2008-09-05

岡田壯平氏トークイベントレポート このエントリーを含むはてなブックマーク 

昨日は、特別ゲストとして「レオン」や「ショーシャンクの空に」等の数々のヒット映画を手がけている字幕翻訳家の岡田壯平氏をお招きして「字幕翻訳」についてお話を伺いました。
前半で、岡田さんが翻訳家になろうと思ったきっかけから、実際の仕事、翻訳家になるために努力したことなどをとても分かりやすく自身の体験を交えながら話して下さいました。

後半では、どうやって翻訳が行われるか実際に岡田さんが翻訳されたばかりの劇場映画「アイズ」のスクリプトとリストを参考にしながら一連の流れを説明されました。

また、翻訳の難しさを「アイズ」に出てくる一文を例にとり説明して頂きました。

Anna and I shared both a blessing and a curse.

直訳:彼女と私は祝福と呪いを共有した。

意訳:彼女と私は喜びも苦しみも共有した。

上記の様な直訳だと、日本語の表現としておかしい。が、最近は誤訳だと指摘され2ちゃんねるの掲示板で叩かれるのを恐れて英語通りに訳している字幕を見かけることがある。しかし、それでは違う文化の中で暮らしている私達にはピンとこない。ここで理解しておかないといけないことが「行間を読み映画全体をとらえた上で、誤訳との指摘を恐れずに訳す」ということだそうです。

最後の30分を質疑応答の時間とし、参加者からの様々な質問に答えて下さいました。

質疑の詳しい内容は後ほどUP致します。

コメント(1)


  • 質疑応答の内容です。

    ―翻訳の「~を」止め(目的物だけの台詞)をしないというのは?

     日本人に不親切だから。普段日本人が使わないのだから翻訳は日本語の特性を
    生かし、より自然になるように心がけている。

    ―マイナーな言語の翻訳を行う場合はどのようにしたのですか?

     香港ものの時は北京語でなく広東語だった。また、インド映画などの時も同様
    だが、元々英語字幕が付いているのでそれを日本語に翻訳した。

    ―翻訳家にはカラーがあると聞きますが、岡田さんの場合は?

     基本的に人間ものが好き。「フリーダムライダーズ」は良かった。「レオン」
    、「ショーシャンクの空に」も同様。女性の台詞に日本語を付けるのが好き。

    ―医療、裁判など専門的な分野を扱っている作品の場合は?

     辞書を使ったり、専門家に聞く。裁判は国によっても異なるので難しいところ

    ―ドキュメンタリー映画と劇映画の違いとは何でしょうか。

     ドキュメンタリーの場合、台詞として言っていないので2行字幕なども多く字
    数が増える。字の会話は訳しにくい。大変ではあるが、素晴らしい作品も多いの
    がドキュメンタリー。

    ―ジョークや語呂合わせ等、うまく訳せたと思う時はありますか?

     ほとんど無い、辛うじて訳せてほっとするぐらい。何となく面白っぽそうに訳
    す。コメディの場合、文化の違いや民族性が顕著で、アメリカでウケても日本で
    全くウケなかったり。その逆だったりというのが多々ある。日本で大ヒットした
    レオンやショーシャンクは、アメリカではそこまでヒットしていない。

    ―どれ位の英語スキルが必要でしょうか。

     高卒までの英語力、語彙があれば。あとは慣れと訓練、やる気。
     翻訳の学校に入って基礎を学んでからというのも良い。

    ―スラングなどは訳が難しいと思われますが。

     スクリプトに事細かに解説が付いてくるので大丈夫。英語圏以外にも送るため
    解説が親切である。

    ―フリーランスと専属はどちらが多いのでしょうか?

     90%がフリー。

    ―月に何本程度の作品を手がけるのですか?

     大抵は月1本、多くても3本。

    ―日本の映画を訳したりはするのですか?

     しない。日本に長く住んでいるか、日本人と結婚しているかでもない限り、日
    本語のニュアンスを出せない。組んでやる事は可能性としてある。

    ―字幕と吹替を同時にする場合はあるのですか?

     されている人はいるが例外で、ほとんどが分業。吹替翻訳者は肉体言語で台詞
    も多いので、字幕翻訳をする事は可能だが、字幕翻訳者は脳内で訳すため吹替を
    する事は難しい。

    ―自分から仕事を依頼することはあるのですか?

     製作部長は男性が多いため、営業がしづらい。
     但し、仕事を下さった所からの仕事は必ずやります。

     翻訳という仕事の基礎から最後のインタビューまで、2時間にわたり大変充実
    した講演をして頂きました。
     お話をされる中において、岡田さんの人柄の良さや映画や翻訳に対する思いが
    たくさん感じられました。ありがとうございました。

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