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東京都 渋谷区

2014-07-14 18:10


原一男氏「アクト・オブ・キリングの監督はアホ」

原一男氏「アクト・オブ・キリングの監督はアホ」

現在、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開中の中国のワン・ビン監督の映画『収容病棟』で、7月12日(土)の上映後に原一男監督がトーク・イベントに登壇。「マイケル・ムーア監督や、『アクト・オブ・キリング』のジョシュア・オッペンハイマー監督はアホ」と辛辣な言葉を浴びせた。

天皇の戦争責任に迫る過激なアナーキスト・奥崎謙三を追った超問題作『ゆきゆきて、神軍』(87)で世界のドキュメンタリー界を震撼させた原一男監督は“仕掛ける天才”。一方、超長尺の傑作『鉄西区』(03)以来、ドキュメンタリー界の最前線にいる『収容病棟』のワン・ビン監督は、“カメラがあることを忘れてしまう”と評されるタイプ。原監督は「僕もワン・ビンも写真から入って、それから映画に転身した。写真の経験があると、被写体との関係の中でカメラをどう相手に向けていくか、それを具体的に考えるんですよ。ワン・ビンの画を見て、なるほど僕と似ていると思った」と意外にもワン・ビン監督と似ている発言からトークをスタートした。原監督は今年2月、『収容病棟』のプロモーションで来日したワン・ビン監督と雑誌の取材で対談しており、「ワン・ビンは風貌もあか抜けなくて、まるで田舎のあんちゃんのよう。私も決して都会的でスマートなタイプではないという点でも(笑)親近感が湧いた」とワン・ビン監督の印象を述べた。

原監督もワン・ビン監督も、どちらも自分自身でカメラを回す撮影スタイルという共通点がある。それだけに「『収容病棟』はカメラが自由になっている。対象に2メートル以上近づかないようにしたと言っているそうですが、その中でも自由に、ある時はぐっと寄ったり、追いかけていたのをふと止めたり。カメラと遊んでいる感覚もあるんですよ。だから意外にもワン・ビンの映画の中で、実はこの映画が一番見やすいんじゃないかと思っている」と分析した。

さらに『収容病棟』に登場する精神病患者に話が及ぶと、「『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三さんも、天皇にパチンコ玉を打った時に、都立松沢病院で精神鑑定を2度受けて、軽いパラノイアと言われているんですが、世の中の人はほとんどが軽いパラノイアばかりでしょう。だから異常じゃないということですよ。『収容病棟』の中で、理解不能な人はいないと思うし、病院の中にいる人と塀の外にいる人に決定的な違いはないと見た方が自然だと思いますよ」と話し、「中国という国家が『収容病棟』のようとも言えるかもしれないが、権力に抑圧された空間はどこの国にもある。だから『収容病棟』は私たちが現実に生きている世界の映し絵であると言えるのではないかと思う」と、この映画の重要性を真摯に語った。

続けて原監督は、過去に対談したことのある2人のドキュメンタリー監督をあげて「マイケル・ムーアなんてただの典型的なアメリカ人で、アホとちゃうかと思った。それに比べたら、『アクト・オブ・キリング』の監督は知性的だろうと思ってたんですが、対談してみたら、そのジョシュア・オッペンハイマーも典型的なアメリカ人。そういう視点から見ると、『アクト・オブ・キリング』は大ヒットして皆も傑作だ傑作だと言っているようですが、大した映画じゃないんですよ。アメリカ人であるがゆえに、あのような発想が出る。観客が圧倒されるのは、虐殺の数の多さ、現実の世界の中で虐殺した側が英雄視されているというおぞましさで、作品の凄さじゃないでしょう」と原節を炸裂させ、会場を笑いの渦に包んだ。最後に「マイケル・ムーアともオッペンハイマーとも、もう話さなくていい。でもワン・ビンとならまた話してもいいなぁ。彼は実に気持ちのよい男でした」と締めくくった。

(配給会社ムヴィオラからのニュース・リリースより)

[写真:『収容病棟』のトーク・イベントに登壇した原一男監督]

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■映画『収容病棟』公式HP
http://moviola.jp/shuuyou/

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