骰子の眼

cinema

東京都 ------

2015-09-07 13:37


田中泯出演、映画『蜃気楼の舟』リターン総数1,000以上の〈体験型〉クラウドファンド始動

カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭正式出品、『今、僕は』竹馬靖具監督の新作が異例のキャンペーン
田中泯出演、映画『蜃気楼の舟』リターン総数1,000以上の〈体験型〉クラウドファンド始動
映画『蜃気楼の舟』より

クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は、竹馬靖具監督の新作『蜃気楼の舟』の全国公開を応援するプロジェクトを紹介する。

今作は、現在、NHK連続テレビ小説「まれ」に出演中のダンサー田中泯さんが出演、7月に開催された東欧最大の映画祭であるカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭に正式出品された。国内初公開の『蜃気楼の舟』の本編映像を含む、特別動画も公開されている。

▼映画『蜃気楼の舟』MotionGallery特別動画

今回のプロジェクトは、250万円を目標に、9月7日(月)から11月30日(月)まで、「『蜃気楼の舟』を体験として届けること」をテーマに実施。『蜃気楼の舟』の特別鑑賞券につけ加わるかたちで、体験型イベントへの参加券や出演者・スタッフ・関係者が持ち寄った品々など累計1,000個以上のリターンが用意されている。

田中泯さんが自身の著書にサインを付けたものを計100点、小野絢子さんはサイン付きのトゥーシューズを持ち寄り、他にもアップリンク代表・浅井隆のフリーマーケット、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のオフィシャルグッズ、ヘアメイクスタッフによる出張カットサービス、高級アンティーク等、ユニークなリターンが揃っている。

集まった資金は、制作物の費用、印刷費、郵送費、HP制作、デザイン費用、試写会やイベントの運営費、予告編制作費、地方宣伝費、人件費、公開の際の音楽使用料金などに充てられる。

詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。

映画『蜃気楼の舟』より
映画『蜃気楼の舟』より

リターンの一例

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田中泯さんのサイン入り書籍
田中泯,松岡正剛(共著)「意身伝心: コトバとカラダのお作法」 田中泯サインつき(5501円)
田中泯「僕はずっと裸だった:前衛ダンサーの身体論」サイン付き(6002円)




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小野絢子さん着用 撮影で使用した「青い服の女衣装」(15005円)
小野絢子さんトゥーシューズ(サインつき)(25001円)




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『蜃気楼の舟』ロケ—ション・雨池(八ヶ岳)登山ツアー(8004円)
見渡す限りの大草原での鹿の解体ワークショップ(15003円)など、体験型イベント付きのリターン




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小野絢子さん出演、新国立バレエ団鑑賞イベント 優先予約券(3501円)
俳優道を聴く。北見敏之を囲んで話す会@新宿のバー(4501円)(3501円) など、出演者関連イベント付きのリターン


ほか、1,000以上のリターンの詳細は特設サイトをご覧ください。
http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/funding/




映画『蜃気楼の舟』ストーリー

映画『蜃気楼の舟』より
映画『蜃気楼の舟』より

主人公の男は、母親を亡くし、父親に捨てられた過去を持つ。友人に誘われたことがきっかけで囲い屋で働き始め、能面のように無感情になった男は、ただ毎日を浪費していた。ある日、ホームレスのひとりに、自らの父を発見する。それまでホームレスたちをモノのように扱ってきたが、父との再会により、初めて揺れ始める男。男の揺れは、彼の日常ともう一つの別の世界とが交わるきっかけとなる。導かれるように父を連れて囲い屋を出た男は、自身の欠落を問うために車を走らせる。現実ともう一つの世界の間を揺れ動くドライブの中で父と訪れた廃墟には、母親の幻影がさまよっていた。そして、並行して描かれる、現実と幻想の狭間を航海する一艘の舟の意味するものとは……。




『蜃気楼の舟』竹馬靖具監督からのメッセージ
「あなたへ」

映画『蜃気楼の舟』竹馬靖具監督

映画『蜃気楼の舟』を監督した竹馬靖具です。この映画をどうしてもあなたに観てもらいたいという想いからメッセージを書きました。これを読んで、少しでも映画を観たいと思ってくださったらとても嬉しいです。

僕は、北関東の地方都市に生まれ育ちました。高校卒業後、ただ漠然と何かをしてやろうという気負いのままに、曖昧な夢を描いて東京へ出て来ましたが、実際に東京に来てアルバイト生活をしてみると、そんな想いはすぐに消えてなくなってしまいました。ただがむしゃらに働き、とにかく稼いで先に進もうとした結果、故郷にいたときのように友人や恋人もでき、ある程度ひと並みの生活は出来るようになりました。

しかし、生活は満たされても、周りに溢れる物や人は、際限なく欲望を刺激するばかりで、僕の渇きはどこまでも収まらなくなっていき、浅ましい感情が増幅していくのを感じました。そのうちに僕自身の実体も希薄になり、自分が物のようになっていく感覚が蓄積されていったのです。けれども、自分は元々そんな存在に過ぎなかったのではないか、と自身に問うと、否定することはできません。

故郷を思い返せば多少なりとも思い出はあります。友人、恋人、家族などと過ごしたごく普通の生活。地方都市によくある国道沿いのマクドナルド、その他もろもろのチェーン店のオンパレード。直ぐに思い浮かぶのは、マクドナルドで家族全員で食べたビッグマック。 あの時はすごく美味しかった気がします……が、このファスト化された環境で過ごした無数の記憶は、当時から現在に至るまで、自分を支える芯になっていくことはありませんでした。

この事実は、今改めて考えてみると、どこまでも画一化された場所と感覚がまんべんなく浸透している現れのように思います。それは、どこにいても自身が抜け殻のような亡霊であって、生きているのか死んでいるのかわからないような存在であることの証明のような気がしました。そしてそんな感覚が、どこまでもそれらの場所を伝って、広い範囲の人に、浸透してきているようにも思えました。 ある日、テレビのニュースで「囲い屋」という悪徳業者の特集を見ました。どこにも行くことのできない若者と老人達が金の為に自身の感覚や良心をなくしていく。これは、東京に来て、生活のために自身の内面を加速的に劣化させていった自分と変わらないじゃないか、と思ったのです。

囲い屋の若者達が抱くこの感覚。人間を物や家畜のように扱ってしまい、なんの良心の呵責も起こさない。これは僕の感覚とも地続きだなとも感じました。そうして僕は、囲い屋で働く若者を主人公にして脚本を書き始めたのです。

主人公は自身の生が摩耗しきったことにも気づかない若者です。この若者が生を取り戻すことができるのか?その地平に何が見えるのかを描くことが大事だと思っていました。そして、劣化した人間の渇望を、異空間で彷徨う主人公に投影させていきました。それを囲い屋の生活と対比させていくことで、まだ残されているであろう生命の輝きの源泉とでも言える、ある感覚、強い想い、美しさ、原風景、原体験、もしくはそれらがすべて合わさった複雑なイメージ、像を捉えようと思ったのです。

僕には忘れられないとても大事な映画がいくつかあります。その映画を観ていると、ある感覚に捉われます。とても懐かしく、自分の奥深くに沁み渡っていく満ちたりた感覚です。それは失くしてしまった、または消えてしまった何かを、呼び覚ましてくれます。生まれ育った場所や周辺を辿っても、この感覚は決して訪れません。この再会は、刺激に刺激を重ねて、尊い記憶の始まりや印象を失くしてしまったかもしれない、という恐ろしい気づきが伴う瞬間でもあります。失われた感覚に触れる、その体験を、僕はあなたにこの映画を通して感じてもらえることを願っています。それは自分が劣化の一途を辿るなかで、唯一見つけることができた可能性です。自分を信じられた要素はこのような感覚でしかなく、人間だれしもが持っているはずの感受性に希望を見出せた瞬間でもあったのです。

その感覚を喚起させるのは、映画に流れる独自の時間によって現れる、イメージの力であると信じています。




映画『蜃気楼の舟』
2016年1月、渋谷アップリンク他、全国順次公開予定

映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター
映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター

監督・脚本:竹馬 靖具
撮影:佐々木 靖之
照明:關根 靖享
助監督:池田 健太
編集:山崎 梓、竹馬 靖具
録音:上條 慎太郎
整音:鈴木 昭彦
効果:堀 修生
スタイリスト:碓井 章訓
ヘアメイク:寺島 和弥
プロデューサー:竹馬 靖具、汐田 海平
テーマ曲:「hwit」(坂本龍一『out of noise』より)
音楽:中西俊博
製作:chiyuwfilm
出演:小水 たいが、田中 泯、足立 智充、小野 絢子、竹厚 綾、川瀬 陽太、大久保 鷹、中西 俊博、北見 敏之、三谷 昇 他
配給:アップリンク
2015年/99分/1:1.85/カラー & モノクロ/5.1ch/DCP

MotionGallery特設ページ:
https://motion-gallery.net/projects/SHINKIRO_NO_FUNE/
映画『蜃気楼の舟』クラウドファンディング特設サイト:
http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/funding/
映画『蜃気楼の舟』公式サイト:
http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/

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