2010-10-25

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 土曜日の夕方、Feminist Active documentary Video festival(FAV)連連影展の一つとして上映された、『グリーナムの女たち』(監督:ビーバン・キドロン、1983年、イギリス/日本語版製作監督:村井志摩子、編集:矢端則子、台本:近藤和子、1986年、日本語版製作:ウィメンズネットワーク)を観に、ウォーキングで渋谷のアップリンクへ。

 http://www.renren-fav.org/schedule_2010_10_23.html

 上記の近藤さんによると、現在でも活躍しているキドロン他スタッフは当時イギリスの王立映画学校の学生だったそう。また65分あった作品を日本語版製作の際に5分カットして、60分にしたのだそう。

 比較的多忙だったのに観に行ったのは、Cook,Alice & Kirk,Gwyn, Greenham Women Everywhere. Dreams, Ideas and Actions from the Women’s Peace Movement, Pluto Press, 1983.アリス・クック、ケヴィン・カーク、近藤和子訳『グリーナムの女たち——核のない世界をめざして』、八月書館、一九八四年を読んで、国家権力や社会に対してだけではなく、グループの内部でも、自由で闊達で、より民主的な状態を追求していこうという姿勢に強い共感を覚え、少しでもその「空気」を味わいたかったので。

 いつもギリギリ到着なのを反省して、時間的に余裕をもって行ったら、開場は上映10分前だと言われてしまい、時間までアップリンクの入り口で本を読んでいました。秋晴れの気持ちよい午後だったからよかったようなものの、雨降りだったりもっと寒い季節だったら、悲惨でしたでしょうねえ(苦笑)。

 小さめの大学の教室程度の広さの会場は、ラディカルな市民運動家っぽい中年から中高年の女性主体でほぼ満席。

 で、肝心の映画ですが、約25年前手弁当で製作された日本語版の、しかも何度もダビングされたものの上映だったため、例えるならYouTubeで何年か前に投稿された昔のテレビ番組を見るような感じで、その点では残念でした。

 ただし、映されている「グリーナムの女たち」の非暴力直接行動そのものは、とても興味深いものでした。イギリスのグリーナム・コモン米軍基地に核ミサイルが配備されるのを阻止するために、基地ゲート近くにキャンプをするという、今の日本だったら、大量の私服・制服の警官に常時マークされ、様々な嫌がらせを受けるであろう、かなりハードな状況であるにも拘らず、こわばった表情の兵士や警官をあざ笑うかのように、抗議運動は意図的にポップで楽しげに展開されます。かぶり物を着たり、歌ったり楽器を演奏したり、昔日本の子どももやっていたように、基地の敷地内に「侵入」して、巡航ミサイルのサイロの上をインディアンの真似をして「アワアワアワアワ〜」と声を出しながら踊ったり…。

 他方で資金の管理や集団的意志決定の方法といった、多くの人が集まって何かをするのには、必ず出て来る民主主義の問題について、メンバー同士で激論が交わされるシーンもありました。一応そのシーンでの「落としどころ」は、小グループで常に話し合いを続けるというものでした。僕自身本を一緒に編集するとか、翻訳を一緒にやるとか、あるいは選挙運動めいた集まりで、何度ももめにもめたことがあるので(で、結局心底嫌気がさして辞めてしまうというのが、パターンです…)、いろいろと思いに耽りながら観ていました。

 上映終了後、休憩を挟んで、ゲストの長沖暁子さんと堀川弘美さんのトーク。長沖さんは1984年と85年に、堀川さんは今年の九月に、各々現地を訪ねたとのことで、そのときの状況を中心に。

 以下はお二人のお話の中で特に印象に残った下りの箇条書きメモを整理したものです。

 長沖さん
 「グリーナムの女たち」の批判と克服の対象になっているのは、暴力。物理的な暴力や戦争だけではなく社会の中の全ての暴力が問題とされている。その最たるものがレイプ、また「普通の」セックスも暴力である。と言うのも全ての性関係には暴力が含まれているからだ。そこから男とセックスをしないレズビアニズムが出て来るし、更にレズビアニズムの中からも女とセックスしない女が現れる。

 長沖さんはグリーナム・コモンを訪れるためにパソポートを取る際、自分の戸籍を親の戸籍から「分籍」したとのこと。紙切れ一枚で非常に容易に出来るとのこと。

 堀川さん
 グリーナム・コモンの米軍基地も女たちのキャンプも現在はなく、基地跡地の一部は公園になっている。反対運動をしていた女たちの一部は現在でもアピール文を持って街頭に立ったりチラシを配ったりして、ロンドンで平和運動を続けている。
 
 プログラムは五時半前に終了。途中本を取り寄せていた区の図書館等、ちょっと寄り道をしながら、のんびり帰って、食後に一度仮眠した以外は日曜の夜まで徹夜でした。ま、その後ワインを呑んで、月曜の朝までグッスリ寝れましたけどね(笑)。

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知世(Chise)

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