2013-07-12

『ノーコメント by ゲンスブール』クロスレビュー:昔の男に会ってきた このエントリーを含むはてなブックマーク 

映画がはじまる・・緊張する。
まるでどこかの喫茶店で昔の男が来るのを待っているよう。
そして懐かしく響く彼の声に、全身包まれてしまう。
傷つけ合い、愛し合い、悦びを分かち合った日々が蘇るなか、映画に没頭していく。

全編ゲンスブール本人のナレーションで構成されたドキュメンタリー映画。
彼自身が語る両親、愛した女たち、子供たち、そして“セルジュゲンスブール”・・・

「彼が醜男とは思わない」とアンナ・カリーナに言わせ、あのブリジット・バルドーとのデートで酔いつぶれ、フランス・ギャルをガキと言い放つ。そしてシャルロットにメロメロのゲンスブール。20代~60代までの貴重な録音と映像で構成された映画からは、煙草を吸い、満たされないままの彼の激しいエネルギーと孤独が伝わってきた。

もしかして本当のゲンスブールを見てしまっているのかも・・・

深く傷つけ合い、激しく愛し合い、そして悦びを分かち合った目の前の男を冷静に観察する。
時間がたつにつれ再び心をかき乱される。本当はそんな事思っていたのね。
何かがわかったような気になったけど...やっぱり複雑な男。

エンドロールが流れる中、静かに涙が頬を流れた。
やっぱりこの男を愛していたんだ。
セルジュ、ありがとう。

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波摩幸江

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波摩幸江