2008-08-08

人生、それが伝説なり このエントリーを含むはてなブックマーク 

 ギターで有名なレス・ポールのドキュメンタリー、という興味をそそられる映画だったことがきっかけで、試写を拝見することができたが、見終わったあと、自分の知識の無さを恥じ入るばかりとなった。

 現在は、多重録音、オーバーダビングなど、シンセとパソコンがあれば、バンドをやっている者ならできる簡単なことなのだが、その多重録音を初めてチャレンジし、音楽業界に革命的な発展をもたらした人が、レス・ポール本人だとは、まったく知らなかったことだった。何でも、音楽業界の人なら皆、知っていることらしいのだが、60年代の音楽を今でも愛する私としては、一般常識的なことをようやく知ることができたことだけで、この映画を観た価値は高かった。

 しかし、その当然の知識を知っている人が、この作品を見ても、充分にレス・ポールの実績の数々と人生に驚かされるし、90歳を超えてもいまだにライブ活動をやっている姿には、間違いなく感動すると思う。特に、多重録音を、自宅の庭やお風呂場、台所と、スタジオ録音などではなく、一般家庭の普通の場所でやっていた、なんていう、先人の努力を見られることだけでも、今の音楽業界の人たちには必見の作品と言っていいだろう。

 伝説は伝説だけで終わるものではなく、それを事実と実績で今も証明しているレス・ポールという人の生き方の素晴らしさそのものが、今の世界の音楽業界全体の基礎となっていることを、真摯にとらえているこの作品の監督の腕もまた見事なものだ。現在も、ライブハウスで伝説をつくり続けているレス・ポールに、「あなたは永遠の人」と言いたくなるくらい、この作品は実に見ごたえのある人物ドキュメンタリーだと思う。

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山中英寛

ゲストブロガー

山中英寛

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