骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2016-12-21 18:55


多様性守る“新しいライフスタイル”を探す旅―映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』

監督を務めた女優メラニー・ロラン&シリル・ディオン語る「ポジティブな映画を目指した」
多様性守る“新しいライフスタイル”を探す旅―映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

フランスの女優メラニー・ロランと、彼女のパートナーでNGO活動家のシリル・ディオンが監督を務め、農業・エネルギー・経済・民主主義・教育の分野で新たな取り組みを行う人々を訪ね旅するドキュメンタリー『TOMORROW パーマネントライフを探して』が12月23日(金・祝)より公開。webDICEではメラニー・ロランとシリル・ディオンのインタビューを掲載する。

『TOMORROW パーマネントライフを探して』は、たんにエコロジーに関するドキュメンタリーというのじゃなくて、「未来の社会がどのようなものなのか」を見つめる映画なのよ。(メラニー・ロラン)

西欧型の農業を例にとってみると、完全に化石燃料に依存していることが分かる。つまり、農業モデルを変えることはエネルギー・モデルを変えることでもあるんだ。このように、農業、エネルギー、経済、教育、政治とすべての物事はつながっているんだということを示したかった。(シリル・ディオン)


〈世界を変えよう〉としている先駆者たちに会いにいく

──おふたりはどのようにして出逢われたのですか?またこの映画のきっかけは?

シリル・ディオン(以下、ディオン):2011年に遡るかな。僕は、アルジェリア出身のフランス人随筆家ピエール・ラビや幾人かの友人たちと設立した「コリブリ運動」(小さなことでもいいから自分たちの力でできることをしようという運動で、環境や人を大切にする社会を目指す)に集中してたときのことだった。

ちょうど2012年の大統領選挙もたけなわという時期で、〈全市民が候補者〉を合言葉に、可能なかぎりの大統領候補を集めようというキャンペーン活動をしていたときのことだったと思う。

メラニー・ロラン(以下、ロラン):ちょうど、フランソワ・ミッテラン元大統領夫人のダニエールとの晩餐会でピエール・ラビと会ったところだったわ。彼がキャンペーンのことを紹介してくれ、私の連絡先を教えてあげたら、数日してシリルから参加してくれるよう電話があった。その後、兄弟、母、友人にパートナーまで引っ張り込んでしまうまでになってしまったというわけよ。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』メラニー・ロランとシリル・ディオン ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

ディオン:とにかく一気に物事が動いた感じだったね。さっそくメラニーは、〈世界を変えよう〉としている先駆者たちに会いたがって、それで僕はノルマンディにあるル・ベック・エルアンの農場へ彼女を連れて行ったんだ。そこは映画にも出てくるけれど、ペリーヌとシャルルのエルヴェ=グリュイエール夫妻が運営している農場だ。道中、いろいろ話しているあいだに、同じような考え方を共有していることも分かった。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』より、有機野菜栽培者のシャルル・エルヴェ=グリュイエールとペリーヌ・エルヴェ=グリュイエール ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

で、そのときに、まだはっきりしていない映画の企画について彼女に話したんだ。それから次第に、一緒につくるのはどうかなと思うようになっていって、それでその映画のことを話したら、すぐさま了承してくれ、それからは一気にっていう感じだったね。

未来への計画や展望を映像として示す

──映画は、2012年に「ネイチャー」誌に発表された「地球生活圏の情勢変化が近づく」という科学論文が発端となっていますね。そのなかで、もし私たちの生活習慣を変えなければ、2040年から2100年という近い将来に地球エコシステムが壊滅し、地球上の安定した生命の営みが失われ、多くの種が絶滅するだろうと警鐘を鳴らしています。

ディオン:2010年の12月ごろからシナリオを書き始めたんだ。当時すでに、壊滅的状況だと告発するだけではダメだと考えるようになっていた。未来への展望を示すものにする必要があるだろうとね。人が新しい家のことを夢見て、建築家のもとであれこれプランを練るときと同じような感覚が必要なんじゃないかってね。ところが、建築家による未来の展望や計画など、まったく存在していなかった。映画の第一の意図は、こうした未来への計画や展望を映像として示すことにあったんだ。

でも、この計画に本腰をあげて取り組むには、あまりにもいろんな活動に手を染めすぎていた。そのため、2012年の6月頃には燃え尽きたようになってしまっていた。その1カ月後だったかな、今作でも取材したアンソニー・バルノスキーとエリザベス・ハドリーによる研究論文を知ったんだけれど、とにかく僕にとって衝撃的なものだった。僕自身の崩壊と、地球規模の崩壊が重なってしまった感じだった。自分にとってもっとも重要なことをしなければ、映画を軌道に乗せるべきときだと思ったんだ。

それで、「コリブリ運動」からいったん身を引き、自分の時間のほとんどを映画に費やすようになったというわけだね。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

ロラン:その研究論文を妊娠しているときに読んで、あまりのショックに1日中泣き続けたほどだったわ。こんなふうな絶望感を突きつけてきたシリルを恨んだほどよ。研究論文を読んで以来、ポジティブな映画を目指すことこそが重要だと考えるようになった。それこそが必要とされているものだって。その思いが大きな原動力になっていった。

女優として、抜けられない仕事もあったけれど、この映画にとことん打ち込めるよう、そのうちのいくつかをキャンセルしたくらいよ。

農業、経済、教育、政治―すべての物事はつながっている

──農業やエネルギー問題など、映画はエコロジーに関する従来的なテーマを扱う一方で、そのあとすぐ、世界規模での経済、教育、政治のお話へと、私たちを引き込んでゆきますね。

ディオン:すべての物事はつながっているんだということを示したかったんだ。それぞれの問題を切り離して取り扱うことはできない。西欧型の農業を例にとってみると、完全に化石燃料に依存していることが分かる。つまり、農業モデルを変えることはエネルギー・モデルを変えることでもあるんだ。でも、それにはとてもコストがかかる。だから、この時点で経済の分野に分け入る必要が出てくる。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

ところが不幸なことに、現在、経済は社会的格差の元凶であり、地球破壊の最大の要因となっている。それゆえ、こうした状態を民主主義的に調整し、摺り合わせてゆかないといけない。でも、民主主義が正しく機能するためには、聡明な市民がいなくてはならない。そうなると今度は、自由で整った教育システムが必要になってくる……。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

──つまりこの映画『TOMORROWパーマネントライフを探して』は、夢想家の映画であると同時にエコロジストについての映画であり、さらにはヒューマニズムについての映画でもあると?

ロラン:たんにエコロジーに関するドキュメンタリーというのじゃなくて、「未来の社会がどのようなものなのか」を見つめる映画なのよ。私たちは、いまだ誰も話し合ったこともなく、出会ったこともなく、しかも誰もが共感も共有もしたいとは思わないような時代への橋渡しなの。

映画は、共同で作業する人々や、木イチゴの樹のかたわらで議論を交わす人々、あるいは現実には存在しない21ポンドの紙幣について語る人々を一気に見せてゆく。このような先駆者たちはみな、エコロジーに共鳴し、何百万もの小さな共同体をつくり、そのなかで型どおりの運営を続けてきた。重要なのは、こうした私たちとも似た人たちを、それぞれの独自性を保ったままで束ねることだったの。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』より、イングランド南西部、デヴォン県で石油への依存と気候変動を回避するために地域通貨「トットネス・ポンド」を創設したロブ・ポプキンス ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

ディオン:僕たちは、この映画を見てくれる人たちに、この世界に生き続けること、これら新しい時代の英雄たち──億万長者でもスターでもない、でも勇気にあふれ、素晴らしく人間的な人々を見てもらうことによって、なんらかのものを感じて欲しかったんだ。

ごくふつうの人たちが造り上げた菜園から、新たなスーパー・エコロジーが開かれるんだ。ノルマンディにあるシャルルとペリーヌによる持続型農場が豊かな実りをもたらせている様子を見たら、この映画のプロデューサー同様、根っからの農家でない人ですら、野菜をつくってみようという気になることだろうね。配給会社の人たちだって同様さ。もちろん、挑戦ではあったけれどね。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』より、生化学博士・アグロエコロジーの専門家ニック・グリーン ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

ロラン:誰だってたいへんなことを率先してやりたいとは思わないでしょう。でも、きちんと向き合うほかない。そうするしか方法はないの。問題に対処するだけの力を得るためには、できるだけ取っつきやすく、しかも楽しんでできる解決法が必要だと思うわけ。だからこそ、むしろ楽しみながら問題に取り組んでいるような人たちを紹介してゆこうとしたの。

すべてを捨てる必要もなければ、人生を変える必要もなく、また農場に孤立して自給自足生活をするような必要もない。映画のなかで示した先駆者たちは皆、私たちの手の届くところにいて、私たちと同じような暮らしの中から未来を生み出しているのよ。

(オフィシャル・インタビューより)



メラニー・ロラン(Melanie Laurent)プロフィール

1983年2月21日パリ生まれ。16歳の時にジェラール・ドパルデューに見出され「Uu pont entre deux rives」に出演。2006年にフィリップ・リオレ監督『マイ・ファミリー 遠い絆』で第32回セザール賞有望若手女優賞、第12回リュミエール賞の新人女優賞を受賞した。2009年にはクエンティン・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』に出演し、ハリウッドに進出。そのほか『オーケストラ!』(2009)『人生はビギナーズ』(2010)『グランド・イリュージョン』(2013)など、1999年から2016年までの間に38作もの映画や映像作品に出演している。映画監督としては、2008年に短編「De moins en moins」(2008)を撮り、第61回カンヌ国際映画祭短編コンペティション部門出品のほか、TVシリーズ「X Femmers」の第1エピソード「A ses pieds」を監督。2011年、初の長編となる「Les adoptes」を発表する。2012年短編ドキュメンタリー「Surpeche」、2013年には長編第2作「Respire」を発表。第67回カンヌ国際映画祭批評家週間部門で上映された。

シリル・ディオン(Cyril Dion)プロフィール

1978年7月23日生まれ。ジャーナリストで活動家。1999年から2002年までの間、俳優としても活動。その後2003年から2007年まで“Hommes de parole foundation”のコーディネーターとして活躍。2003年スイスのコーで、“イスラエル・パレスチナ会合”をコーディネート。2005年、2006年ブリュッセルとセビリアで行われた“平和のためのイマームとラビ会議”のコーディネート。2007年1月から2013年8月までピエール・ラビとNGO「コリブリ」(作家ピエール・ラビが提唱した、小さなことでもいいから自分たちの力でできることをしようという運動で、環境や人を大切にする社会を目指す)を共同設立。2011年、アクト・シュド社より叢書「Domaine du Possible」を共同で立ち上げ、編集アドバイザーに。また翌年、世界を変えてゆくことを目指した雑誌「KAIZEN」を共同創刊し、2014年まで編集主幹を務める。2011年メラニー・ロラン&ZazとNGO「コリブリ」のための「The video Tous Candidats」をプロデュース。2013年コランタン・ルクールのプロデュースによるアニメーションビデオ「Revolutionnons l‘agriculture」の脚本監督を担当。




映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS
映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』
12月23日(金・祝)より渋谷シアター・イメージフォーラム
ほか全国順次公開

メラニー・ロランとシリル・ディオンは世界を駆け回り、食・エネルギー・経済・政治・教育といった各分野で新たな試みに挑んでいる人物にインタビューを行い、「経済も自然のように多様性を守るべき」「より複雑で多様な世界は力強い」というメッセージを映像化している。5つの章に分けられてはいるものの、それぞれのチャプターの関連が分かりやすく解説され、アメリカ、イングランド、ベルギー、インド、アイスランド、デンマークなどふたりが実際に現地に赴いて話を聞いた「実感」がきちんとナレーションで語られる点にも、切実で複雑な世界を取り巻く問題をどう考えていくべきか発見を得ることができるだろう。

監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン
出演:シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲールほか
原題:DEMAIN
日本語字幕:丸山垂穂
協力:ユニフランス・フィルムズ
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
宣伝協力:テレザ、ポイント・セット
フランス/2015年/シネマスコープ/120分

公式サイト

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』予告編

レビュー(0)


コメント(0)