骰子の眼

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東京都 渋谷区

2008-07-27 12:18


「LSD」の生みの親、アルバート・ホフマン博士が死の2年前に残したメッセージとは

『L.S.D. プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ』を監督した映像作家、マイケル・マカティア氏に作品の内容について話を訊いた。
「LSD」の生みの親、アルバート・ホフマン博士が死の2年前に残したメッセージとは
  • アルバート・ホフマン博士

  • ゴア・ギル(サドゥー兼サイケデリックDJ)

  • アンドリュー・スーウェル博士(ハーバード医科大学院研究者)

「LSD」という言葉だけを聞くと、違法ドラッグ=悪という様に解釈されてしまいがちだが、「LSD」にはそんな言葉では収まりきれない程の歴史と文化が存在する。 アート、ミュージック、スピリチュアリティー、ピース…60年代に世界を揺るがせた社会変動の原動力を三文字に縮小するなら、それは間違いなく「LSD」だ。

その服用後の効果から社会的タブーとされている「LSD」を学術的に説くシンポジウムが2006年にスイスで開催された。LSDの発見者として世界的に名高いアルバート・ホフマン博士が最後に語ったものである。
LSD発見の歴史、その直後の様々な研究成果、古代から儀式などに用いられてきたドラッグと LSDの関連性などを語った上で、快楽的な使用からなる深刻な問題のジレンマを100歳とは思えない話術で語った。
『L.S.D. プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ』にはその貴重なシンポジウムが収録されている。

本作品監督のマイケル・マカティア氏になぜ「LSD」という社会的に目を伏せてしまいがちなテーマをあえて取り上げたのかお話を伺った。


── なぜ、「国際LSDシンポジウム」を映像として残そうと思ったのでしょうか?

LSDは違法で使い方によっては非常に危険なドラッグです。それでも、世界中で文化や科学や多くの人の考え方に深い影響を与えたことは否定できませ ん。昔から儀式等に用いられ、人類に計り知れない影響を与えたと思われる幻覚性植物と化学的に似ていることからも、「サイケデリック」として永遠に関心を 集め続ける物質だとも思います。そのLSDを生んだ親、化学者のアルバート・ホフマン博士が100歳で自分の「問題児」を語る内容は歴史的にも哲学的にも 社会学的にも非常に価値のあるものです。博士のメッセージには多くの日本人も深い関心を持つと思います。こんな場が設けられた以上、記録するしかないと思って映像を捉えました

── 具体的に「国際LSDシンポジウム」の内容を教えてください。

80人の講演者と2000人の参加者が37カ国から集まった壮大な学会でした。三日間を通して朝8時から夜8時まで常に三つのステージで研 究発表や歴史対談、コンサートやLSDペーパーの展示などが行われました。ですが、100歳になったアルバート・ホフマン博士の話を聞くと共に、彼の人生 と業績と歴史的インパクトを祝う事が隠れたメインテーマだと感じました。多くの参加者はLSD体験に深い恩を感じていたので、博士に感謝をこめてハッピー バースデーを送りたかったのだと思います。

── それだけ人々の高い関心を引くLSDの魅力とはなんでしょうか。

LSDは危険性を持っていると共に、とにかく違法です。違法な行為を促す事はしたくないですし、視聴者にLSDを魅力的なものに感じさせる ことがこの映画をリリースする上で私が最も懸念している点です。しかし、LSD体験に感動した人が多くいる事は西欧では良く知られています。日本社会もこの現実と向き合えないことは無いはずです。
場合にもよりますが、LSDがもたらす感動とは普段認識しない「意識の深さ」を実感させる事や、神秘的な体験を促すことからなると思います。人生観や宇宙観を深くインパクトする可能性を持った薬品です。
LSDのジレンマは、多くの使用者にこのような深い問題と直面する準備ができていないということです。準備が出来ていない人が、間違った環境と意思の元で 体験するLSDは危険ですが、だからといってサイケデリック体験に価値がない訳でもないのです。これは非常に難しい問題です。

── マイケルさんが実際にシンポジウムに参加されてどうでしたか?

非常に格の高いイベントだった事にびっくりしました。「ジャンキー」的なイメージは全くなく、欧米の名門校を代表する大学教授や研究者、化学者や心理学者が集まっていました。スイスの大統領からも博士へお祝いのメッセージが送られましたし、博士自身もノーベル賞委員会員や世界科学アカデミー のメンバーとして、ずば抜けた品格を持っています。こういった方々がLSDの可能性や正しい使用法などを前向きに語る姿がとても興味深かったです。

── アルバート・ホフマン博士とはどのような方なのでしょうか?

まず、100歳でこれだけ切れる人はいないです。でも、それは第一印象にすぎず、本当に特別な方だということが映画を見ても伺えます。ギリシャ時代から長い道のりを歩んだ西欧文化とその科学的知識の長老的な雰囲気の持ち主です。ですが、ギリシャでもサイケデリック体験を含んだ神秘的儀式が文 化の根源に大きく影響した事が判明しています。博士は科学というものがより広い神秘的ミステリーを背景に成り立っている事を実感しており、その現状を伝える能力を持っているのです...しかも100歳で。西欧科学の種だったかもしれないサイケデリック体験を科学的に再発見した博士は、現代文化の知識と原始から受け継がれる知恵の両方を持つ運命的歴史人物でした。本当に凄い人だと思いました。

── 作品の見どころを教えてください。

色々な見方が出来る映画だと思います。LSD体験をしたことの無い人にとっても、新鮮で刺激的な内容が多いです。LSDが65年間で社会に もたらした影響や研究成果を聞くだけでも驚くと思います。体験者にとっては、博士の初体験や神秘哲学を直接伺えることが最大の興味を沸かせることでしょ う。又、博士のLSDに対する姿勢は、エンタテーンメントや乱用をイメージした「ドラッグ」の概念から、神秘や意識の研究を目的とした「道具」として、LSDを広く考え直すきっかけになるとも思います。

── 最後に、8月3日(日)にアップリンクでおこなわれるイベントについてお聞かせください。

「これは重要な映画だ」とホフマン博士自身に指摘していただいた作品のワールド・プレミア試写会となるイベントです。また、ロバート・ハリスさんとモーリー・ロバートソンさんという、国際的日本を代表する知的文化人をお招きし、「アシッド・トーク」と題してLSDを様々な角度から語り合いたいと思います。参加者からの質問にも答えられたらと思っています。楽しく、興味深い一晩になることを期待しています。

(インタビュー・文:前田真希)


『L.S.D. プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ』完成記念上映会

2008年8月3日(日)
時間:18:30開場/19:00開演
会場:アップリンク・ファクトリー (東京都渋谷区宇田川町37-18トツネビル1F)
トーク:マイケル・マカティア(『L.S.D.』監督)
ロバート・ハリス(DJ、作家)
モーリー・ロバートソン(ジャーナリスト、DJ、音楽家)

詳細はこちらより
http://www.uplink.co.jp/factory/log/002702.php


DVD『L.S.D. プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ』9月5日発売!

LSDの発見者として世界的に名高いアルバート・ホフマン博士が最後に語ったシンポジウムをドキュメント!

監督:マイケル・マカティア
出演:アルバート・ホフマン、アレックス・グレイ、 ゴア・ギル、 ラルフ・メツナー、他
2008年/60分
税込価格:2,940円
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