2012-01-27

「50年代のアイスランドを描いた、ノスタルジックな佳作」 トーキョーノーザンライツフェスティバル2012 作品紹介 File.03 『精霊の島』 このエントリーを含むはてなブックマーク 



【上映日時】
① 2月14日(火)/14:00
② 2月17日(金)/16:30

◆フリドリック・トール・フリドリクソン監督特集 -Friðrik Þór Friðriksson-

『精霊の島』
■ 原題:Djöflaeyjan/英題:Devil's Island
■ 監督:フリドリック・トール・フリドリクソン(Friðrik Þór Friðriksson)
■ 出演:シギュルヴェイ・ヨンスドッティール/ギスリ・ハルドルソン/バルタザル・コルマキュル
■ 1996年 アイスランド/ドイツ/ノルウェー/デンマーク ■ 99min ■ 言語:Icelandic/English
【受賞】 1997年アマンダ賞(ノルウェー・アカデミー賞)最優秀北欧長編映画賞ほか

※国内DVD未発売

【ストーリー】
1950年代のレイキャビク。第二次世界大戦後に米軍が残していったカマボコ型兵舎のバラックに、霊能力を持つ占い師の老女カロリナと家族が住んでいた。
カロリナ夫婦、孫のバディとダンニ、孫娘ドリー夫婦とその息子という四世代家族が住む狭いバラックには、日々騒ぎが絶えない。
米兵と結婚した母ゴゴ(カロリナの娘、既に立派な中年である)が、子供の中で一人だけアメリカに呼び寄せたバディが、数年後に帰国すると、すっかりアメリカにかぶれた彼の言動は、バラックの周辺にさらに騒動を巻き起こしていく。
そんなさなか、ずっと想いつづけてきた隣家の娘を兄のバディに奪われてしまったダンニが、飛行士の試験に合格する。内気で目立たなかった弟が一躍地域のヒーローとなり、面白くないバディがアメリカへ戻ろうと航空券を手にした時、カロリナの占いに「飛行機」 「事故」という不吉なしるしが現れる…。

【作品紹介】
映画の舞台となる1950年代のレイキャビクには、第二次世界大戦の影響が色濃く残っていた。登場人物たちの住む、米軍が残していったバラック兵舎がその象徴である。
1983年に大ベストセラーとなった映画の原作小説は、当時バラックに住んでいた住民が語った話が基になっている。その粗末な建物には、仕事を求めて首都にやってきた人々が多く住んでいたという。貧しい住民が多かったバラックは当然のごとく差別の対象となり、子供達はしばしば争い傷つけあうが、カロリナ一家はしぶとく、まるで根を張ったかのように、ここの生活から出て行こうとはしない。
そんな一家にも立ち退きの日が来るのは、カロリナの不吉な占いが当った後のことである。その日も、いつもと変わりなく仕事に向かう実直なカロリナの夫トマスが、フリドリクソン映画で必ずといっていいほど引用されるチャップリンの真似をしながら朝の光の中を遠ざかっていくラストシーンは、ひとつの時代の終わりと新しい時代の到来を暗示させ、息を呑むほどに美しい。
戦後のアメリカ文化が流れ込んできた時代、アイスランド人が味わった戸惑いと混乱と高揚感が、ひしひしと胸に伝わってくる作品である。(雨宮)

「トーキョーノーザンライツフェスティバル2012」公式サイト http://www.tnlf.jp/

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