2012-02-05

『J・エドガー』 8人のアメリカ大統領がひれ伏した権力者の、愛と孤独… このエントリーを含むはてなブックマーク 


“FBI(アメリカ連邦捜査局)”というと、まんまアメリカ映画による刷り込みでなんとなくカッコいいイメージなんだけど、その創設者がこんな面白い御仁だったとは驚いた。
そんな意味じゃ、『ソーシャル・ネットワーク』 と似てなくもない。
我らのクリント・イーストウッド最新作、『J・エドガー』 は、20代の若さでその前身組織の長になり、そしてそのまま初代FBI長官として死ぬまで歴代アメリカ大統領に怖れられ続けたという実在の人物、ジョン・エドガー・フーバーを、レオナルド・ディカプリオがフィリップ・シーモア・ホフマンそっくりの老けメイクから女装から男同士の熱いキスまで、怒涛の役者魂で渾身演じ切る、“愛の”伝記ドラマ。
惜しくも、ディカプリオはオスカーにノミネートされなかったらしく、また映画自体アメリカじゃ賛否真っ二つのようでそれはどうやら日本でも同じみたいなんだけど、ボクは面白かった。
そりゃ 『グラン・トリノ』 とかに較べたらアレだけど、どーしてみんな、イーストウッドに大層な映画を求めるのかなぁ?

物語は、自身の回顧録を作ろうとしている晩年のフーバーと彼の回想が交互に語られてゆくという構成なんだけど、フーバーがいかにしてFBIを強大な組織に築き上げ権力を掌握していったかについては「へぇ~」という程度に留め、イーストウッド監督はあくまでそうした権力者の裏の顔、溺愛しすぎる母親との関係や、副長官として入局してきた、クライド・トルソンとの知られざる愛の履歴にこそ淡々と迫ってゆく……。
そう、一見すると骨っぽい政治ドラマだけど、これは実は 『マディソン郡の橋』 にも似た男と男のメロドラマ。
ボクも最初は、デ・ニーロがCIAの創設裏話に迫った、『グッド・シェパード』 みたいな映画を想像していたんだけど、よくよく考えたらイーストウッドはそういう話は撮らない。
権力という権力をすべて手に入れていたのにたった一つの愛を成就させられなかった孤独な男の悲愴な末路……。
人間の“翳”を好む実に御大らしい映画だ。でも、ソロソロ彼にはまた引退した元FBI捜査官とかを演ってほしいよネ。

ブログ「瓶詰めの映画地獄」 http://eigajigoku.at.webry.info/

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栗本 東樹

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“浮世離れた坊主でも木魚の割れ目で想い出す”


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