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終了アキバタマビ 21 第85回展覧会「Rejoice! 豊かな喜びの証明」

※ページの仕様上2020/12/13までと登録しておりますが、実際の会期は2020/12/27までとなります。

  • 日程
    2020年11月13日 ~ 2020年12月13日

  • 時間
    12:00

  • 会場
    アキバタマビ21 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 201・202

【展覧会コンセプト】
花を見て美しいと感じ、朝日を浴びて心地良さを感じる。そこで得るような生きることの喜びや懐かしさを数学者の岡潔は情緒と説いた。知識や理性で理解していなくても、人間に本然的に備わっているものが多くある。なぜ美しさを感じ喜びを得ることができるのか。これに対する答えは未だ得ることはない。これらの感覚は当人の実感であって、客観的に捉えることは非常に困難なものだ。語ることの難しいコミュニケーションは、瞬間的に起こるだけで、そのたびに打ち捨てられていくのだろうか。おそらくそこで生起する喜びは捨て去られるものではなく、私たちの根底にある生の部分にプールされているはずだ。なぜ生きているのかについての問いに答えることは難しいかもしれないが、生きることそのものに喜びがあるのはたしかだろう。

本展は、4名の作家を通じて、生きることと絵を描くことのつながりから、無意識下のコミュニケーションである情緒(喜びと懐かしさ)について目を向ける。

上田智之は、空や田園風景、野菜や野花などをモチーフに、繊細な透明水彩の濃淡と緻密な描画によって、日常の光景の普遍的な美しさを描き出す。雪国で育ったという上田智之の描く空は、凍てつく空気が結晶したような、その瞬間にしか起こらない柔らかな光を留めている。また、背景を一切描かずに、真っ新な余白に存在する、陰影を持たない野菜や野花は、時間を超えたところで軽やかに永遠性を獲得したような気品を漂わせる。

水晶などの鉱物に美を見出す菅原彩美は、豊かな色彩で覆われた重厚感の強い油彩画を制作する。内側で蠢くマグマの中に引きずり込まれるような流動性のある物質的な画面は、肉体という境界を脱して、魂が存在していた場所に帰着させるような輝きを放つ。光と闇、肉体と霊体という二項対立を超えて、この宇宙の根源性を想起させる。

畑山太志は、樹齢何百年の樹木を前にしたときや森の中に足を踏み入れたときの、実際に身体が体験した目には見えない空気感や存在感を基に、白色の緻密な描画による視覚では語りきれない身体感覚を伴う絵画を制作する。淡い色彩を感じる白色の画面と向き合う時間の中で、目に見えないものを直感的に感じとる素知覚を開いていくような、没入感ある視触性に導かれる。

幼少の頃、海辺の町で育ったという塙康平は、星々の集積によって満天に立ち現れる海景を、光沢感のある黒い紙に白いペンの点描画によって描き出す。画面全体に広がる白点の肌理による光のハレーションは、広大な海の前にただ一人立ち、自らを見つめ直す透明感ある深い内省を感じさせる。ドローイングでは、微かな震えを感じさせる薄く何層かに重ねられた繊細な色鉛筆による線によって、人型のモニュメントや花々などが描かれ、優しさと悲しみ、愛情など、心の機微が具現化されているようだ。

4名の作家は、表現方法は違えど、一貫して絵画の制作を続けており、人間の有限性のうちにある決して失われることのない永遠性を見出す。
本展のタイトルの一部は大江健三郎の小説『燃えあがる緑の木』から引用した。

おのおのが辿りつく場所で、一滴の水のように地面にしみこむことを目指そう!(1)

── Rejoice! (2)

人として生きることのラディカルな賛美。

(1)大江健三郎『燃えあがる緑の木 第三部 大いなる日に』、新潮社、1998年、411頁。
(2)大江健三郎『燃えあがる緑の木 第三部 大いなる日に』、新潮社、1998年、412頁。
参考文献
・岡潔著、森田真生編『数学する人生』、東京:新潮社(新潮文庫)、2019年。
・大江健三郎『燃えあがる緑の木 第三部 大いなる日に』、東京:新潮社(新潮文庫)、1998年。

テキスト: 畑山太志

【出品者 略歴】
○上田 智之 UEDA Tomoyuki
北海道育ち
2010 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2018 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻 修了

個展
2019「にぼしとハルジオン」Gallery Pepin(埼玉)
  「雪のような日」ギャラリー七面坂途中(東京)
2016「ひとつなぎの夢」mahoroba hair & relaxation(東京)

参加展示
2020「パン屋と絵 Pictures in Tanne」ドイツパンの店 タンネ(東京)
  「sightama art action exhibition 2020」旧大宮図書館(埼玉)
2019「Flowing - 2019 Taoyuan International Watercolor Biennial」Department of Cultural Affairs, Taoyuan City Government(台湾)
  「天空の芸術祭2019」梅野記念絵画館(長野)
2018「透明綴り」株式会社ベリタス〈VERITAS ARS NECESSARIA〉(東京)
  「News 展 2018」Yuga Gallery(東京)
  「トウカ」アートスペース ココノカ(東京)
  「A-TOM ART AWARD 受賞者 自然展」コートヤード HIROO(東京)
  「修了展 - 透明な色と形」東京藝術大学絵画棟 812 アトリエ(東京)
2017「gift」gallery fu(神奈川)
  「油画第四研究室藝祭展示」東京藝術大学絵画棟 8F(東京)
  「全国美術・教育リサーチプロジェクト」東京藝術大学大学美術館(東京)
2016「油画第四研究室藝祭展示」東京藝術大学絵画棟 8F(東京)
2015「みぬま秋フェス」さぎ山記念館(埼玉)
  「HIGASHIOMIYA ART FESTIVAL」東大宮コミュニティーセンター体育館(埼玉)
2014「The Far East」TURNER GALLERY(東京)

その他
2018 アニメ『貴女へ』背景美術担当
  (NHK「ヒバクシャからの手紙」で全国放送/NHK WORLD JAPAN で全世界配信)

○菅原 彩美 SUGAWARA Ami
東京都出身
2015 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
2017 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期(修士)課程絵画専攻油画研究領域 修了

個展
2019「魂の海と魂の粒と魂の光と」表参道画廊(東京)

グループ展
2017「第40回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)
2015「多摩美術大学絵画学科油画専攻有志卒業記念展 TARGET」府中市美術館 1階市民ギャラリー(東京)
  「第38回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)

○畑山 太志 HATAYAMA Taishi
1992 神奈川県生まれ
2015 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
2017 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期(修士)課程絵画専攻油画研究領域 修了

個展
2020「素知覚」EUKARYOTE(東京)
2017「時はぐれ」SEZON ART GALLERY(東京)
2014「畑山太志展」 GALLERY b.TOKYO(東京)

主なグループ展
2020「POP UP SHOW with EUKARYOTE」WHAT CAFE(東京)
  「attunement」The 5th Floor(東京)
  「神宮の杜芸術祝祭」明治神宮ミュージアム(東京)
2019「Practice_01: 線を引く」EUKARYOTE(東京)
  「HELLO my name is ________」EUKARYOTE(東京)
2018「para nature」EUKARYOTE(東京)
  「現代茶ノ湯スタイル展 縁-enishi-」西武渋谷店 B館8階美術画廊(東京)
  「網膜と記憶のミトロジー」セゾン現代美術館(長野)
  「京都アートラウンジ」HOTEL ANTEROOM KYOTO(京都)
  「PREVIEW」EUKARYOTE(東京)
2017「CYA! Modern/セイヤー!モダン~to the next stage」SEZON ART GALLERY(東京)
  「美藝礼讃ー現代美術も古美術も」 セゾン現代美術館(長野)
  「ART FORMOSA 2017」誠品ホテル(晴山藝術中心)(台北)
  「3331 Art Fair 2017 -Various Collectors Prizes-」3331 Arts Chiyoda(東京)
  「Arts in Bunkacho~トキメキが、爆発だ~」文化庁(旧文部省庁舎)パブリックスペース(東京)
  「第40回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)
2016「CAF 賞選抜展」HOTEL ANTEROOM KYOTO | GALLERY 9.5(京都)
  「SEZON ART GALLERY 美大生展 in 2016」SEZON ART GALLERY(東京)
2015「TARGET」 府中市美術館1階市民ギャラリー(東京)
  「第38回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)
  「TURNER AWARD 2014」TURNER GALLERY(東京)他巡回(大阪、札幌、名古屋)
2014「第1回CAF賞」TABLOID GALLERY(東京)
2013「第49回神奈川県美術展」神奈川県民ホールギャラリー(神奈川)
  「ワンダーシード2013」 トーキョーワンダーサイト本郷(東京)

主な受賞
2015「多摩美術大学卒業制作展」福沢一郎賞
  「TURNER AWARD 2014」優秀賞
2014「第1回CAF賞」優秀賞、審査員特別賞(名和晃平賞)

パブリックコレクション
ホテルメトロポリタン川崎
ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル

○塙 康平 HANAWA Kohei
1991 茨城県生まれ
2015 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
2017 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期(修士)課程絵画専攻油画研究領域 修了

グループ展
2017「Twilight」OGU MAG(東京)
  「第40回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)
2016「第3回CAF賞入選作品展覧会」3331 Arts Chiyoda(東京)
2015「多摩美術大学絵画学科油画専攻有志卒業記念展 TARGET」府中市美術館 1階市民ギャラリー(東京)
  「第38回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館(東京)
2014「That I shall say goodnight till it be morrow」新宿眼科画廊(東京)
2012「ドーナツのない穴」多摩美術大学(東京)

受賞等
2016「第3回CAF賞」入選
2015「多摩美術大学卒業制作展」福沢一郎賞

【展覧会詳細】
「Rejoice! 豊かな喜びの証明」
会期:2020年11月13日(金)~12月27日(日)
開場時間:12:00~19:00(金・土は20:00まで)
休場日:火曜
入場無料

【関連イベント】
●対談イベント
11月15日(日)10:00~12:00
ゲスト:堤たか雄(セゾン現代美術館代表理事・館長)

※新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、イベントは開場時間外に無観客で行います。延長した場合は一時的に入場を制限させていただきますので予めご了承ください。対談の様子はイベント終了後、展示期間内に冊子としてまとめたものを会場で配布する予定です。

【展覧会場】
アキバタマビ21
〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 201・202
電話:03-5812-4558
URL: http://www.akibatamabi21.com
アクセス:
東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分
東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分
都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分
JR御徒町駅南口より徒歩7分
JR秋葉原駅電気街口より徒歩8分

※「アキバタマビ21」は多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場である。ここは若い芸術家たちが、互いに切磋琢磨しながら協働し共生することを体験する場であり、他者と触れ合うことで自我の殻から脱皮し、既存のシステムや権威に依存することなく自らをプロデュースし自立していくための、鍛錬の場でもある――そうありたいという希望を託して若い芸術家たちにゆだねる、あり得るかもしれない「可能性」の場であり、その可能性を目撃していただく場所である。

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