骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2016-04-27 11:30


全国5都市開催、映像アートの祭典「イメフォフェス」お薦め5プログラムを見逃すな!

『俳優、ヘルムート・バーガー』『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』など
全国5都市開催、映像アートの祭典「イメフォフェス」お薦め5プログラムを見逃すな!
『俳優、ヘルムート・バーガー』

第30回となる映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル」が4月29日(金・祝)から東京でスタート、その後も京都、福岡、名古屋、横浜の全国5都市で開催される。 一般公募部門作品を集めた「ジャパン・トゥモロウ」、日本招待部門の「ニューフィルム・ジャパン」、『ポップ・カルチャーと映像表現』そして『ポートレートの臨界点』をテーマにした海外招待部門「ニューフィルム・インターナショナル」ほか、フェスティバルの過去の公募部門の受賞作をセレクトした「特集:ユニーク・エンカウンターズ イメージフォーラム・フェスティバル30回記念回顧展」が行われる。今回はイメージフォーラムの山下宏洋さんから、「ニューフィルム・インターナショナル」より、ジョン・ウォーターズ監督が2015年のベストワンに推した『俳優、ヘルムート・バーガー』ほか、注目の上映作品をレコメンドしてもらった。




『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』
マイク・ケリー

『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』
『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』Courtesy of Electronic Arts Intermix (EAI) and Mike Kelley Foundation

吸血鬼、ゴスロリ少女、ヒルビリー女、パントマイム、悪魔たちがカーニバル的に集う破壊的ミュージカル作品。アメリカ社会に潜むトラウマ、虐待、抑圧された記憶が、ポップ・カルチャーの引用を通じて照らし出される。マイク・ケリーが「社会的に認められた逸脱の儀式」と見なしたアメリカの高校の課外活動にインスピレーションを受け制作した32幕の映像作品。
デジタル/169分/2006年-2009年/アメリカ

90年代以降の日本のアートシーンやポップカルチャーにも非常に大きなインパクトを与えたはずのアーティスト、マイク・ケリーですが、なかなか日本に紹介される機会が少ないなと思っていました。本作品は彼の後期の作品でパフォーマンス色の強い映像ミュージカル大作ですが、彼の通っていた学校の建物の記憶を建築模型化した作品「Educational Complex」と関連があるとのこと。生きていく上で抑圧してしまった学校時代の記憶がテーマのようです。一見色彩豊かで楽しげなポップさは、壊れたおもちゃの機関車のように永遠に空虚な世界を逡巡します。

Lプログラム『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』
1作品・169分
【東京】5/1 20:20、5/5 20:20
【京都】5/14 11:00
【横浜】7/18 16:00




『ミシェル・ウエルベック誘拐事件』
ギヨーム・ニクルー

『ミシェル・ウェルベック誘拐事件』
『ミシェル・ウェルベック誘拐事件』

2011年9月、『地図と領土』を刊行したばかりの作家ミシェル・ウエルベックが突如失踪した。かねてから物議を醸していたイスラム教についての発言に刺激されたアルカイダに誘拐されたのか? メディアは大騒ぎとなり、その行方について様々な憶測が飛び交った。ウエルベックは失踪についてその後一切口をつぐんでいるが、その一方でこの映画が存在する。
デジタル/92分/2013年/フランス

昨年『服従』で大きな衝撃を与えた小説家、ミシェル・ウエルベック。かく言う私もこの小説の、ある意味身も蓋もなさに固まりました。未読の方は是非読んでみて下さい。本作品はそのウエルベックとこれまた一筋縄ではいかない映画監督ギヨーム・ニクルー(新作は肥満体のドパルデューがひたすら森をさまよい、謎の災難に遭うという奇妙な作品)が制作しました。あまりネタバレをしたくありませんが、意外な形でウエルベックという人のキャラクターが見えてきます(意外とかわいい)。混乱を楽しんでみて頂ければと思います。

Mプログラム『ミシェル・ウェルベック誘拐事件』
1作品・92分
【東京】4/29 11:00、5/6 21:15




『俳優、ヘルムート・バーガー』
アンドレアス・ホルヴァート

『俳優、ヘルムート・バーガー』
『俳優、ヘルムート・バーガー』

かつてのルキノ・ヴィスコンティ映画のスター(『ルートヴィヒ』『地獄に堕ちた勇者ども』)で、一時代を築くセックス・シンボルだったヘルムート・バーガー。昔の思い出の品々に囲まれウィーンのアパートで暗澹と孤独に暮らし、現在気にかけてくれるのは掃除のおばさんだけ。そこにドキュメンタリーのカメラが入り込み、監督と俳優は異様な関係性を構築し始める…。ドキュメンタリーのルールを逸脱した、近年ない怪作。
デジタル/90分/2015年/オーストリア

今年一番の怪作です。すみません、希代の美青年ヘルムート・バーガーの想い出を壊したくない方はどうぞご覧にならないで下さい。その想い出、容赦なくぶち壊されます。ドキュメンタリー演出論的な問いも、強烈に蝕まれます。さすがアクショニズムを生んだ地、オーストリア……!

Nプログラム『俳優、ヘルムート・バーガー』
1作品・90分
【東京】4/29 21:15、5/3 11:00
【京都】5/22 19:00
【福岡】6/4 18:30
【名古屋】6/26 17:00




『ディス・イズ・ナウ ポストパンクのフィルムとビデオ』
『パフォーミング・ザ・セルフ』『ジャスト・イメージ』『暗いガラス越しに』

『ディス・イズ・ナウ ポストパンクのフィルムとビデオ』
『ジャスト・イメージ』より、『サイキックTV:アンクリーン』ケリス・ウィン・エヴァンス+ジョン・メイブリー

1980年代初頭のイギリスでは、美大生、クラバー、ニュー・ロマンティックやポストパンク・シーンの人々が安価で入手しやすいビデオや8ミリフィルムといったメディアを使って詩的で過激な表現を生み出していた。政治的な不透明さが混迷を深める中、若い映像作家たちはパンクから引き継いだDIY精神を駆使して既存のメディアに抵抗し、その後の表現に大きな影響を与えた。その後30年間ほぼ上映されていなかった重要なポップカルチャーの歴史がデジタル化によって甦る。プログラム・キュレーション:ウィリアム・ファウラー(英国映画協会(BFI)アーカイブ担当)

ポストパンク、サッチャー政権、ビデオの登場、そういった時代と結びついた80年代のイギリスの映像作品です。ニューロマンティックとかポジティブパンクとかインダストリアルとか、そういう言葉に反応する方、是非ご覧下さい。イメージフォーラムには先月末、ニューヨークのポスト・ パンクの映像作家リチャード・カーンが来日していました。彼にこのプログラムで上映する、ほぼ同時期に活動していたイギリスの作家たちと交流があったりしたのか聞いてみましたが、あまり反応がありませんでした。ヨーロッパの映像作家で交流があったとして唯一名前があがったのはドイツのブットゲライトだけでした……。

Sプログラム『パフォーミング・ザ・セルフ』
6作品・72分
【東京】5/2 21:15
【東京】5/6 13:45
【京都】5/22 11:00
【名古屋】6/26 11:00
【横浜】7/17 18:30
『モダン・イメージ』ジョン・メイブリー/8ミリ(デジタル版上映)/13分/1978年/イギリス
『ソリチュード』ジョン・メイブリー/8ミリ(デジタル版上映)/13分/1981年/イギリス
『バンガロー・ディプレッション』グレイソン・ペリー+ジェニファー・ビニー/8ミリ(デジタル版上映)/4分/1981年/イギリス
『プライベート・ビュー』ザ・ネオ・ナチュリスト/8ミリ(デジタル版上映)/7分/1981年/イギリス
『エコー&ザ・バニーメン:シャイン・ソー・ハード』ジョン・スミス/16ミリ(デジタル版上映)/32分/1981年/イギリス
『アダム・アント:スタンド・アンド・デリヴァー』マイク・マンスフィールド+アダム・アント/ビデオ/3分/1981年/イギリス

Tプログラム『ジャスト・イメージ』
4作品・80分
【東京】5/3 21:15、5/6 16:15
【京都】5/22 13:45
【名古屋】6/26 13:10
【横浜】7/18 11:30
『奇跡の宮廷』ジョン・メイブリー、出演:スージー・スー/8ミリ(デジタル版上映)/44分/1982年/イギリス
『グローリー・ボーイズ』ヴァンダ・カーター/8ミリ(デジタル版上映)/3分/1983年/イギリス
『テリトリーズ』アイザック・ジュリアン/16ミリ(デジタル版上映)/24分/1984年/イギリス
『サイキックTV:アンクリーン』ケリス・ウィン・エヴァンス+ジョン・メイブリー/ビデオ/9分/1984年/イギリス

Uプログラム『暗いガラス越しに』
8作品・76分
【東京】5/4 21:15
【東京】5/6 18:45
【京都】5/22 16:30
【名古屋】6/26 15:20
【横浜】7/18 14:00
『傷』ジル・ウエストウッド/8ミリ(デジタル版上映)/18分/1984年/イギリス
『ハルツ山脈への冬の旅』コーデリア・スワン/ビデオ/12分/1983年/イギリス
『リキッド・ビデオ』マイケル・コスティフ/8ミリ(デジタル版上映)/10分/1983年/イギリス
『ザ・ブランクス』羽田明子/ビデオ/7分/1982年/イギリス
『全てベニヤ、支え骨なし』ホリー・ワーバートン/8ミリ(デジタル版上映)/5分/1980年-84年/イギリス
『23スキドゥー:F.U.G.I.』リチャード・ヘスロップ/ビデオ/5分/1983年/イギリス
『グレイソン/花/宝石』ジェニファー・ビニー/8ミリ(デジタル版上映)/3分/1985年/イギリス
『リリカル・ダウト』ジュディス・ゴダード/ビデオ/16分/1984年/イギリス




『ダダ100年:フルックス・フィルム』

『フルックス・フィルム』
『ダダ100年:フルックス・フィルム』

ダダイズムと未来派の影響を受け、美術における既成の概念を<遊び>の感覚で軽々と飛び越えようとした運動、フルクサス。その中心人物ジョージ・ マチューナスによって集成された37本の短編映画集がフルックス・フィルムである。マチューナスはこのシリーズで映画という概念自体も飛び越えようと考え、これらの作品はマルチ・プロジェクションやインスタレーション、フリッ プ・ブックという形で展示することも試みていた。ダダイズムのスイス・チューリッヒでの誕生から100年を記念して、貴重な16ミリプリントで上映。映像作家ピップ・ショドロフによる解説あり。

Rプログラム『ダダ100年:フルックス・フィルム』
36作品・122分
【東京】5/4 18:45
【京都】5/21 13:45
【福岡】6/5 16:10
【名古屋】6/25 17:00
【横浜】7/17 11:30




イメージフォーラム・フェスティバル2016

イメージフォーラム・フェスティバル2016

東京:2016年4月29日(金)~2016年5月6日(金)
シアター・イメージフォーラム
京都:2016年5月14日(土)~2016年5月22日(日)
京都芸術センター
福岡:2016年6月3日(金)~2016年6月5日(日)
福岡市総合図書館
名古屋:2016年6月22日(水)~2016年6月26日(日)
愛知芸術文化センター
横浜:2016年7月16日(土)~2016年7月18日(月)
横浜美術館


主催:イメージフォーラム
共催:京都芸術センター、福岡市総合図書館、映像ホール・シネラ実行委員会、愛知県美術館、横浜美術館
助成:芸術文化振興基金助成事業、公益財団法人ポーラ美術振興財団
協賛:株式会社ダゲレオ出版
協力:東京ドイツ文化センター
後援:在日スイス大使館、ベルギー王国大使館
http://imageforumfestival.com/


▼映画『マイク・ケリー デイ・イズ・ダン』抜粋映像

▼映画『ミシェル・ウエルベック誘拐事件』海外版予告編


▼映画『俳優、ヘルムート・バーガー』海外版予告編




『混沌が意味するもの─松本俊夫アヴァンギャルド映像特集上映』
5月28日(土)~ 6月3日(金)
渋谷アップリンクにて上映

松本俊夫

日本実験映画のパイオニア・松本俊夫の著作活動を網羅した集成(全4巻/森話社)の刊行開始を記念して、松本俊夫が監督したアヴァンギャルド映像作品を特集上映。

アップリンク公式サイト


『サロメの娘 アナザサイド(in progress)』
6月4日(土)~ 6月10日(金)
渋谷アップリンクにて上映

映画『サロメの娘 アナザサイド(in progress)』

『眠り姫』の七里圭監督最新作。映画を音から作り始める実験的制作の、ワーク・イン・プログレス第(3)弾。

アップリンク公式サイト

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