骰子の眼

art

東京都 渋谷区

2016-11-06 21:30


岡田裕子+会田誠の劇団の映画、飯村隆彦のライブもあるアートフェス「IAFT16/17」

アップリンク渋谷にて11/12(土)、25(金)開催、ディレクターが見どころを紹介
岡田裕子+会田誠の劇団の映画、飯村隆彦のライブもあるアートフェス「IAFT16/17」

国内外の多様なアート作品を紹介するイベント・Interdisciplinary Art Festival Tokyo(インターディシプリナリー・アート・フェスティバル・トウキョウ)が2016年11月12日(土)、25日(金)の2日間、アップリンク渋谷にて開催。webDICEでは、代表/総合ディレクターの韓成南さんに、このフェスティバルの見どころについて紹介してもらった。

アートを通じメディアと自分自身の関係性を思考する場に
文:韓成南(IAFT代表/総合ディレクター)

Interdisciplinary Art Festival Tokyo(以下IAFT)は国内外の多様なDead-Artではない、Linving-Artの作品を紹介している。メディアの違いや作品により「浸透」のスピードの差はあれど、グローバル化により均一化されていく感覚からすこしはみ出た独自のスタイルは今もなお、東アジアの各地域で発生し続けている。今年のIAFTは「私たちの時代、時のタイポロジー」と題し、人類の「時」と人が定めた「尺度」を身体×テクノロジー、アート×コミュニケーションといった関係性を通じて、ヴィヴィッドな感覚で表現した映像作品やアート・パフォーマンスを紹介する。

IAFTは今年の8月、台湾(台北・高雄)で開催された「OSMOSIS fest」(オズモシス・オーディオヴィジュアル・メディア・フェスティバル2016)に招聘され、東京をベースに活動するアーティストたちのアート・パフォーマンス、映像上映やトークを行い、大盛況を博した。今回のIAFT16/17では、映像上映プログラム「IAFT16/17 meets OSMOSIS fest」と題し、「OSMOSIS fest」で出会った映像、パフォーマンスをセレクションし、IAFT参加作家と共に公開する。

「オズモシス」とは、インパルスを意味するギリシャ語の「OSMOSIS」が語源の「浸透」という現象を意味する。「OSMOSIS fest」は、イメージやビデオ、メディアが過剰に作り出される時代、次から次へと起こるメディアの「浸透」のプロセスを表象するアートを通じ、観客がメディアと自分自身との距離感、関係性を思考する場になることを目的としている。「OSMOSIS fest」は、映像上映プログラム、映像展示、アート・パフォーマンス・イベントの3つを軸に台北市、高雄市の各所で行われた。

exhibition in Taipei
「OSMOSIS fest」映像展示の様子

映像上映プログラムでは、台湾、日本、韓国、上海、スペイン、UKのキュレーターが選んだ現代アート、メディアアート、実験映画、16mmフィルムやアニメーションといったジャンルを切り口とし、珠玉の短編映像が紹介された。

韓国プログラムにあった『You’d be Nowhere』(Sook Hyun KIM作)が、特に印象に残った。忙しい毎日を過ごす韓国の少女が、「不思議の国のアリス」の登場人物に扮したコンテンポラリー・ダンサーと出会いながら、様々な問いを投げかける。「不思議の国のアリス」の歴代アニメーション映画の素材を使用したファウンド・フッテージの手法を取り入れ、物語が繰り広げられる。『You’d be Nowhere』は11月12日(土)IAFT16/17のDay1にて上映される。

You’d be Nowhere1
Sook Hyun KIM監督『You’d be Nowhere』より

震災、国家、革命そして天皇制をキーワードに、台湾人俳優とクリエーションを行った韓成南によるアート・パフォーマンス『人間を演じるということについて』は、台北、高雄でも様々な論争を引き起こした。パーソナルな経験と現代社会の現実が、密着しつつも離反し合い、ワイヤレス映像/音声装置がストーリーと縦横無尽に交差し、ダイナミックに展開した。日本の現在の状況を反映するポリティカルな作品である。

About playing the role of a human1
韓成南のアート・パフォーマンス『人間を演じるということについて』より

また、シンガポールのアーティスト・グループ「インターミッション」は、ドローンやガジェット、映像を駆使し、リアルタイムのオーディオ・ヴィジュアル・パフォーマンスを行った。

ガスマスクからは、無機質な音声がうっすらと流れる。両眼には目隠しのように小型モニターが取り付けられ、手元で繊細に映像をあやつる様は、遠い宇宙や辺境の地からの交信を目の当たりにしているようだ。一方で、拘束されたパフォーマーに反し、客席では別のパフォーマーが、自由に動き回り、ひとりひとりの顔を覗き込む。スクリーンには会場外のドローンの赤外線の映像と鑑賞者の顔の映像等がスイッチングされていく。ドローンがやがて会場に入ってきて、飛行音が響く。身体性とテクノロジーの関係を再考させられるパフォーマンスだ。インターミッションは11月25日(金)IAFT16/17のDay2にパフォーマンスを行う。

inter-mission1
インターミッションのアート・パフォーマンスより

11月12日(土)のDay1は、オルタナティブ人形劇団「劇団★死期」を主宰する岡田裕子+会田誠によるスペシャルトーク付、6カ国の映像作家による映像上映プログラムPart1が行われる。

「劇団★死期」は、現代アートの分野で活躍する岡田裕子と会田誠が中心に不特定多数の団員で形成される破天荒な人形劇団である。会田家が新潟へ帰省した時、会田誠氏の姉の娘が公民館で行った少し残念な人形劇を見て、ある意味衝撃を受け、ちょっとダメな感じでも超ローカルで破壊力のあるものを作ろうと思ったことがきっかけだそうだ。ドヤ街から森美術館まで、発表の場は広く、毎回全く違うテイストの人形劇を披露している。最近では、人形であることもはみだして、より混沌とした劇となっているが、その中にも現代アートの世界等批判精神溢れる内容となっている。そんな彼らがB級映画をめざし、もしかするとB級でなくなってしまった初の映画『NEW ENERGY CINEMA PARADISE』がいよいよ公開される。当日は岡田裕子+会田誠氏のトーク付でお届けする。

劇団死期
IAFT16/17「劇団★死期」インタビューより
『NEW ENERGY CINEMA PARADICE』
劇団★死期『NEW ENERGY CINEMA PARADISE』より

11月25日(金)Day2は、シンガポールのアーティスト・グループ、インターミッションによるドローンを使ったアート・パフォーマンスと、昨年メディア芸術祭で功労賞を受賞した飯村隆彦による映像パフォーマンス、そして6カ国の映像作家による映像上映Part2を行う。

飯村隆彦は、1960年代からフィルムとヴィデオの制作を始め、個展やパフォーマンスを通じ、個人映画作家として国際的に評価されている。半世紀以上、ヴィデオと映画のメディア性の違いを探求し、数々のミニマルで強い作品を制作してきた。ヴィデオは、フィルムにはない、同時性、フィードバックによる循環性に惹かれたそうだ。映画の持つ画質といったマテリアルの特徴よりも、ヴィデオにはコンセプトという点で大きな違いがあるため、自身の制作に適していると実感した。代表作、オブザーバー/オブザーブドの3部作では、見る/見られるという関係性をカメラとモニター、そして自身を間に置き、構造的に「見る」ということをコンセプトとした。

飯村隆彦
IAFT16/17 飯村隆彦 インタビューより

映像にしかできないアートとは、ライブ性のあるパフォーマンス、視覚性はもちろんのこと、言葉を使い、モノローグが可能であること、また最終的にディスカッションに至りやすいこと、全ての行程であるという。ドイツ・ベルリンで行ったパフォーマンスでは、飯村が観客にカメラに向かって話をしてもらい、スクリーンにその様子が映し出され、リアルと映像を対比するというものであった。当時、ベルリンの街では、チリにおけるアメリカの介入に対しての抗議デモが行われていた。するとパフォーマンス中にもかかわらず、観客の一青年が、このパフォーマンスを中断し、今すぐデモに参加しようと呼びかけ、飯村と話し合い始めた。やがて観客同士が白熱した議論となり、青年は突然ナイフを出す。皆が見守る中、彼はおもむろにケーブルを切ってしまった。飯村と観客はその青年に対して、すぐに修理しろと詰め寄る。最終的にケーブルは青年によって修理され、パフォーマンスが再開される、という事件があった。そんなハプニングをも取り込んだ、伝説的なイヴェントを再/公演する。
当日は飯村隆彦の貴重なパフォーマンスをぜひ楽しみにしてほしい。




「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 16/17」
【Day1】11月12日(土)【Day2】11月25日(金)
会場:アップリンク渋谷

【Day1】18:50開場 19:00開演
19:00~ 映像上映プログラム「IAFT16/17 meets OSMOSIS fest part1」
20:30~ アーティスト・トーク 岡田裕子+会田誠

【Day2】18:30開場 19:00開演
19:00~ インターミッションによるアート・パフォーマンス
19:30~ 映像上映プログラム「IAFT16/17 meets OSMOSIS fest part2」
21:15~ 飯村隆彦によるアート・パフォーマンス

料金:
【Day1】前売1,800円/当日2,100円
【Day2】前売2,500円/当日2,800円

前売予約はアップリンク公式ページまで


▼IAFT16/17 オルタナティブ人形劇団 「劇団★死期」(岡田裕子+会田誠)インタビュー

▼IAFT16/17 飯村隆彦 インタビュー

キーワード:

飯村隆彦 / 岡田裕子 / 会田誠 / IAFT


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