今月も厳選シアター情報誌「Choice!」との連動インタビュー企画“Artist Choice!”をお届け!都内の劇場、映画館で配布されている「Choice!」本誌にはインタビューの他にもさまざまな映画・演劇の情報が満載、是非探してみてください。「Choice! vol.12」2009年11月号は本日より配布されています。(→「Choice!」配布場所一覧)
今回は映画だけにとどまらず、脚本家・楠野一郎氏と共に、主宰を勤める演劇ユニット・プロペラ犬での活動も積極的に行っている、水野美紀氏のインタビューです。
10月初旬、蜷川幸雄演出による『コースト・オブ・ユートピア - ユートピアの岸へ』への出演を終えた水野美紀。三部作一挙上演で計9時間という大作だった。
舞台の数だけ、自分の中で
課題がひとつずつ増えていく
「次、たとえば3時間の芝居をやったとしても、あっという間に感じるかもしれない(笑)。シーンも多いし、衣装替えも多い。初日からドキドキしっぱなしで、すごいテンション。すべてが無事に終わったときは、本当に感動しました」
映像畑出身だが最近では、舞台女優としての顔も定着してきた。
「映像に比べると、やはり舞台は、肉体をより使いますね。ただ、舞台の中にもいろいろな種類があって。ひとつの舞台で何か掴(つか)んでも、また別のカンパニーに入っていくと、その掴んだものは全然使えなかったりするんですよ。毎回、自分の中で課題があります。舞台の数だけ、課題があるというか」
なんとも自然体な物言いで、彼女は言う。カンパニーそれぞれで、演劇に何を求めているかは違うだろう。ということは、そのカンパニーが水野美紀という演じ手に求めることもおそらく違ってくるはずだ。
「役によっても違うし、演出家のカラーによっても違う。劇場の大きさによっても違う。奥が深い。小屋が大きくなればなるほど、ひとつの言葉を伝えるのにも、よりエネルギーがいるし、より大きく伝えていかないといけない。それを、小さい劇場でそのまんまやったら、その芝居はとても大げさになってしまうし。その調整はすごく難しいですね」
不安も楽しみたい!
目の前のことに食らいつきながら
演劇はまさに肉体表現である。だからこそ、“肉体の使い方”の微妙な差異が決定的に違ってくるのだろう。そうした変化に毎回対応しなければいけないことは、ストレスにはならないのだろうか。
「いえ、毎回楽しみです。“今回はどんな感じになるんだろう?”って。“ちゃんと、このカンパニーの中に入っていけるだろうか?”という不安と、楽しみな感じが両方ありますね。毎回毎回、チャレンジなんですよ。あと、出逢いが楽しみ。役者さん、脚本家、演出家……毎回、新しい出逢いがあるので」
楠野一郎と共同主宰する「プロペラ犬」の第三回公演『サボテニング』が11月から始まる。
「プロペラ犬は、コント寄りの芝居なので、言ってしまえば、ここで笑ってもらえないとサムいことになるというところも(笑)。絶対にスベっちゃいけない台詞とかありますからね。同じ台詞を言っていても、ちょっと相手との間合いが悪かったり、一秒遅かったり、声のトーンがちょっと違ったりするだけで、全然反応が違っちゃったりするんですよ。これが面白いのは、正解があるということ。この台詞は、この間で、この音で、という正解がある。そこを突いていかなきゃいけないという面白さがありますね」
目標を訊くと、「とにかく目の前の面白そうなことに食いついていく!」と頼もしい答えが。
「いろんなものをやりたいんです。蜷川さんのコクーンの後に、プロペラ犬のRED / THEATERというのは、最北端から最南端に行くようなもの(笑)。はたして私はアジャストできるんだろうか?そういう不安も楽しみたい。とにかく、いろんなこと、やりたいですね」
取材:相田冬二 撮影:平田光二 メイク:小口あづさ
★このインタビューのロングバージョンは
厳選シアター情報誌「Choice!」公式サイトで読むことができます。
水野美紀(みずのみき)プロフィール
三重県出身。1987年にデビュー。ドラマ『踊る大捜査線』シリーズなど、テレビ・映画・CMなどで活躍するかたわら、2007年には脚本家・楠野一郎と演劇ユニット・プロペラ犬を旗揚げした。最近の出演舞台に『神様とその他の変種』(2009)『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ』(2009)など。「プロペラ犬」の第三回公演『サボテニング』が11月26日(木)から上演される。
公演情報
プロペラ犬第3回公演『サボテニング』
【東京公演】11 月 26 日 (木)∼12 月 6 日 (日)
会場:赤坂RED/THEATER(東京都港区赤坂3-10-9 赤坂グランベルホテルB2F)
作:楠野一郎、演出:倉持 裕
出演:水野美紀、猫背 椿、福田転球
地方公演
【佐賀公演】12/9(水) 会場:佐賀市文化会館 中ホール
【大阪公演】12/11(金) ∼ 12/13(日) 会場:HEP HALL
【いわき公演】12/16(水) 会場:いわき芸術文化交流館アリオス 小劇場
【仙台公演】12/17(木) 会場:仙台市青年文化センター・シアターホール
【盛岡公演】12/19(土) 会場:盛岡劇場メインホール
厳選シアター情報誌
「Choice! vol.12」2009年11月号
厳選シアター情報誌「Choice!」は都内の劇場、映画館、カフェなどで無料で配布されており、毎号、演劇情報や映画情報を厳選して掲載。注目のアーティストをインタビューする連載“Artist Choice!”の他にも、演劇ジャーナリストの徳永京子氏による演劇レビュー、ライターの相田冬二氏による映画レビューが連載されています。
演劇ジャーナリスト・徳永京子氏による演劇レビュー
Stage Choice!ラインナップ
・『フェスティバル/トーキョー09秋』
・『海をゆく者』
・『赤鬼/農業少女』
・『フロスト/ニクソン』
ライター・相田冬二氏による映画レビュー
Cinema Choice!ラインナップ
・『わたし出すわ』
・『母なる証明』
・『パリ・オペラ座のすべて』
・『アバンチュールはパリで』
Extra Choice!
・映画『曲がれ!スプーン』公開記念3ヶ月コラボ企画 第三弾
本広克行監督×上田誠(ヨーロッパ企画)対談