骰子の眼

music

東京都 新宿区

2017-12-08 21:20


「アンサンブル室町in歌舞伎町!!」古楽器×現代音楽×パフォーマーによる祝祭の宴

「あなたも創造する可能性を持っていますよね」芸術監督テシュネ氏からのメッセージ
「アンサンブル室町in歌舞伎町!!」古楽器×現代音楽×パフォーマーによる祝祭の宴
アンサンブル室町の芸術監督・ローラン・テシュネ氏

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“アンサンブル室町”は、ヨーロッパと日本の《古楽器》、すなわちヨーロッパのルネサンス・バロック時代の楽器と日本の伝統楽器による、世界で初めてのアンサンブルだ。2007年にフランス人チェンバロ奏者で作曲家のローラン・テシュネ氏を代表として結成され、今年10周年を迎えた。

新宿・歌舞伎町で10周年の記念公演を開催するアンサンブル室町の芸術監督、ローラン・テシュネ氏に、webDICE編集部がインタビューを行った。 テシュネ氏は、東京藝術大学などで教鞭をとる教育者でもある。12月の公演を控え、開催場所である新宿・歌舞伎町で、10周年記念公演にかける想いやアンサンブル結成のコンセプト、そして日本の音楽教育や若手音楽家へ向けたメッセージを聞いた。

10周年を祝うためにパーティーのような公演をしたくて新宿FACEを選んだ

テシュネ氏が10周年公演のコンセプトとして考えていたのは「観客と一緒に祝うパーティー」。これまで公演を行ってきたクラシックのコンサートホールや劇場のようなフォーマルな場所ではないところでやりたいと思っていたという。特に歌舞伎町は、いつものホール等とのギャップが大きいので面白いと思ったそうだ。今回の会場となる新宿FACEは、格闘技やロックのライヴが行われることの多い会場だが、「ある種のアーティストであることは同じ」と話すテシュネ氏にとって、ジャンルのギャップは問題ではなかった。

今回の公演では、過去作品から抜粋された楽曲が演奏される。さらに、過去作の作家に新たに委嘱した新作も加えられ、「10年間をフラッシュバックするような」、まさに記念公演に相応しいプログラムが用意されている。また、「この10年間でコラボレーションしたすべてのアーティストに声をかけた」ということで、多種多様なパフォーマーの出演による豪華なステージとなることだろう。過去作品であっても、「演奏するときは常に生演奏なので、新たに演奏するという気持ちでいる」というテシュネ氏。過去に共演したアーティストと、今度はどのようなコラボレーションが展開されるのかも見どころのひとつだ。

「とにかく来てくれる方には、ワンドリンク制の公演なので飲み物を飲みながらリラックスして楽しんで欲しいし、年齢も関係なく、あらゆる層の人に来てもらいたい」と、テシュネ氏自身も歌舞伎町での公演を楽しみにしている。

結成当初から他ジャンルとのコラボレーションをイメージしていた

アンサンブル室町結成の原点は、チェンバロ奏者としてのテシュネ氏自身が、「和楽器と何度かコラボレーションしているうちに、アンサンブルをつくれないか」と考え始めたことにある。教育者でもあったテシュネ氏には、「若い世代に現代音楽をもっと盛りあげて欲しい」という強い気持ちもあり、はじめは教え子や学生を中心に結成した。

「個人的な音楽の経験を多くの人と共有する」ことを大切にしているというテシュネ氏。「日本には才能のあるアーティストがたくさんいるのに、ジャンルを超えたコラボレーションの場が少ない」と常々感じていた。演奏家と教育者というふたつの顔を持つテシュネ氏により、“ジャンルの異なるアーティストとコラボレーションする”という明確なコンセプトをもって誕生したのがアンサンブル室町だ。

“ガラパゴス化現象”。アンサンブル室町が結成された2007年頃から、ポピュラー・ミュージックのシーンにおいても、閉鎖的な日本の音楽界がそのように表現されることがあった。テシュネ氏もその指摘にゆっくりと頷いた。「だからこそ今後はポップスともコラボレーションしていければと思っている」

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『メリークリスマス エリック・サティ!』(2016) Photo: Yoshihito Yokokawa

現代音楽へのこだわりと込められた意味

“古楽器で現代音楽を演奏する”というコンセプトも結成当初からあった。 委嘱した新しい作品にこだわって演奏する理由は、“室町”という名前に込められた意味にも通じる。日本に西洋の楽器が入ってきたのは、室町時代や安土桃山時代だ。「当然ながらその時代に両方の古楽器を一緒に演奏するための曲はなく、共演するために新しい曲をつくることは必然」だった。また、日本でもヨーロッパでも古楽器の演奏家は、古典しか演奏しない状況も気になっていた。教鞭をとる立場として、「現代音楽に触れあう機会を増やして欲しい」という教育的な意味もそこには込められている。

テシュネ氏は、日本とヨーロッパの古楽器には不思議と共通点があると感じている。「例えば“笙”と“オルガン”は、宗教的な意味合いを強くもつ楽器だと思うし、共にポリフォニー(多声音楽・複数の独立した声部が協和しあって旋律が流れる複旋律音楽のこと)の楽器で音色も似ている」と。出会うはずのない人の手で作られたふたつの楽器。その見えないリンクを想像しながら演奏に耳を傾けてみるのも面白いだろう。

そして、アンサンブル室町が、文化圏の異なる楽器で演奏したり、ジャンルを超えたコラボレーションを行ったりするのには、「世界はひとつ」というメッセージも込められている。昨年は、アンサンブル室町のメンバーがベルギーで演奏する機会もあったそうだ。 「ヨーロッパでは和楽器に興味を持つ人が増えている。交流の場が増えることで、お互いの楽器に興味をもって学びあう機会も増えているという印象を受けている。演奏を通じて世界的な視点を持ったり、知らないことに興味を持ったりする。そのきっかけを生みだす」こともテシュネ氏の願いのひとつだ。

コラボレーションの演出は「あたかも即興に見えること」

パフォーマーとの共演も多いアンサンブル室町。多忙なアーティストとのコラボレーションはどのように演出されるのか。目指しているのは、「あたかも即興に見えること」。しかし、「そのためにはかなりの事前準備が必要になる。新作については、楽譜が完成した時点で作曲家に音源を作ってもらい、パフォーマーに送ってイマジネーションを膨らませてもらっている。ただし、実際にパフォーマーが音を聴けるのは、どうしても公演直前のリハーサルとなる。その時に初めてアンサンブルの演奏を聴き、コンピューターで作られた音源とは全く違うことにパフォーマーが驚くことも多い」。そこからは現場で話しあいながら細かい演出を創りあげていく。その過程ではテシュネ氏にも驚きや発見があり、これも「良いサプライズばかり」と楽しんでいるようだ。

毎年、異なるテーマに挑戦しているため、出演者の人選は公演ごとに設定するテーマに合わせて行われる。「例えば、『源氏物語』(2012)を公演するには、能が必須だったし、昨年の『メリークリスマス エリック・サティ!』(2016)ではジャグリングを入れた」。テーマによってコラボレーションするアーティストも変わるわけだが、テシュネ氏は質問に答えながら「当然だろう」という表情をしてみせた。

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「エドガーヴァレーズと室伏鴻に捧ぐ墓」(2015)Photo: Yoshihito Yokokawa

日本の若手音楽家へ託す今後の想い

今回の公演は、これまでの10周年を祝うパーティーであると同時に、芸術監督として「未来を祝う」意味合いも込められている。「10年で終わりではなく、これからも長く続けたいし、もっと色々なジャンルとのコラボレーションもしていきたい。来年の構想としては、浄瑠璃とのコラボレーションなども考えている。今後は海外の演劇などとも広い分野でコラボレーションしていきたい」と意欲は膨らむばかりだ。

「日本では音楽とダンスの教育は接点がなく、学校もまったく別のものになっている。本来は繋がりがあるはずなのに、音楽教育の現場にも課題は多い」とテシュネ氏は指摘する。 「ダンスを織り交ぜるのは、ダンスはお金のかからない最も身近な楽器だと思うから。観客もそれぞれ身体を持っている。ダンサーとのコラボレーションは、『あなた自身も創造する可能性を持っていますよね』というメッセージなんだ」

インタビューを終えようとしたとき、テシュネ氏から若いアーティストへのメッセージを改めて伝えられた。

「今は錯綜した時代だけれど、だからこそ日本の才能あふれるアーティストには、人間的な意味で社会をリードする、良い方向に引っ張っていくような存在になって欲しい。その想いを何よりも強く持っている」

2017.11.29. @新宿歌舞伎町 (通訳:高城テシュネみお、インタビュー:駒井憲嗣 構成:中川郷子)




公演情報

「アンサンブル室町 in 歌舞伎町!! -祝10周年-」

https://www.ensemblemuromachi.or.jp/2017

日時:2017年12月22日(金)18:30開場 19:00開演

チケット:全席自由(ワンドリンク込み)
一般前売 5,000円 一般当日 5,500円
学生前売 3,000円 学生当日 3,500円

会場:新宿FACE http://shinjuku-face.com/

東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F [地図を表示]
TEL : 03-3200-1300

照明:有限会社ハロ

映像:三上直子(Dual_N)

舞台監督:浜田和孝

制作:PolyArts

協力:東京コンサーツ/eimatsumoto Co.Ltd.

お問い合わせ・チケット電話予約

●東京コンサーツ http://www.tokyo-concerts.co.jp/

Tel: 03-3200-9755/Fax: 03-3200-9882(月ー金 10:00-18:00)

※東京コンサーツの HP で予約して、セブンイレブンで受け取れます。

●カンフェティ http://www.tokyo-concerts.co.jp/

Tel: 0120-240-540 (月ー金 10:00-18:00)

●アンサンブル室町事務局 office@ensemblemuromachi.or.jp

キーワード:

アンサンブル室町


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