗み出すことにあった。
張律監督の長編デビュー作。台詞は極端に少なく、場面もアパートの中だけというシンプルな作りながら、その後の作品につながる片鱗が随所に伺える。

唐詩/Tang Poetry/2004年/86分/字幕 Jp
監督:張律(チャン・リュル)




中国インディペンデント映画祭
『ファック・シネマ』

『ファック・シネマ』

田舎から脚本家を夢見て出てきた王は28歳。ホームレス同然の貧乏生活をおくりながら、毎日映画製作所の門の外に立ち、チャンスを待っている。ドキュメンタリー映画の被写体となることを、彼はチャンスを掴むきっかけと考えているが、実は監督に利用されているに過ぎないのかもしれない。監督は彼を撮りながら、そのことに困惑し始める。それまでのダイレクトシネマ風の作品と異なり、監督と被写体のやり取りが増えており、これが『治療』へとつながっていることが伺える。

協力/山形国際ドキュメンタリー映画祭
操他媽電影/Fuck Cinema/2005年/160分/字幕 Jp+En
監督:呉文光(ウー・ウェングアン)




中国インディペンデント映画祭
『占い師』

『占い師』

身体に障害を持つ厲百程は、体と脳に障害を持つ妻とともに、路上で占い師をして生計を立てている。彼の客は主に場末の娼婦たち。厳しい現実の中でも、彼らは笑顔を絶やさず、そして常にしたたかだ。中国の底辺に生きる愛すべき人々を撮り続ける徐童監督が長期取材した、厚くて暖かいヒューマン・ドキュメンタリー。
『唐爺さん』に出てくる唐小雁は、この映画の中で主要な登場人物として出てきており、関連も深いので、未見の方は必見である。

算命/Fortune Telle/2010年/129分/字幕 Jp
監督:徐童(シュー・トン)




中国インディペンデント映画祭2013
2013年11月30日(土)~2013年12月13日(金)
渋谷オーディトリウム

料金:一般1,500円/シニア・学生1,200円/高校生以下800円
3回券3,600円(劇場窓口のみ取り扱い)

公式HP:http://cifft.net/
公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/中国インディペンデント映画祭2013/689093134451477
公式Twitter:https://twitter.com/cifftnet

▼中国インディペンデント映画祭2013予告編


キーワード:

中国 / インディペンデント


レビュー(0)


コメント(0)