骰子の眼

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2019-06-20 17:40


STUDIO4℃が描く生と死の境界、映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』

アニメ『海獣の子供』と違うアプローチで同じことを語っている―山岡監督×田中プロデューサー
STUDIO4℃が描く生と死の境界、映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』山岡信貴監督(撮影:廣川 慶明)

アニメーション制作会社STUDIO4℃初となるドキュメント・オデッセイ『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』がアップリンク渋谷、吉祥寺ほかにて公開中。7本のビデオテープを残して謎の失踪を遂げた男の足取りを追う物語と、現実の科学者や専門家のインタビューが交差する構成となっており、五十嵐大介原作のアニメーション映画『海獣の子供』で天才海洋学者アングラードの声優を担当した森崎ウィンが男を演じている。『海獣の子供』と併せて観ることで、より深く楽しむことができる作品となっている。

公開初日となる6月15日の初回上映後にトークイベントが開催され、山岡信貴監督と田中栄子プロデューサーが登壇した。webDICEでは、アップリンク吉祥寺で行われた舞台挨拶を掲載する。


最初、断ろうと思っていた

田中栄子プロデューサー(以下、田中):アニメーション『海獣の子供』の公開が決まると同時に、アニメーションでは描けない原作のもつ世界観も別のかたちで表現したい、と思っていたんです。そんな時に山岡さんが現れて、お願いしたら引き受けてもらえた。

山岡信貴監督(以下、山岡):最初、わりと真剣に断ろうと思っていたんです(笑)。依頼を受けたのは年末(2018年12月)ですよね。僕、五十嵐大介先生の漫画が好きなので全部読んでいたんですけど、アニメにするのは全然知らなくて。別件で田中さんのところに行ったら、アニメにしていると。なんと無謀なことをと思ったんですけど。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』山岡信貴監督と田中栄子プロデューサー(撮影:廣川 慶明)

田中:2013年6月7日、アニメ映画公開日となったちょうど6年前の同じ日に、実は原作権を小学館にお伺いに行きました。そのあと、監督やスタッフをキャスティングしていく中で、映画として2時間にまとめるのはすごくむずかしいと。
渡辺監督は、漫画の中では傍観者である少女琉花(ルカ)のひと夏の成長という形で、目線を琉花にして描くことによって、ひとつの作品としてまとめられるんじゃないかと。渡辺歩監督は、『ドラえもん』とかで登場人物を非常に豊かな表現で描いてきた方なので、漫画では描かれていない部分を描きなおしてもいいですか、ということをまず五十嵐先生にうかがって。そしたら五十嵐先生から「映画は監督のものなので自由に作ってください」と。
それから実際に作り続けていく中で、漫画の中では「神話譚」といわれている不思議な証言というのがたくさん散りばめられていますよね。それを「あれ?なんか書き忘れているな」と。もしかしたら、この作品ってそっちが一番描きたかったものかもしれない。自分たちの見えるもの、感じるもの以外のもの。私たち自身が地球だ、みたいな。そういうことが少女琉花自身の成長を中心にしてしまうと描けなくなってしまうんじゃないか。という気持ちがふつふつと湧いていて、ついに『縄文にハマる人々』を作られた山岡さんと出会えた。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』より、五十嵐大介(漫画家) 2019©Beyond C.

山岡:ドキュメンタリーっぽいものを撮るときには、わりと降りかかった事故のように撮らざるを得ない、という状況になって撮ることが多くて。今回もそうなんですけど。

田中:『縄文にハマる人々』でも、いろいろと調べていくと「“人間”はどこから来たんだ」ということにたどり着いた。

山岡:結局、そこに行き着くんですよね。縄文人と話もできないので、縄文土器や土偶とかから、みんないろんなことを類推するんですけど。結局、縄文人にとって生きるってどういうことだったんだろう、みたいな根本的なところがわからない。もっと言うと、いのちとか生命とかっていうことを、今、僕が田中さんと話していたら一応通じますけど、縄文人とは世界観自体が違ったら、もうその時点でわかりあえない。ものの考え方、今では1足す1は2と、共通してみんな思っちゃうんですけど、それすら、もしかしたら違うかもしれない。そんな人たちのことをわかろうとするには、やっぱり根幹の生命の問題であるとか、世界がどう見えていたかっていうところを抜きにしては語れないんですよね。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.

田中:そういうふうに山岡さんがおっしゃったので、これは作らなくちゃねって(笑)。
原作の持っている神秘さっていうものをしっかりと捉えている監督だから、そういうものをきちんと表現していただけるんじゃないかしら、と。

山岡:それを聞いたのが年末じゃないですか。最初『海獣の子供』は9月公開だとなぜか思っていたんですよ。9月ならギリギリ間に合うかなって。そもそも生命についてのドキュメンタリーなんて、NHKさんが、多くのスタッフとともに3年がかりで「いのちってこうです」みたいなレベルのことじゃないですか。なので、これは9月なんて無理と思って、お断りしようとも思った。
でも、生命を相手に3年あったところで、結局わかんないものはやっぱりわかんない。この映画に出演されている先生方も、生命ってなんですかってことは極論わからないんですよ。それはそうなんだけれども、なんとかそれを全人格、人生をかけて、わからないことは承知の上で、言葉にしようということをずっとされてきた人たちを集めると、それぞれは別々のことを言っていたとしても、いっぱい点を打っていくとなんとなく形になるじゃないですか。そんな感じでいろんな証言を集めると、輪郭だけは見えてくるかもしれない。いろんな意見が集まると、あの先生はこう言ってるけど、僕の考えは違うな、とか思うようにもなる。そこでその人だけの新しい生命観が生まれる。それは、先生方が言っているようなこととは全然違うんだけど、100年後には、実はそっちの方が真相だったねってことになるかもしれない。だから、いろんな証言を集められれば、勝算はあるかなと思ったので、9月なら何とかなると思って「田中さん、やります」って言ったら、6月だよってあとで知ってわりと慌ててたんですけど(笑)。

田中:山岡監督は「知りたい」っていう欲求がこんなに強いわけですよ。誰もがこの映画の通り「わからない」って言っているのに、それでも「わかりたい」っていう探究心が強い。監督の熱意がなかったら、この作品できなかったですね。1週間前に試写(といってもデスクトップ上映ですけれども)をして、日本全国14館公開する劇場まで決めて。

山岡:できていない映画の上映を決めるって、普通やらないですよね(笑)僕、今は絶対死ねないなって思ってやってました(笑)。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.

言葉にすることは、諦めたくない

田中:基本的に山岡監督が全部ひとりで作られました。本当に素晴らしい。正直この映画ずっと見ていて、頭痛くなりますよね(笑)。このわからなさって。

山岡:アニメ『海獣の子供』と逆のことをしているんですよね。

田中:そうなんです。ただ、アニメ『海獣の子供』も実は、わかんないっていうことに触れて、いのちっていうものは再生を続け、時間の長さを超えて、生命そのものの記憶と一緒に、自分たちは今、ここに存在しているんだ、ということをしっかりと唱っている。
でも、やっぱりアプローチを変えても、同じことを語っているんだな、と。

山岡:アニメ『海獣の子供』はビジュアルで、その多くは語られない。 こっちはもう、語れるだけ語って、もうこれ以上語れませんよっていうくらいに、ぎゅーって言葉を尽くしても、それでもやっぱり最後は言葉にならない何か、っていうものがあって。でも、その言葉にならないことを、だからといって、言葉にすることを諦めるのは、僕はちょっと違うかな、と思っていて。
言葉にする悪い面としては、全部を言葉にできないので、どうしても零れ落ちることがある。逆に、言葉にすることでのいい面は、共有できる。田中さんと僕はいのちに対して違う考えかもしれないけれども、対話を通じて、全然違う第三の考え方が出てくるかもしれない。考えを共有できることっていうのは言葉の強みだし、人間はそうやって文明を築いてきたのだから、言葉にすることは、諦めたくない。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』長沼毅(生物学者) 2019©Beyond C.

田中:映画の中で先生が、頭でっかちのタコや火星人みたいな姿になっても、人間は考えることが、進化と逸脱の過程のひとつとして、次の再生への道なのかもしれないとおっしゃっていましたけれども、出演者の先生方、山岡さんも含めてなんですけど、ちょっとおかしいのかなっていう(笑)。ちょっと普通じゃない人たちが、こんなにいっぱいいて、こんなに普通じゃないことに夢中になって、面白がっているっていう。おもしろい映画だなと思います。

山岡:普通じゃないというのは、めちゃくちゃ大事で、この映画の中での海洋学者は海に入るっていう選択をするわけですよね。海に入って生きられるわけないじゃんって思うわけじゃないですか。いまのぼくらは。

田中:だから主人公の森崎ウィンくんには早めに帰ってきてほしいなと思って(笑)。

山岡:キリンの首が伸びた話って、「あそこの上の方にある草、誰も取ってないから私食べたい」って思って、それで首伸びたっていう話になっているんですけど、でもそれはやっぱり遺伝子がそういうふうにスイッチしないかぎり、思ってるだけでは伸びない。逆に、スイッチしてても、あの草を食べたいって思わないかぎり、無駄な能力になってしまって、それも先には続かないんですね。

田中:クジラがちょっと足欲しいかなって思ったら、あのクジラから足出てくるかもしれないっていう話ですよね。

山岡:だから、僕らも海に入ったら溺れ死ぬよねって話になっちゃうんですけど、それでも入りたいなって思った人が、その人がスイッチが入る人だったら、それで実現できるかもしれないっていう。映画に出てくる人たちが、田中さんは変なひとたちって思ったと。僕はそうは思わないですけれども、変な人だとすると、変なことをする人からしか、僕は未来って生まれないのかなって思う。

田中:魚人じゃないけど、水から酸素をとって、新しい生命体として、主人公の彼が今も生きている、と思いたいわ。

山岡:そうですよ。思ってください。じゃないと、単なる自殺願望の人になっちゃう(笑)。

田中:それだけはやめてほしいってことですね。新しい命、進化の可能性を示したいもの。

山岡:で、その進化の可能性は、僕らがこうしたほうがいいよねって思うような、誰もが思うような延長線上には、未来はないんですよ。

田中:ラクにしていると、クラゲになっちゃうよって言われましたからね。

山岡:クラゲがラクなひともいるかもしれないけれども、誰も賭けていないバカげたところに賭けたら、それがもしかしたら、100万年後にそのバカな賭けをしたところにしか、生き延びる道がないかもしれない。そこに、誰かひとりでも賭けていたら、そこで生き延びる道が出来上がるわけじゃないですか。

田中:アニメ『海獣の子供』を90歳の父親が公開初日に鑑賞したんですけれど「すべてのものには、寿命があるんだっていうことを、映画を見てすごく納得した。それが、いのちの循環である、ということを見せてもらって、いい作品をつくってくれてありがとう」って。
わたしも「あ~そういうことか」って、父親に教えてもらっちゃいましたけどね。

山岡:作った甲斐ありましたね。

田中:『トゥレップ』は逆に言葉でそれを伝えて、素晴らしい作品を作ってくださって本当にありがとうございます。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.

アングラード役・森崎ウィンを主演に迎えて

山岡:アングラード役に、森崎ウィンさんをキャスティングしたのはなぜ?

田中:映画『レディー・ブレイヤー1』を見て、彼の天真爛漫な少年っぽさが、すごくいいなと思って。社会や文明に囚われていないというか。生活疲れしていない、開放されている感じにすごく魅力を感じて。
だから実は最初、海(うみ)候補だったんです。
海(うみ)も天真爛漫に、裸で生きるという感じ。でも、海くんたちの声優は実際に14歳前後の人で、という方針があった。
そこで思いついたのは、アングラードも、彼ら同じように「自分」の生き方をしている。それで、アングラードに。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』森崎ウィン 2019©Beyond C.

山岡:最初すごく意外で、「『俺はガンダムで行く!』のウィンくんがアングラード?!」みたいな。でも、収録中の映像を見せてもらったら「あ、バッチリじゃん」って。

田中:森崎さんはミャンマー人なんですよね。声優は初めてで最初は口パク(アニメの作画の口の動き)がなかなか合わない。田中泯さんと一緒に録ったんですけど、苦労して、練習を重ねて、コツを掴んでピタっと合う瞬間があると、ブースに向かって「イエーイ!」って。彼の自由さはアングラードと共通している。

山岡:ラジオのチューニングをあわせるように、細かく探りながら、パチっと合うまで、自分で探求していく。器用な人は、そういうのをさらっとできたりするんでしょうけど、森崎さんは諦めずにやれるから、ただ単に器用な人がやったのとは違ういい雰囲気が出る。
ましてや『トゥレップ』では、双子の兄役だけでなく、妹役もやってくれた(笑)。最初、そんな滅茶苦茶なこと、断られるかな?って思ったんですけど。前向きにきっちりイメージを掴んでやってくれる。なおかつセンスがいい。

田中:ありがとうございます。キャスティング、私です(笑)。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.

18時間のリテイクマラソン

山岡:『海獣の子供』の制作に6年かけられた田中さんの原動力は?難事業でしたよね。

田中:本当に大変でした。小西賢一というすごい才能を持っているアニメーターがいまして、最初、彼に監督をやってもらおうと思ったんです。でも、渡辺監督のために小西さんが「俺の力をすべて出す」と。しかも「漫画と同じようにボールペンで書く」と。「消しゴムで消せないから、ダメ」と言ったんですけど(笑)。
小西さんが五十嵐先生のものすごい画力に魅せられていたんです。表情ひとつに、繊細な少女の気持ちみたいなものが入っている。下手なことしたら、五十嵐先生のファンからブーイングされちゃうし。これをしっかりと形にするんだ、ということと、若いスタッフにしっかりと自分の技術を伝えたいという思い。それを丁寧にやらせてくれるならやる、ということを最初に話しました。

最初の1カット目があがってきたときに、琉花(ルカ)が眩しそうに手をかざすシーンだったんですが、「これやったらお金と時間もかかる。どうしよう」と思ったんですけど、覚悟を決めて、とことんやらせてみたら、あと30年くらい続けてしまいそうだったので、慌てて公開日を決めて(笑)。
小西さんと18時間リテイクマラソンもやりました。トイレと軽食以外は、ずーっと。そんなことしていたら、ほとんどのカットがリテイクみたいな(笑)。

最後の最後、DCPを焼くその日にも、小西さん一枚書き直しましたからね(笑)スタッフは小西さんからリテイクを出され続けて。小西さんならシュッシュっと描けてしまうから、みんな悔しくて。よく、誰も会社の壁にガーンてパンチして穴を開けなかったな、と思うくらい大変な状況の中で、それでもいい映像ができるとみんなで感動して。「こんなすばらしい宝物に出会えて、ありがとう」って。小西さんが求めたものに対して、みんな食らいついた。誰も諦めなかった。だから、途中で私が諦めるわけにはいかなくなっちゃったわけ。

ドキュメント・オデッセイ『トゥレップ』の作り方

山岡:事前に構想を固めすぎると、逆に4、5ヶ月で形にはできないかなと。マーシャルに行ってどんな話が出てくるかもわからないので、目の前に来たものを、よりよく料理するにはどうしたらいいのか、という方針で作りました。判断に迷ったら、漫画はこうだったなって多少は参照することはあったけれども、あんまり自分がこうしたいというものは出さずに。そういうのが出ちゃうと、間に合わなくなるかな、というのを感じた。出演者の二木あいさんが、「海の中で脳を使うと、いろんなことに対応できない部分がある」とおっしゃっていて『トゥレップ』もそんな感じで作っていました。

田中:最後の撮影はいつでしたか?

山岡:田島木綿子先生のインタビューで5月23日。無茶苦茶ですよね(笑)。

田中:森崎ウィンさんの撮影は?

山岡:その前日の22日ですね。

田中:森崎ウィンさんのセリフは、山岡監督のメッセージですよね。ちゃんと監督として独自の見解を伝えきるところにも才能を感じます。

山岡:今回は、目の前のことにちゃんと向き合っていると、自然とつながってくるんだ、おもしろいなと感じることが多かったです。中沢新一先生がシンデレラの話を少ししますが、そのシーンでは具体例までは出てこないですよね?実は、マーシャルのシーンでシンデレラ系の話が入っているんです。

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』 2019©Beyond C.
映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』中沢新一(人類学者) 2019©Beyond C.

田中:そうでしたか。ぜひ詳しく教えてください。

山岡:それも狙ったわけではなく。中沢先生の撮影は、マーシャルから帰国後だったし、マーシャルにいるときも聞けるだけの話を聞こうというスタンスで撮影をしていたので。
汚い格好をした女の子が、海に入って綺麗になった。その姿を見た男の子が、あまりの美しさに心を奪われて、即死した、という話。
『海獣の子供』でも言及されている浜辺は、生と死の境界。シンデレラは灰かぶりという意味で、竃の番をして灰まみれになるからついた名前。竃で火を使って命を持っていた食べ物が変化して、僕たちの体に取り入れるわけだから料理は生と死を転換する儀式とも言える。そんな生と死の端境を竃が象徴している。
浜辺もそう。汚い格好をした少女が海に入ることは、今生きている世界と違う世界を行き来することを意味している。シンデレラは、いわばシャーマンみたいな感じ。あの世とこの世をつなぐ女の子に感応しあえる男の子は、女の子を見て即死したのち、浜辺の砂になる。生と死の端境そのものの存在になって、それが今もその土地で生きている人に影響を与え続けている。
マーシャルでは夢中で撮影するだけだったけれども、後々考えると、見事にいろんなものがリンクしていいく。という体験があって、すっごく面白かった。漫画「海獣の子供」で描かれている世界観とシンデレラの話も、ぐるっと回って対応している。
僕たちが神話的なものの見方を忘れちゃっているから、話を聞いてもすぐにはピンとこないけど、世界の見方が変わってくると、もしかしたら?って気づくことが増えるんじゃないかと思います。

田中:自然とともに生きているマーシャルの人たちは、そういう話を普通に信じているわけですよね。田島先生が語るごんぎつねの話や、動物とともに暮らしてきた話でも、私たち人間が特別なんじゃない。そういうことが神話の中で語られている。それがシンデレラとつながるとは思わなかった。

そして、私たちは、すべての命の「死」を食べているんですね。焼いたり、煮たり、形を変えて。食べることによって、また命に変えて。

山岡:「死」を「生」に変換して生きている。魔術的な行為を、日々している。レストランのコックさんは、みんな魔術師。

田中:そう考えて見ると、さらにすごい映画だったんですね(笑)。




山岡信貴(やまおかのぶたか)

1993年に初長編映画「PICKLED PUNK」を監督。ベルリン映画祭ほか多数の映画祭に招待上映される。以後も実験的なスタイルを貫きながら定期的に作品を発表し続けつつ、携帯電話キャリアと共に視覚の心理状態への影響の研究やデバイス開発等、サイエンスの分野にも積極的に取り組んでいる。

田中栄子(たなかえいこ)

STUDIO4℃代表取締役社長。スタジオジブリで『となりのトトロ』『魔女の宅急便』のラインプロデューサーを務めた後、森本晃司・佐藤好春と共に「STUDIO4℃」を設立。1995年公開の『MEMORIES』に始まる劇場作品の他、短編やミュージッククリップ、CMやゲーム用映像など、多彩な映像作品を精力的にプロデュース。




映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』

映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』
アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて公開中

出演:森崎ウィン、五十嵐大介、中沢新一、長沼毅、佐治晴夫、名越康文
構成・監督:山岡信貴(『縄文にハマる人々』)
マーシャルパート・ラインプロデューサー:大川史織(『タリナイ』)
プロデューサー:田中栄子
制作:STUDIO4℃
配給:Beyond C.
2019年/81分

公式サイト


▼映画『トゥレップ~「海獣の子供」を探して~』予告編

キーワード:

森崎ウィン / 山岡信貴 / 田中栄子


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