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2016-11-03 17:40


北欧サーミ人少女描くTIFF W受賞作日本配給へ

北欧サーミ人少女描くTIFF W受賞作日本配給へ
第29回東京国際映画祭授賞式より、映画『サーミ・ブラッド(原題)』アマンダ・ケンネル監督(右)、主演のレーネ=セシリア・スパルロク(左)©2016 TIFF

2016年10月25日から開催されていた第29回東京国際映画祭が11月3日閉幕。東京・六本木のEXシアターでクロージング・セレモニーが行われ、コンペティション部門でアジアン・プレミア上映されたアマンダ・ケンネル監督の『サーミ・ブラッド(原題)』が審査員特別賞と最優秀女優賞をダブル受賞。また、アップリンクが日本配給権を獲得した。

ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部に存在する先住民族で、差別的な扱いを受けてきたサーミ人の少女のアイデンティティを描いた本作。主役の少女を演じたレーネ=セシリア・スパルロク自身は純粋な南サーミ人で、普段はトナカイの世話をしながら暮らしているという。今回の来日も、トナカイの世話があるからと一度は断ったが、家族からの後押しによって実現した。受賞を受けセレモニーの壇上に登ったスパルロクは「実の妹と一緒に映画に出演し彼女がいたから演じることができました」と笑みをみせ、ケンネル監督は「東京で観客の方と話しました。この映画は鏡のようなもので文化も違う観客の方が自分の物語だと感想を語ってくれます」と述べた。

映画『サーミ・ブラッド(原題)』
映画『サーミ・ブラッド(原題)』より、主演のレーネ=セシリア・スパルロク

また、審査委員長のジャン=ジャック・ベネックスは主演のスパルロクについて「彼女がスクリーンに現れた瞬間から釘付けになった。ナチュラルでいて、長い演説よりも強烈に人種差別の愚かしさを思わせる」と絶賛した。


映画『サーミ・ブラッド(原題)』

映画『サーミ・ブラッド(原題)』
映画『サーミ・ブラッド(原題)』より

1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らすサーミ人は、劣等民族とみなされ差別的な扱いを受けていた。中学生のエレ・マリャは成績も良く、街の高校に進学したかったが、先生にサーミ人には進学する資格がないと言われる。民族衣装を着ることを押し付けられ、見世物のようにテントで暮らすことを強いられる生活からなんとか脱したいと思っていたエレは、村の夏祭りのダンス大会で出会ったスウェーデン人の少年ニコラスと束の間の恋に落ちる。そのニコラスを頼ってエレは家出をするのだった。

ケンネル監督自身がサーミ人の父とスウェーデン人の母の間に生まれたダブルで、祖母のルーツをテーマとする初長編作となる本作を撮った。監督曰く「支配階級と劣等民族の構図はまだ存在します。映画はスウェーデン史の暗部を描いていますが、でも基本的には、同様なことが現在でも難民キャンプで暮らす誰かに起こりうるのです」。本作は、ラップランドの美しい自然の中で描かれる少女の成長物語であり、差別に抗い生き抜く普遍的なテーマを訴える感動作である。

監督:アマンダ・ケンネル
撮影監督:ソフィーア・オルソン、ペトルゥス・シェーヴィーク
出演:レーネ=セシリア・スパルロク/ミーア=エリーカ・スパルロク/マイ=ドリス・リンピ/ユリウス・フレイシャンデル/オッレ・サッリ/ハンナ・アーストロム/マーリン・クレーピン/アンドレアス・クンドレル/イルヴァ・グスタフソン
2016年/スウェーデン=デンマーク=ノルウェー/112分/スウェーデン語
配給:アップリンク

▼映画『サーミ・ブラッド(原題)』抜粋映像


【第29回東京国際映画祭 受賞作品・受賞者】

東京グランプリ/東京都知事賞 『ブルーム・オヴ・イエスタディ』
審査員特別賞『サーミ・ブラッド』
最優秀監督賞 ハナ・ユシッチ『私に構わないで』
最優秀女優賞 レーネ=セシリア・スパルロク『サーミ・ブラッド』
最優秀男優賞 パオロ・バレステロス『ダイ・ビューティフル』
最優秀芸術貢献賞 『ミスター・ノー・プロブレム』
観客賞 『ダイ・ビューティフル
アジアの未来 作品賞 『バードショット』
国際交流基金アジアセンター特別賞
アランクリター・シュリーワースタウ『ブルカの中の口紅』
日本映画スプラッシュ 作品賞 『プールサイドマン』
WOWOW賞 『ブルーム・オヴ・イエスタディ』
"SAMURAI(サムライ)"賞 マーティン・スコセッシ 黒沢清
ARIGATO(ありがとう)賞 新海誠、高畑充希、妻夫木聡、ゴジラ

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