2009-01-30

乙女のエロティシズム展「スウィート・セクスアリス」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

今週より新たな展覧会、乙女のエロティシズム展「スウィート・セクスアリス」を開催しております。
http://www.vanilla-gallery.com/

水を含んで冷たく肌にふれるレースの縁飾り、か細き爪を慈しむような髪の毛のひと
房、漆黒の闇に消えゆく毛細血管のひと枝、橙色の蛍光を帯びる皮膚の艶、ほんのり
色づく粒の群れと頬、ペティコートの下にふさふさと覗く白い体毛……、さぁ、乙女
らの甘やかなささやきに耳を寄せましょう! エロスという秘密の詰まったバスケッ
トの鍵を探す、乙女探偵の気分で。

虫眼鏡片手にそのディテールに目を凝らしてみる。注がれる視線にうつむきつつも秘
密をチラとみせる乙女もいれば、悲しみがあふれるゆえに自らを露わにする乙女もい
る。そうかと思えばノンシャラン、はたまた果敢なまでに理知的に……と、乙女エロ
ス調査は一筋縄ではいきません。暗礁に乗り上げる気配もしばし。

「美しいままで残ってほしい」と綴る雨宮里江のセルフ・ポートレート、オフィーリ
アを思わせる場面(きれい!)→腐敗せず永遠に美しいままの死の瞬間/自身を其処
に留め時間を封印する欲望、と探偵手帖に薔薇インクでメモ。

安蘭の線画からこぼれゆく少女の孤独、そして少女が二人(双子?)になった時の、
決して解けないリボンの結び目のようなつながり(あの桃色の細リボンを此処にスク
ラップすること!)。いちご色や淡いゴールドに守られた彼女たちの時間。

祭壇のように飾られたMAHO.S.Sのモノクロームの絵画《それは透明な皮膚の下に隠し
た》、……隠したものは捧げ物でもあるのかしら? 理性と知性が野性を剥がしてし
まったような……(隠されたものはまだわからない→M子に相談)。蝋燭のない燭台
に灯すべきは、漆黒の炎。

思春期の男子を描くカネオヤサチコの極彩色を見詰めていると、ああそうだったわと
赤面してしまう(思わず虫眼鏡を落としたけれど虫眼鏡は無事)。隣の席の男の子に
感じていた「栗の木に似た人の匂い(by戸川純)」。サチコさんの色彩は匂いそのも
の!

一緒に頬を埋めたくなる山田緑の粒々の果実たち。ザクロとイチジクの中でちいさな
女の子たちは色づくことを待っているようにも思えるし、無心にただただ身を寄せて
いるようにも思える。初潮前のあえかなひとときのよう……(薔薇インクでメモした
ことを後悔)。

「シロクマだ!」と皆が叫び出す福田明子の合成フォト作品《Love Is Zoophilia》。
恍惚の過程においてシロクマになりつつある愛のかたちからは、美しきメランコリー
が白く覗く。いえ、それとも、シロクマが人間になりつつある? →上野動物園に行っ
て、確認。

----------メモはここまで。

ひとしきり調査を終えた《スウィート・セクスアリス》展。判明した事実は「エロス
の秘密を知るためのバスケットの鍵はきっと、永遠に見つからない(探し続けなけれ
ばならない?)」。そのことが収穫かどうかはわからないけれど、鍵穴から覗く楽し
みを知ったことは大収穫。鍵穴の奥に広がる世界を想像する方がずっと、バスケット
の中身をより膨らませてくれるはず。

貴方の調査報告、待っています。

文:Mistress Noohl

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