骰子の眼

cinema

東京都 千代田区

2011-08-12 15:20


[CINEMA]『ツリー・オブ・ライフ』クロスレビュー「どこにでもある家族の記憶を壮大な天文学的スケールの映像を交え描く」

今年のカンヌ映画祭パルムドールを獲得、テレンス・マリック監督がアメリカ郊外の原風景と超自然的なビジョンを交錯させる。
[CINEMA]『ツリー・オブ・ライフ』クロスレビュー「どこにでもある家族の記憶を壮大な天文学的スケールの映像を交え描く」
(c)2010. Cottonwood Pictures, LLC. All rights reserved.

テキサスの小さな街を舞台に展開する、厳格な父と息子たちの確執や母親から注がれる愛情を細やかに描いたパート、そして新大陸を発見したイギリスの冒険家ジョン・スミスとインディアンのポカホンタスを壮大な自然とともに描いた前作『ニューワールド』から続く、生命の進化と神秘について超自然的に映像化したパートを織り交ぜるテレンス・マリック監督のタッチは、それぞれ既視感がありながらも、ふたつが融合することでこれまで感じたことのない映画体験となる。この作品を単なるニューエイジな環境映画でもなく、必要以上に哲学を語ろうとする子供たちが登場するような無理のある設定のファミリーものでもなくしているのは、双方の世界の一見難解に見える関係性が、テレンス・マリックの頭のなかで厳密に決定されているのだという圧倒的な説得力があるからであろう。

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(c)2010. Cottonwood Pictures, LLC. All rights reserved.

ショーン・ペン演じる大人になった長男ジャックが超高層ビルのモダンなオフィスに物憂げに佇む姿と、若き日のジャックが兄弟たちと無邪気に戯れるサバービアの風景とが織りなす不安感は、音楽への道を諦め切れないものの、社会的な成功を目指し仕事に邁進する父親ブラッド・ピットへの愛憎入り交じる気持ちを見事に表している。ジェシカ・チャステイン扮する母親が醸しだす、自然と一体化したような透明感も忘れがたい。そしてジャック、RL、スティーヴという3人兄弟が、自分たちを取り巻く世界への限りない興味と父母からの教えの間で葛藤する姿の重さ。当たり前のことだが、そうした俳優たちの堅実な演技のアンサンブルは、どんなCG技術もかなわないということもまた、この作品は伝える。

▼『ツリー・オブ・ライフ』予告編





『ツリー・オブ・ライフ』
8月12日(金)全国ロードショー

監督・脚本:テレンス・マリック
プロデューサー:サラ・グリーン、ビル・ポーラッド、ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、グラント・ヒル
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
アメリカ映画/カラー/ヴィスタサイズ/SRD
The Tree of Life
上映時間:2時間18分
公式サイト


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