骰子の眼

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東京都 渋谷区

2008-08-22 17:10


「最近は多くの時間を補聴器の改善に費やしているよ」 93歳現役ギタリスト“レス・ポール”オフィシャル・インタビュー

いよいよ明日23日(土)より公開される『レス・ポールの伝説』。世界中のミュージシャンからリスペクトされるレス・ポールの“今”を知るべく、貴重なインタビューを掲載。
「最近は多くの時間を補聴器の改善に費やしているよ」  93歳現役ギタリスト“レス・ポール”オフィシャル・インタビュー

今年8月、現在ニューヨークに住んでいるレス・ポールに電話インタビューをおこなった。

Les Paul tongue

── 毎週出演されているコンサートは、どれぐらい続けられていますか?

「26年間だよ」

── 凄いですね。何が続けるエネルギーの源になっているのですか?

「毎週のコンサートは自分にとって体と心のセラピーになっていて、毎朝起きて出かける理由になっている。音楽が心と体を癒してくれるんだ。人々の喜びのために演奏をすることはとても大切なことだよ。新たな友達を作ったり、古い友達と過ごしたりしているよ。もし、それと全く逆のことをして引退しまったらカラカラに乾いて飛んでいってしまうよ(笑)」


── 引退を考えたことはありますか?

「考えたことはあるよ。時には気持ちが落ち込むこともある。"何故"という気持ちが出てくる時がある、何故これをやっているのか、やらなくてもいいのに、と。たった1度だけ、ステージを立ち去ってこれが最後の演奏だと言いそうになったことがあった。でも、引退しなかったんだ。観客の喝采や人々のやさしさにとっても元気付けられて、引退に"NO!"と言ったんだ」

── 今、一番興味を持っていることは何ですか?

「現在、多くのプロジェクトを進めている。どれも音楽のためだけのものではないよ。作曲もするし、アレンジもするし、バンドでリハーサルして演奏もする。それと共に、楽器のデザインもする。新しい音、新しい形、新しいフィーリングを作り出すんだ。世の中が変わっていくから、自分もそれに合わせて変わっていかなきゃね。技術の進歩についていかなければならない。
今、自分にとっては補聴器がとっても大きな問題なんだ。ストラディバリウスを演奏していたとしても補聴器を通すと缶詰を開けているような音に聞こえるんだよ。最悪の音だ。でも、補聴器なしでは聴くことはできないから補聴器は必要になる。そういった補聴器を使っている人に演奏を綺麗な音で届けるために、最近は多くの時間を補聴器の改善に費やしているよ。今までそれがされていなかったからね」

── 現在たくさんのアーティストがレス・ポールさんの発明された多重録音やエレキギターを使っていますね。

「とても感謝していて、驚いています。夢がかなった。言いようがありません。夢の中でしかこんな事は起こりえないと思います。このクラブ(イリジウム)で演奏しているのはお金のためではなくセラピーのためで、もしお金を儲けようと思ったらもっとメディアに出て大規模な事をやっているよ。でも、そうするとそれに自分の人生を費やさなくてはならなくなる。私の歳になると、ちょっと落ち着く人が多いけど自分は結構忙しいよ」

── 日本でも『レス・ポールの伝説』がいよいよ公開されます。

「とっても嬉しいよ! 日本の方は礼儀正しく、良い音楽に対して感謝の心を持っていて、エンターティンするにはすばらしい人達で、ユーモアのセンスも最高だよ。全てがすばらしい!」

── 前回、日本に来られたのはいつか覚えていますか?

「30年前だね。日本はとっても変わったんでしょうね」

── 今後、日本に行く可能性はありますか?

「うーん…行けないと思う。(日本以外にも)全ての国から来いと言われてしまってしまうからね」

── 日本ではリタイアした人がバンドを組むという現象がよくあります。

「本当?(笑)」

Les Paul

── 何かアドバイスはありますか?

「楽しむということ。まずは自分を幸せにすることだね。もし、あなたが重役だった人だとする。自分だったら自分の古い服を着て自分の友人=ギターを取り出し友人と楽しむと思う。その他にも友人を招待してね。自分の精神科医、愛人、バーテンダー(笑)、誰でも良いと思うよ。どれくらい上手くなれるかは、どれぐらい耳が良いかと、リズムが良いかによると思うよ。その2つが無ければ、趣味にとどめておいた方がいいね(笑)」

── 日本のアーティストはご存知ですか?

「クラブ(イリジウム)に来たときに、その事を聞いてDr.K(徳武弘文)をステージに上げて一緒に演奏したことがあるよ。彼はフィーリングで演奏するギタリストだった。彼からも学んだよ」


── 今の人生の目標はなんですか?

「明日を見ることができれば良いと思っているよ。それだけだよ、続ける事だね。時間は止まらないし、若返らないしね。できる限り自分のやっていることを続ける事だね」

── 今の若いアーティストはレスポールのギターの名前は知っていても、レス・ポールさんのことを知らない人がいます。そういった人たちに何か言いたいことはありますか?

「何の問題もないと思うよ。レス・ポールという人の存在を知っているか知らないかでどういった違いが出るかは分からない。そんなに考えたことは無いよ。もし全てのひとが自分のことを知っていたら嬉しいかも(笑)。今まで考えたこと無かったらちょっと分からないね」

── 日本のファンへメッセージをお願いします。

「やりたいことで成功するには、あきらめてしまわないように目標をあまり高くしない事が大切だと思います。ゴールへの努力を続けられるように、もう少しで届きそうな所に目標をおくといいと思うよ。もうひとつは、絶対あきらめない事です。出来る!必ず出来る!努力して、努力して、努力する!と決心をすることだよ。それが全ての事に通じる鍵だよ」

(2008年8月4日NYにて)

■レス・ポールPROFILE

1915年アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。1930年代よりミュージシャンとして活動をスタート。1940年代に世界で初めてソリッド・ボディのギターを発明し、その後、レコードのカッティングマシーンを自作。多重録音を可能にしたり、アナログディレイマシンの原型を発明。1951年には妻のメリー・フォードとのデュオ、『ハウ・ハイ・ザ・ムーン』が全米一位を獲得。その翌年、ギブソン社初のソリッドギター“レスポール”が発売される。今までに5 度グラミー賞を受賞しているほか、1988年には、後世のロック・アーティストに影響を与えた人物に贈られる、ロックの殿堂のアーリー・インフルエンス部門に殿堂入り。その後も精力的にライブを重ね、93才になった現在でも、ニューヨークのイリジウム・ジャス・クラブで毎週月曜日ライブを行っている。


『レス・ポールの伝説』2008年8月23日(土)よりアップリンクXにてロードショー

監督・撮影・編集:ジョン・ポールソン
出演:レス・ポール、キース・リチャーズ、ジェフ・ベック、ポール・マッカートニー、エディ・ヴァン・ヘイレン、B.B.キング、トニー・ベネット、スティーブ・ミラー、ボニー・レイット、マール・ハガード、他
2007年/アメリカ/90分

『レス・ポールの伝説』公開記念イベント
萩原健太×徳武弘文 ~レス・ポールに会った男たち~

2008年8月23日(土) 19:05の回、上映終了後
会場:アップリンクX(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル2F)[地図を表示]


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