鉱物が好きだ。
小学生の頃、学研の「科学」の付録に付いて来る鉱物標本マニアだった。
それから大人になり、フリーで原稿を書いていた私は、しゅっちゅう創作に詰まると気晴らしの散歩に出かけていた。
かれこれ20年近く前になるが、その当時、原宿ラフォーレの裏手に「Niche」とかいうNYのミステリアスな雰囲気のブティックがあって、その店内にひっそりと美しい石がディスプレイされていたのだ。
珍しそうに見入る私に、店員さんが「自分が自然に心引かれる石を選んで、素直な気持ちで見つめてみてください。そして、時々、月光浴させてあげてくださいね」と言い、その時点でもう目の前の石を連れて行こうと決心していたのを覚えている。
あれから時が流れ、スピリチュアル・ブームと合致してか、あちらこちらで天然石ショップがオープンし、「恋愛に効く」「仕事運アップ」「お金に恵まれる」といった効能効果で石がもてはやされるようになってしまった。
現代日本って、実用的な面を重要視する傾向が強くて、真の意味ではロマンティックを楽しめない息苦しい空気が充満しているよね。
でも、最近、石が好きだからと石師の下で修業したりもして、やっと気づいたのは、自分は綺麗な石をただ眺めたり愛でたりするのが好きなだけなんだな…って。
だから万事に渡ってお金儲けには本当に疎い人間だし、こんなじゃこの先やっていけるのかなあ…って不安にならなくもないけど、ま、しょうがないよね。
そんな私の「石好き」に捧げるリコメンド本…『鉱物アソビ』。
これは、ただただ暮らしの中で石を愉しみたい、石と戯れたい人のためのビジュアル本。
貴重な写真や資料、作家の作品や博物館情報など…盛りだくさんな内容になっていて、いつまで眺めていても飽きない本です。
理科と芸術が溶け合った世界って魅惑的…だね。