骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2012-05-23 23:17


「愛」って「愛される」って果たしてイメージするほどいいものかしら

アルモドバル監督がめくるめく展開で愛情を欲し突き進む男を描く『私が、生きる肌』クロスレビュー
「愛」って「愛される」って果たしてイメージするほどいいものかしら
映画『私が、生きる肌』より Photo by Lucía Faraig (C) El Deseo

ペドロ・アルモドバル監督がフランスの作家ティエリー・ジョンケのミステリー『蜘蛛の微笑』を原作に描く今作は、ここ数年の熟練した語り口から、初期の型破りなストーリーテリングと、鮮やかな映像感覚へと回帰した作品として海外での公開以来、注目を集めていた。そこには、監督が初期作品で多くタッグを組んでいたアントニオ・バンデラスを約20年ぶりに主演に起用したことの効果は外せない。妻の死に直面し、自分の妄想を現実のものとするために奔走するマッド・サイエンティストのような形成外科医を熱っぽく演じている。

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映画『私が、生きる肌』より Photo by José Haro (C) El Deseo

物語の筋書きだけを追ってみると、こんなことありえない!と思ってしまうほどの展開ながら、これをアブノーマルな志向や奇天烈さを前面に出すのではなく、極めて優美なラブストーリーとして構築してしまうところはアルモドバル監督のまさに真面目。主人公の住む家のインテリア・デザインや、ジャン=ポール・ゴルチエの衣装など、隅々にまで気が配られた色彩設計もその格調の高いムードに大きな役割を果たしている。常に観る者の倫理観を揺さぶるアルモドバル監督の作風が全開だ。

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映画『私が、生きる肌』より Photo by José Haro (C) El Deseo



映画『私が、生きる肌』
2012年5月26日(土)TOHOシネマズシャンテ、シネマライズ他全国ロードショー

天才的な形成外科医ロベル・レガルは、神をも恐れぬ男だった。12年前に最愛の妻を失った悪夢のような出来事をきっかけに、あらゆる良心の呵責から解き放たれた彼は、倫理的に危うい遺伝子実験に没頭し、妻を救えるはずだった“完璧な肌”の研究に心血を注いできたのだ。その実験が最終段階に差しかかった頃、ロベルは監禁した“ある人物”の肉体に開発中の人工皮膚を移植し、ベラ・クルスという亡き妻そっくりの美しき女性を創り上げていくのだった……。

監督:ペドロ・アルモドバル
出演:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス
2011年/スペイン/120分/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
公式サイト:http://www.theskinilivein-movie.jp/




▼『私が、生きる肌』予告編



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