骰子の眼

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2015-03-12 01:18


7日間限りの恋は可能なもの!?アン・ハサウェイが初プロデュース作を語る

NYを舞台に弟を看病する姉と人気ミュージシャンの儚い繋がり描く『ブルックリンの恋人たち』
7日間限りの恋は可能なもの!?アン・ハサウェイが初プロデュース作を語る
映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

女優のアン・ハサウェイが初のプロデュースを手がけた映画『ブルックリンの恋人たち』が3月13日(金)より公開される。彼女が出演したヒット作『プラダを着た悪魔』のスタッフであったケイト・バーカー=フロイランドが監督と脚本を務め、事故で昏睡状態となった弟を看病する姉フラニーと、弟が敬愛する人気ミュージシャン・ジェイムズとの7日間にわたる交流を描くラブ・ロマンスだ。

今回は、アン・ハサウェイがプロデューサーとしての経験、内向的なフラニーを自ら演じることになった経緯と主人公像、そして多彩なインディ・ミュージシャンを起用した音楽について語ったインタビューを掲載する。

新しいフィルムメーカーに脚光を当てる手助けができた

──『ブルックリンの恋人たち』はあなたの初プロデュース作品ですね。この脚本にはどのようにして出会ったのですか?

プロデューサーという仕事に元々興味があったの。この映画のプロデューサーを務めている夫のアダム・シュルマンと一緒に何かできることを探していて、私の出演した『レイチェルの結婚』を監督してくれたジョナサン・デミにそのことを話したのよ。その時彼はちょうど今作の監督で、『プラダを着た悪魔』でデビッド・フランケル監督のアシスタントとして私が一緒に仕事をしたケイト・バーカー=フロイランドと一緒にこの脚本を練っていて、私たちにこっそり脚本を見せてくれて、ケイトに引き会わせてくれたの。お互いに特別な何かを感じたわ。私たちがこの映画をプロデュースするのはいいかもしれないと彼が思ってくれたなんて、とてもうれしかったわ。

彼女の脚本はとても美しくて、文章力もすばらしいと思ったし、私たちはすっかり気に入った。音楽を書き下ろしてくれるのにぴったりなミュージシャンも、きっと見つけ出せるって思ったの。この作品こそ、私たちが本当にやりたいことなんだって確信して、プロデュースすることにしたの。

──始めてのプロデュース作品を完成させて、満足していますか?

素敵な経験になったわ。すごく良いコラボレーションだったし、新しいフィルムメーカーに脚光を当てる手助けができたのもエキサイティングだった。ケイト・バーカー=フロイランドは、これで監督デビューを果たしたのよ。彼女はすばらしい仕事をしてみせたと思う。私は、もともと、プロデューサーとしてこの作品に関わるつもりだったけれど、その後に、出演もすることになったの。私がケイトに、私をこの役の候補に考えてくれますかと聞いたのよ。その段階で、保証はなかった。脚本では、この役は24歳という設定だったから、ケイトに「ほんとに私がこの役をやっていいの?」と聞かなきゃいけなかったの(笑)。

──ケイト・バーカー・フロイランド監督とあなたが『プラダを着た悪魔』で仕事をしたのは、9年も前ですね。久しぶりの彼女とのお仕事は、いかがでしたか?

『プラダを着た悪魔』の時は、彼女のことをあまり知らなかったのだけれど、私が覚えているとおりの人だったわ。おとなしい一方で、とても強い人でもある。すごくしっかりしているなあと思う人に出会うことがあるわよね。彼女は、たった23歳の時にも、そういう人柄が外から見ても明らかだったのよ。彼女は静かで、他人の注意を惹くために現場で叫んだりしない。ただそこに座って、静かな自信を漂わせている。そんな彼女が私たちを率いてくれることにも、興奮を感じたわ。

映画『ブルックリンの恋人たち』のアン・ハサウェイ(左)とケイト・バーカー=フロイランド監督(右)
映画『ブルックリンの恋人たち』のアン・ハサウェイ(左)とケイト・バーカー=フロイランド監督(右)

バックにスタジオがついていないから、
自分たちでやっていかなくちゃいけない

──プロデュースをしていく過程で、何か驚かされたことは?

ずっと俳優として映画には携わっていたから、こんなことを言うのはちょっと恥ずかしいんだけど、映画を作るのって本当に大変な仕事なの!私たち俳優のために物事がスムーズにいくよう動いてくれていたプロデューサーに、今までちゃんと感謝してこなかった。大きなプロジェクトの小さな部分にしか見えていなかったのね。でもそうすることが必要だった。だって私たちは役に集中しているから。舞台裏で起こっている様々なドラマに気を逸らしていてはいけないのよ。役に入りこむのが私たちの仕事ですもの。

でも、今回こうして舞台裏にやってきて、これまで一緒に仕事をしてきた素晴らしいプロデューサーに対する感謝の気持ちがより一層強まったわ。実際の仕事は、傍から見ているよりもずっと大変だったの。

──昨年末には『インターステラー』が公開されましたので、これは、オスカー受賞後初めての作品というわけではありませんが、『レ・ミゼラブル』でオスカー女優という肩書きをもらった後、これまでと違うプレッシャーを感じたりしましたか?

いいえ、それはなかったわね。あるとすれば、プロデューサーとして、女優として、ケイトのために仕事をこなすことかしら。そして、誰も失望させたくないというプレッシャーね。今回はバックにスタジオがついていないから、自分たちでやっていかなくちゃいけない。頼れるのは、私たちだけだったの。

ケイトのことはすごく信頼していたけど、もし何か上手くいかないことがあったら、誰よりもその負担を背負うことになるのは私だっていうことは分かっていた。でもそんなことは起こらなかったの。必ずしも上手くいくかどうか分からなくても、何かに挑戦できるとてもいい機会だと思っていたわ。この作品に誇りを感じているし、作品の顔としてケイトが称賛されることを願っている。当初私が感じていた不安は、作品が始動し始めてすぐに消えていったわ。

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

音楽に満ちた世界に毎日浸ることができたのは幸せだった

──母親に歌ってと懇願されて、あなたが演じる主人公のフラニーが嫌々彼女の願いを叶えるというシーンがありますよね。あなたは素晴らしい声を持つ、生まれながらのパフォーマーだと思うけど、あのシーンを演じるのは大変だった?

あれは私じゃなくて、フラニーよ。半分酔っぱらった状態で、好きな、もしかしたら愛しているかもしれない男の人の前で歌を歌うことがどれだけ恥ずかしいか、フラニーの気持ちを考えていたわ。母親を演じたメアリー・スティーンバージェンと私は、早い段階からそれぞれのキャラクターについて話し合っていた。メアリーは自身が演じた母親を「自分勝手な人だ」と捉えていたわ。フラニーは、長い間自分勝手なことをしていたから、母親からのお願いに対してある種の気遣いがあったの。母親を喜ばせるために、フラニーがちょっと羽目を外すあのシーンが私は好き。私はパフォーマーだから、羽目を外すのには慣れているし、そういう意味ではあのシーンはチャレンジではなったわね。でもすごく楽しかったわ。

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より、左から、母親役のメアリー・スティーンバージェン、ジョニー・フリン、アン・ハサウェイ © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

──劇中でフラニーとジェイムズがふたりで「Afraid of Heights」という曲を歌うシーンは、あなたとジョニーが即興で作った歌なのだそうですね。今作で、もっと歌声を披露してほしかったです。

ストーリーに合うとは思わなかったの。もし本当にそうするのであれば、みんなの私に対する期待に応えなければならないもの。彼女は人類学者という設定だから、人知れず歌ってるのよ!(笑)。私たちの元には、素晴らしい才能を持ったミュージシャンが集まってくれたから、それ以上付け加えるものはないと思っていたの。ジョニー・フリンがステージに上がって彼の想いを歌っている時、アン・ハサウェイの歌に邪魔されたくなかったでしょ?

──『レ・ミゼラブル』と比べて、今作のほうが、楽でしたか?

メアリーは歌うとき、いつも緊張しているの。その意味では、今回はちょっと恥ずかしい気持ちになったかもしれない。でも、音楽に満ちた世界に毎日浸ることができたのは、幸せだったわ。私にとって、音楽とは「喜び」なの。だから、この映画を作るのは、とてもハッピーでマジカルな体験だった。

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より、人気ミュージシャンのジェイムズ・フォレスターを演じるジョニー・フリン © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

あまりにも強くて、自分でも説明できないような繋がりを感じること

──『プラダを着た悪魔』の魅力のひとつは、ニューヨークを魅力的に描いているところにもあります。今作の舞台は、ブルックリン。あなたにとってニューヨークは特別な思いのある場所だと思いますが、その魅力を映画でとらえるのは、どんな体験となりましたか?

今はもう違うのだけど、私はとても長い間、ニューヨークの住人だった。その間、私自身はずいぶん変わったわ。28平方メートルの、冷房のないアパートに住んでいたティーンエイジャーの時代。『プラダを着た悪魔』を撮影している時も、ニューヨークに住んでいた。あの街に戻るたびに、過去の自分自身の幽霊に出会うような気がする。フラニーも、まさに同じ思いなのよ。ブルックリンに関しては、とくに、小綺麗に変わりすぎてしまった、商業化しすぎてしまったと不満を言う人も多い。だけど、今でも、ニューヨーク、そしてブルックリンには、ロマンチックな静脈がある。そして、昔の自分に引き戻してくれるの。19歳の時に、なんだって可能なんだと信じつつ、若いアーティストとしてあの街にやってきた私の場合は、とくにそうよ。この映画は、そんな部分もとらえていると思う。

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

──音楽はこの映画の大事な要素ですが、シャロン・ヴァン・エッテンやダン・ディーコン、フェリス・ブラザーズなど、今作に関わるミュージシャンを選ぶ上では、あなたも意見を言ったのでしょうか?

プロデューサーとして、私が重要な貢献をできた部分があるとしたら、夫と私がジェニー・ルイスとジョナサン・ライスを連れてきたことじゃないかなと思っている。ジェニーとジョナサン・ライスはパートナーで、私と夫アダム・シュルマンは、ふたりと友達だったの。ふたりに音楽を手がけてもらったことを、私たちは誇りに感じているわ。映画の中に出てきたミュージシャンたちに関しては、ジェニーとジョニーの力が大きい。彼らが尊敬するアーティストとか、同じレーベルにいる人たちとか。彼らが持ってくる曲を聴いて、私は「これがいいわ」「あれもいいわね」と言い、「あら、みんな映画に出てくれると言っているの?最高だわ」という感じだったのよ。

──エレクトロニック・アーティスト、ダン・ディーコンのライヴで踊るシーンもありますね。

あの踊るシーンはとても楽しかったのよ。彼も現場にいたの。映画のためにあの素敵な歌を作ってくれた。サウンドトラックにも入っているわ。サウンドトラックはとても良い出来で、誇りに思っている。あれは、撮影する上で、私のお気に入りだったシーンのひとつね。あの内向的なキャラクターが、やっと自分自身を解き放つシーンだから。

──今作のオリジナル楽曲を手がけるジェニー・ルイスの「Just One Of The Guys」のミュージック・ビデオに出演されていますが、この映画がきっかけだったんでしょうか?

当時、ちょうどジェニーがアルバムのレコーディングをしていて、曲をかけてくれたのね。それはすばらしかった。そして、彼女がミュージック・ビデオを撮影する時になると、彼女は私をキャストしてくれたの。友達だからよ。あのビデオのことは誇りに思っているし、あれはすごく楽しい体験だったわ。あまりにも笑い過ぎて、お腹にシワができたわよ。ワークアウトから来る筋肉のシワじゃなくて、笑いから来るシワね。

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

──彼女のファッションはカジュアルですが素敵ですね。あなたの意見も反映されているのでしょうか?

衣装デザイナーのエマ・ポッターと一緒に考えたわ。彼女は、私に、たくさんの選択肢を与えてくれた。私とエマは、このキャラクターについて、同じ視点を持っていたの。彼女の服は、彼女が置いていったものであるはず。つまり、ティーンエイジャーだった時に着ていたものとか、見た目がどうかなんてあまり考えず、楽ならいいやとスーツケースに放り込んだものとかが混ぜこぜになっているはずなの。だから、彼女は、やたらとぶかぶかしたシャツを着たりするのよ。もしかしたら、昔フラニーのお父さんが着ていたのが、どこかに残っていたのかもしれないわね。

──最後に、ひとめぼれとはいうほどではないものの、フラニーはすぐにジェームズと恋におちますね。会ったとたんに恋愛感情をもつことは、実際に可能だと思いますか?7日間の恋とは可能なものなのでしょうか?

そうね、可能かどうかは、映画を観てもらわないとね。歳を取るにつれて、恋とは何かというものについての考え方は変わったかもしれない。ひとめぼれを信じるかどうかはさておき、自分の経験からいうと、ものすごく辛い時期を過ごした後に、突然どこからか誰かが現れて、すごく短い期間、その人と繋がりを感じることは、あると思う。あまりにも強くて、自分でも説明できないような繋がりを感じることがね。

それはもともと永遠に続くためのものではなく、その時だけのためのもの。でも、それが、力づけてくれた。そんな経験をした人は、多いんじゃないかしら。少なくとも、私にとってはそうよ。この映画で描かれるのも、そんな関係。危機に直面している彼女を救ってくれる唯一の存在は、見知らぬミュージシャン、ジェームズだったのよ。

時には、それが恋愛へと発展していくのかもしれない。でも、自分がその人を愛しているとわかる前には、葛藤があるものよ。その愛が、本当になる前にね。それでもまず、誰かに夢中にならなければ。それを乗りこえて、愛を築き上げなければいけないと思うわ。

(オフィシャル・インタビューより)



アン・ハサウェイ(Anne Hathaway) プロフィール

1982年11月12日生まれ、アメリカ/ニューヨーク州ブルックリン出身。弁護士の父と舞台女優の母、兄と弟という家庭で育つ。高校卒業後、ニュージャージーのペーパーミル・プレイハウスやニューヨークの名門演劇学校バロー・グループの俳優養成講座で学び、そして映画デビュー作『プリティ・プリンセス』(01/ゲイリー・マーシャル監督)で主役に抜擢され、一躍人気を博す。主な出演作品は、『ブロークバック・マウンテン』(05/アン・リー監督)、『プラダを着た悪魔』(06/デヴィッド・フランケル監督)、『レイチェルの結婚』(08/ジョナサン・デミ監督)ではゴールデングローブ賞、アカデミー賞でそれぞれ主演女優賞に初ノミネートされた。『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(11/ロネ・シェルフィグ監督)、『ダークナイト ライジング』(12/クリストファー・ノーラン監督)など話題作に出演、『レ・ミゼラブル』(12/トム・フーパー監督)では持ち前の歌唱力を披露し、ついにアカデミー賞助演女優賞に輝いた。2014年は『インターステラ―』(クリストファー・ノーラン監督)に出演。




映画『ブルックリンの恋人たち』
3月13日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開

映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved
映画『ブルックリンの恋人たち』より © 2014 song one funding LLC All Right Reserved

モロッコに住み、遊牧民の文化を研究しながら人類学博士号を目指しているフラニー。そこへ母親のカレンからミュージシャン志望の弟のヘンリーが交通事故で昏睡状態にあると緊急の連絡が入る。実家に戻ったフラニーは、自分が不在中のヘンリーの生活を垣間見ようと彼の部屋を覗く。ギターケースの中にあったヘンリーが書き残したノートノートの間に人気ミュージシャンのジェイムズ・フォレスターのライブチケットが挟まっていた。弟の代りにジェイムズのライブに出かけたフラニーは彼に、ヘンリーの作曲したCDを渡す。

監督・脚本:ケイト・バーカー=フロイランド
出演:アン・ハサウェイ、ジョニー・フリン、メアリー・スティーンバージェン
制作:マーク・ブラット、ジョナサン・デミ、アダム・シュルマン、アン・ハサウェイ
提供:ハピネット、ファントム・フィルム
配給:ファントム・フィルム
© 2014 song one funding LLC All Right Reserved

公式サイト:http://brooklyn-movie.com/
公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/ブルックリンの恋人たち/637659079673043
公式Twitter:https://twitter.com/brooklyn_koi


▼映画『ブルックリンの恋人たち』予告編

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