骰子の眼

cinema

東京都 世田谷区

2014-06-13 19:23


「ホドロフスキーは『DUNE』でSF映画のOSを発明した」西島大介さんと原正人さん語る

『ホドロフスキーのDUNE』『リアリティのダンス』公開記念・下北沢B&B「漫画原作者としてのホドロフスキー」レポート
「ホドロフスキーは『DUNE』でSF映画のOSを発明した」西島大介さんと原正人さん語る
下北沢B&Bで行われたイベント「漫画原作者としてのホドロフスキー メビウスの描いた『DUNE』をめぐって~ 勝たずんば死あるのみ、我らメタ・バロンの一族」にて、西島大介さん(左)と原正人さん(右)

6月14日(土)公開の映画『ホドロフスキーのDUNE』そして、7月12日(土)からロードショーとなる映画『リアリティのダンス』公開記念として、下北沢のB&Bにて漫画家・西島大介さんと翻訳家の原正人さんの対談が行われた。現在広島在住の西島さんはこのイベントのためだけに東京へ駆けつけてくれた。ほのぼのとした空間の中でアレハンドロ・ホドロフスキーへの熱い情熱が血潮のように飛び散る様は、西島さんの作風そのもの。改めてホドロフスキーの影響の大きさと西島さんと原さんのホドロフスキーへの『激烈な愛情』を感じる夜となった。

『メタ・バロンの一族』はホドロフスキーの思想が
100%ぶれることなく出ている

原正人(以下、原):僕はホドロフスキーの作品を翻訳しているのですが、これは学生時代には考えられなかったすごく光栄な事です。ホドロフスキー作品に初めて触れたのは20年前ぐらい前ですね。『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』といった映画を観ました。これは凄まじいと思ったんです。僕はフランス文学を勉強していて、シュールレアリスムなどが好きだったこともあり、自然とホドロフスキーの作品も観るようになりました。当時はもちろん将来ホドロフスキーの作品を訳す事になるとは思ってもみませんでした。こうして翻訳できるのは幸運以外の何ものでもありません。今日は『ホドロフスキーのDUNE』と関係の深いバンド・デシネ(以下BD)『アンカル』や『メタ・バロンの一族』を訳していることもあり、呼んで頂きました。

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原正人さん

西島大介(以下、西島):僕は早川書房から描き下ろしの作品『凹村戦争』でデビューしました。絵柄的にはホドロフスキー原作BDとは異なるタッチなので、「なんでお前が」という方もいるかも知れませんが、マインド的には影響を強く受けているんです。原さんがシュールレアリスムからホドロフスキーにたどり着いたと仰っていましたが、僕はSFのほうからたどり着いたほうが大きいですね。小説の『デューン/砂の惑星』も好きで読んでましたから、僕の画のタッチではほとんど関係性は見えないかもしれません。例えば2作目の作品で『世界の終わりの魔法使い』というファンタジー漫画があるんですね。それの第2話の途中で、これはファンタジーの姿を借りたSF漫画ですけど、魔法使いとエアボードで走っている男の子が競争してるんです。競争して魔物の森に入って行く。そのとき何が起こるかというと、地面を引き裂いて何かが出てくる。どこからどう見たって『砂の惑星』のサンドワームです。絵柄自体は極めてシンプルですが、SF的な想像力をすごくもらって作品を描いています。そして、最近一番衝撃を受けたのが『メタ・バロンの一族』。原さんが翻訳を手がけられた作品ですね。この『ホドロフスキーのDUNE』の話がくる前に、僕はこの作品を読んでかなり狂喜していました。

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西島大介さん

原:西島さんはどうやって『メタ・バロンの一族』に出会われたのですか?

西島:ホドロフスキーは以前から好きだったんですね。高校生の時に『サンタ・サングレ』を初めて観ました。そこから『エル・トポ』へ辿って『ホーリー・マウンテン』を観ることになりました。「これは何か違う。この人は何か違うものをもっているな」とか、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明と同じ、血がグアーっとすごく多い表現者と感じています。順番逆ですが。『ホーリー・マウンテン』は特にそうですが、あの作品なんて最終的には映画なんかないと自爆して終わる。そういう作品が僕はすごく好きなんです。思想が一本貫かれているというか。ホドロフスキーの映画って、大体腕なんかが飛びますよね。僕の『ディエンビエンフー』はサンリオのキティちゃんみたいなかわいい絵柄なんですけど、それを使ってホドロフスキーをやっているという自覚があります。『ディエンビエンフー』はベトナム戦争をテーマにした作品で、いまソンミ村の凄惨な血みどろの戦いが終わったところなんですね。ティムというグリーンベレー所属の主役級の美少年キャラがいるんですが、そのような状況下で、彼は片目つぶされ、左手失ってカンボジア近くの農村で少女にレイプされながら生きている。彼をどうにかして物語の中で復活させたいと思っていた時に『メタ・バロンの一族』を読んだんですよ。これを読んで「あぁ、これだ」と(笑)。これで彼をメタ・バロンのように復活させてしまおうと。『メタ・バロンの一族』というのは…… 原さん、説明してもらっていいですか。

原:まず、メタ・バロンというのは、『アンカル』の中に登場する宇宙最強の殺し屋です。その宇宙最強の殺し屋が実は代々殺し屋の一族であるという設定になっていて、それを歴史的に辿って行くのが『メタ・バロンの一族』ですね。

西島:メタ・バロンの一族を継承するには、体のどっか、手なり足なり耳なりを失って、そこを機械化し、さらに自分の親を殺さなくてはならない。腕をなくした人は機械の腕をつけられちゃう。「それだ!」と。ベトナム戦争で負傷したティムもメタ・バロンにすれば復活できる。そうすれば、『ディエンビエンフー』の続き(第3部)で大暴れさせることができるということに気づいたんです。「これ、やばい。メタ・バロンしかない」と編集者にも言いまくって。僕の作品の中でホドロフスキーの意志を継ごうと、たまにTwitterでファンに向けてつぶやくんですけど、みんなだいたいぽかーんとしてるんです(笑)。世の中的にはメビウスが描いた『アンカル』の方が名作とされていますよね。僕は『メタ・バロンの一族』のほうが面白いと思うんです。この作品にはホドロフスキーの思想みたいなものが100%ぶれることなく出ている。それで翻訳してくれた原さんと意気投合しました。

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西島大介さん描き下ろしによる『DUNE』イラストレーション

原:その『メタ・バロンの一族』とも関わりの深い映画『ホドロフスキーのDUNE』が今週末から公開されます。この作品はもうご覧になっているかと思いますが、いかがでしたか。

西島:一つはホドロフスキーという作家がどうしてホドロフスキーたりうるのかというか、思想哲学の部分ですね、それが非常にわかりやすくむき出しになっている、こういう人だからこういう風になるんだなということが非常にわかるのと、僕の中ではデヴィッド・リンチ版の記憶が強い『DUNE』のそうじゃなかった可能性が描かれている。とにかくよかったのがね、終盤で「わたしは原作をレイプしたんだ」、と語っているんですね。レイプという言葉はちょっとぞっとする言葉ですよ。でも、そのあとにっこり笑って「愛を持ってね」と続ける。そのことについてじっと考えさせられる映画でしたね。愛をもってレイプするというのがどういうことか。この場合はフランク・ハーバードの原作をということですが、エロスとタナトスとか、暴力と愛情みたいなものとか。愛情に満たされているからこそホドロフスキーの作品は変わっているんじゃないかという気はしました。冷淡な作家ではないですよね。ただ蹴り落として人の首を切る訳ではない。

『ホドロフスキーのDUNE』メイン
映画『ホドロフスキーのDUNE』より

原:実際その通りで、BDにおいても映画においてもホドロフスキー作品には暴力的なシーンが非常によく出てきますが、その事の意味について改めて考えさせられますよね。

西島:そうですね。あとはメイキングとしての面白さもあります。映画を作るためにスタッフが集められたわけですが、どうしてうまくいかなかったかが語られる。そもそもどうして僕がこのイベントに来たかというと、それこそ『ホドロフスキーのDUNE』を観たからなんです。僕は今広島に暮らしているんですが、新幹線で来るのが大変なんですね。それで最初にオファーがあった時にスケジュールも合わないし、難しいから応援したいんだけどごめんね、と断ったんですよ。でも『ホドロフスキーのDUNE』のことを思い出したんです。『ホドロフスキーのDUNE』によれば、ホドロフスキーが『DUNE』という作品に出会い、それを映画化するために、ダン・オバノンとかクリス・フォスとかメビウスとか、いろんな人が集められる。彼らは『魂の戦士』と呼ばれます。でも、ハリウッドからは企画の実現が難しいと判断されてしまう。いや、待って。僕いまB&Bのイベントに行けないと言ったけど、出張費がないから行けないっておかしいだろう。ホドロフスキーの映画を観て本当に心の底から感動してるんだから、それを断ったらまさにホドロフスキーの映画をつぶしたハリウッドと同じことをすることになる。だから、一回断ったんですけど、「そんなことは関係ない。ホドロフスキーの映画がいいとみんなに伝えたいんだから行きますよ」とメールし直してこのイベントに来たんです。この一連の頭の中で働いた行動がまさにホドロフスキーから得た何かなのでしょう。

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映画『ホドロフスキーのDUNE』より、メビウスによる『DUNE』絵コンテ

原:『魂の戦士』という言葉がありましたが、この映画の制作初期に作られたビジュアルが面白いんです(下の画像参照)。1975年にアレハンドロ・ホドロフスキーが新作映画を撮るよと書いてあるんですが、ここにはSFXは『2001年宇宙の旅』のダグラス・トランブルがやると書かれているんですね。『ホドロフスキーのDUNE』の中でも語られますが、実際にはトランブルは会った時の印象が悪くて、こんなヤツと一緒にやれるかとなって、その後に見つけたダン・オバノンを採用している(笑)。なのにこんなものをちゃっかり作っちゃってたりする。こういうところもある意味ホドロフスキーらしいのかなと。

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製作当初に準備された『DUNE』企画書表紙
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『DUNE』企画書より<ホドロフスキー監督のプロフィール
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『DUNE』企画書より、ダグラス・トランブルのプロフィール

西島:手塚治虫が『2001年宇宙の旅』の時に声をかけられたのにも似てますね。そういう感じで国境を飛び越えて、なんかこの人いいと一人一人捕まえていく過程がすごくわくわくするんですよね。敵対するハルコネン家とアトレイデ家があって、邪悪なハルコネン家と主人公側のアトレイデ家それぞれのデザイナーや音楽家の人選が露骨で楽しいです。アーティストの才能を見抜いて、邪悪な世界を作るために邪悪な作品を作れるやつを誘い、主人公側の世界を作るためにまたそちらを誘う。

原:一方で、この映画に関わったダン・オバノンは映画がとん挫して一時期精神病院に入院します。そして、『エイリアン』のシナリオを持って退院する。『エイリアン』には、『DUNE』に関わっていたH.R.ギーガーもメビウスも関わっています。さらに、直接的な影響は分かりませんが『ブレード・ランナー』も『DUNE』の影響下に生まれたと言えるかもしれない。『ブレード・ランナー』は霊感源になったバンド・デシネがあると言われていまして、それはメビウスが描いた『ザ・ロング・トゥモロー』という作品なんです。この作品は1975年、まさに『DUNE』のためにパリにやってきたオバノンが、待ってる間、やることがないので描いたストーリーボードのようなものが原作になっている。それを見たメビウスが「これいいじゃん」と言って、バンド・デシネにした。それがさらに時を超えて『ブレード・ランナー』に結実する。ほんとに『DUNE』というのは肥沃な大地ですよね。

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映画『ホドロフスキーのDUNE』より、ギーガーによるハルコネン男爵の城デザイン画

西島:そういえば、日本のガイナックスにも『蒼きウル』という、『DUNE』を彷彿とさせる作品がありますよね。いまだに映画化を目指しているとか。『蒼きウル』が完成しなかったことで、スタジオカラーが誕生したのかもしれないですね。庵野秀明さんには表現することについて「オウム真理教とやっていることが同じではないか」という反省があって、好きなのですが、ホドロフスキーの洗脳的なスタッフ集めもカルト宗教のようで面白いです。特にクリス・フォスの洗脳され具合。

『DUNE』の作法が分散して様々なところで種を蒔いている

西島:ホドロフスキー版『DUNE』は完成しなかったわけですけど、それが別にデヴィッド・リンチ版の『DUNE』にスライドしたわけじゃなくて、いくつもの名作映画に拡散していった。教義というか作法が分散してそれが違うところで種を蒔いている。まるで関わった人々や後に続く人々の洗脳ですよね(笑)。『DUNE』は実現しなかったけど、究極的には『DUNE』のやろうとした目的は果たせている。禅問答のようなというか、成果物はないんですけど、理念みたいなものは作品をも突き抜けていろんなところに届いている。ああいう風に絵コンテを描いて映画を作るのは、別に新しいことじゃないと思われる方も多分いるかもしれないですけれども、『DUNE』が作られたのってそういう製作システムが確立する以前のはずなんです。分厚い設定資料集があって、それが各映画会社へ送られて、何とか映画を撮りたいです、と伝える。インタビューを見ると、ホドロフスキーは「『スパイダーマン』みたいな映画は作りたくない」と言っていたりする。でも『スパイダーマン』のような大規模な映画の作り方を教えてしまったのはホドロフスキーかも知れないな、と『ホドロフスキーのDUNE』を観て思うんです。ホドロフスキー自身は『リアリティのダンス』のような制作方法に戻っていきますが、あなたが蒔いた種じゃないか、とすごく感じました。『スター・ウォーズ』以降の大作がそうじゃないですか。日本のアニメーションの世界でもいろんなイラストレーターを呼んで作ったりしてますよ。だからホドロフスキーは『DUNE』においてOSを発明したというか、システムを組んだというか、環境を設定したというか、そういうようなことをしたのではないでしょうか。

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映画『ホドロフスキーのDUNE』より、クリス・フォスによる宇宙船デザイン

原:『DUNE』の影響下でいろいろな映画ができていく一方で、『アンカル』、『メタ・バロンの一族』といったBDも生まれていきます。この2つの作品については『ホドロフスキーのDUNE』の中でも触れられています。フランスでは『アンカルの秘密』という『アンカル』の解説本が出ていまして、その中でも説明されていることなんですが、メビウスは『DUNE』のストーリーボードをそっくりそのまま『アンカル』に転用したりもしている。西島さん、メビウスについてはいかがでしょう?

西島:大友克洋さんや谷口ジローさんはメビウスの絵に憧れてメビウスのように描こうと努力されていますが、僕は早々と諦めて小さいキャラクターでいいやと、こんなふうな絵を描く漫画家になってしまいました。小さいキャラクターなんですけど、メビウスのように鳥が出てきてふわっと地面に着地する瞬間というものは表現したいと思います。等身的にはぎゅっと縮めて、同じレイアウトで描くようにしているんです。メビウスに憧れて、ちゃんと努力されている先輩方は偉いなと思いますね。

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映画『ホドロフスキーのDUNE』より、メビウスによるキャラクター・デザイン

『アンカル』にみるメビウスとホドロフスキーの
才能のパワーバランス

原:『アンカル』はニューエイジ的な世界観が非常に色濃い作品ですね。

西島:『アンカル』はBDが好きな方からも、ホドロフスキーファンからも名作だと言われていますが、なぜか僕はぴんと来なかったんです。その理由を僕なりに考えて、ホドロフスキーとメビウスのパワーバランスに問題があるのかなと。2人は対等に作品を作っているんだろうなと思います。ホドロフスキーの発言からすると、時にメビウスは好きに描くことがあったんじゃないかと。要するにメビウスのパワーが強すぎる。メビウスの絵はすごく上手い。特に浮遊感、立体感を描くのが上手いんですね。それによって結果的にはホドロフスキーの思想が柔らかく着地している。それはメビウスの天才がなせる技なわけです。かたや『メタ・バロンの一族』を見ると明らかにヒメネスがホドロフスキーを恐れているんですよね。恐怖を持って原作者に立ち向かって、恐れおののきながら濃密な絵を描いているというのがわかるんです。『天使の爪』でもそうじゃないですか。メビウスがポルノグラフィックな絵を描いてホドロフスキーが話を付けていく、先に絵ありきの方法。そういうやり取りをされているのがメビウスとホドロフスキーの関係です。逆に、『メタ・バロンの一族』は、そこに恐怖心がある。それが僕からするとたまらなく痺れるところ。これほどまでに相手の才能に屈服した状態でも描くという恐ろしい隷属性というか、服従性、マゾヒズムがある。ヒメネスは変態的ですよ。

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当日は西島さんによるライヴペイントも行われた

B級志向とそこにかぶさる哲学性

原:西島さんは原作者と仕事をすることはあるんですか。

西島:ごくまれに原作ものを描くことはあります。ホドロフスキー原作で仕事ができるなら、やっぱり怖いですが、いつかはやってみたいですね。ホドロフスキーのような才能、スケール感であれば、僕も全てを捧げてもいいかなと思います。国内で好きな原作者がいるかといえばいないですからね。僕、ホドロフスキーは富野由悠季さんに似てると思うんですよね。モビルスーツを操縦する人がいて、その親が開発者で、革命を起こしたい側は負けて、でも人類の進化はあるかもしれない、という物語をひたすら繰り返すのが『ガンダム』ですよね。これはホドロフスキーが繰り返し自分のモチーフを語るのとどこか似ている。『アンカル』と『メタ・バロンの一族』と『DUNE』もそうですよね。そして、ホドロフスキー作品には愛がある。ミノフスキー粒子(『機動戦士ガンダム』に出てくる架空の物質)は、ホドロフスキーの愛情に近いような気がします。富野由悠季さんが原作を担当しない『ガンダム』シリーズが精彩を欠くのは、激烈な愛情がないからです。その激烈な愛情はホドロフスキーにもあるし富野さんにもある。下手すればスピリチュアルへ飛び越えそうになる。この世界をどういう風にしたら良くなるだろうかみたいな。でもある種の制約もある。『ガンダム』ではオモチャであったり、ホドロフスキーにはB級志向があったり。『エル・トポ』も西部劇ですし、『DUNE』も普通の人から見たら変なSFなわけで。子供じみたB級志向とそこにかぶさる哲学性というのが割と富野由悠季さんと相似形を描いているなと。そして最終的には愛情が極めて強い。女性に対する尊敬とか。『メタ・バロンの一族』には空中出産するシーンや女性の指をすべて切り落としちゃうシーンなど、えぐいシーンが沢山あるんですけれども、最終的には私は女性を愛しているんだというのがある。そういう姿勢が好きで、僕もかくありたいと思います。

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西島大介さん描き下ろしによる『DUNE』イラストレーション

原:それこそがある意味ホドロフスキーの本質なのでしょうか。それはまたホドロフスキーとは何者かという問いへの一つの答えかもしれませんね。

西島:愛を証明するために面倒くさい手続きを取るんですよ。去勢とか。別に「勝たずんば死あるのみ」とか言わないで、素直に『I Love You』でいいんじゃないかと思うんですけど、そうならない。いじめているのか、自虐的なのかわかんないんですけど。「原作の『DUNE』をレイプしたんだ、愛情を持ってね」という言葉にホドロフスキーが集約されているなと思うんです。そのアンビバレントな感じが僕にとってはたまらなく魅力ですね。信じるに足りそうだし。信じるに足る素晴らしい作品だと強く思いますね。

会場からの質問:ホドロフスキー初心者が理解するために知っておくべきことはありますか?

原:ホドロフスキーの初期の映画を観ていると、シュールレアリスムの影響が大きかったんだろうなとすごく感じるんですね。ルイス・ブニュエルがやっていたことを継承している印象がありますし。現実に異化効果を与えてやる、現実を変えてやりたい、そのために演劇活動や映画活動をするんだみたいな。なので、シュールレアリスムの周辺を知ることはホドロフスキーの理解につながるのかなとは思いますが、あまり考えずに楽しめればそれでいいと思います。

西島:ホドロフスキーは映画監督となっていますが、コミック原作もやれば詩も読むし、タロット研究者であったりもする。それにあやかろうと最近僕もタロット占いを勉強してるんです。入口はいくらでもありますよね。今ほどホドロフスキーを勉強してくれというタイミングはかつてなかったですよ。これまでになく間口が広がっているのでどこから入ってもいいと思います。何も知らないほうが、ホドロフスキーは喜ぶと思いますよ。自由にホドロフスキーの海を泳いで頂ければと思います。

(2014年6月10日、下北沢B&B「漫画原作者としてのホドロフスキー メビウスの描いた『DUNE』をめぐって~ 勝たずんば死あるのみ、我らメタ・バロンの一族」にて 構成:鈴木正志、駒井憲嗣)



西島大介(漫画家・DJまほつうかい) プロフィール

1974年東京生まれ、広島在住。2004年に描き下ろしSF長編コミック『凹村戦争』でデビューし、星雲賞アート部門を受賞。代表作に『世界の終わりの魔法使い』『ディエンビエンフー』など。最新作『すべてがちょっとずつ優しい世界』が第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭入選作選出。実験的マンガ家養成機関「ひらめき☆マンガ学校」を主宰し多彩な才能を輩出。DJまほうつかいとして音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演などその活動は多岐に渡る。8月上旬に初めての画集『くらやみ村のこどもたち』を宝島社より、2nd EP『Ghosts in the Forest EP』をHEADZより刊行予定。
HP: http://simasima.jp/
Twitter: http://www.simasima.jp/


原正人(はら・まさと) プロフィール

1974年生まれ。学習院大学人文科学研究科フランス文学専攻博士前期課程修了。フランスのマンガ“バンド・デシネ”の翻訳家。翻訳にホドロフスキー&メビウス著『アンカル』、『猫の目』、『天使の爪』、ホドロフスキー&ヒメネス『メタ・バロンの一族』、バスティアン・ヴィヴェス『塩素の味』、『ポリーナ』、フィリップ・ドリュイエ『ローン・スローン』など。ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット『かわいい闇』が河出書房新社から近刊。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』がある。




『メタ・バロンの一族 上』
著:アレハンドロ・ホドロフスキー
イラスト:フアン・ヒメネス
翻訳:原正人

小学館集英社プロダクション
3,240円(税込)




『メタ・バロンの一族 下』
著:アレハンドロ・ホドロフスキー
イラスト:フアン・ヒメネス
翻訳:原正人

小学館集英社プロダクション
3,240円(税込)

★作品の購入はジャケット写真をクリックしてください。Amazonにリンクされています。




『ホドロフスキーのDUNE』
2014年6月14日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開

監督:フランク・パヴィッチ
出演:アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セドゥー、H.R.ギーガー、クリス・フォス、ニコラス・ウィンディング・レフン
(2013年/アメリカ/90分/英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語/カラー/16:9/DCP)
配給:アップリンク/パルコ
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/dune/

原正人さん&柳下毅一郎さん登壇によるイベント6月14日(土)開催!!
公開記念イベント連続開催決定、詳細は下記より

http://www.uplink.co.jp/jodorowsky/news/





『リアリティのダンス』
2014年7月12日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開

監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:ブロンティス・ホドロフスキー(『エル・トポ』)、パメラ・フローレス、クリストバル・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキー
音楽:アダン・ホドロフスキー
原作:アレハンドロ・ホドロフスキー『リアリティのダンス』(文遊社)
原題:La Danza de la Realidad(The Dance Of Reality)
(2013年/チリ・フランス/130分/スペイン語/カラー/1:1.85/DCP)
配給:アップリンク/パルコ
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/dance/


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