骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-08-31 15:00


倫理とは与えられるものではなく、自分で創りあげるものである

除草剤でも死なない作物を作る多国籍企業の危険を追う『モンサントの不自然な食べもの』クロスレビュー
倫理とは与えられるものではなく、自分で創りあげるものである
映画『モンサントの不自然な食べもの』より

毎日の食卓で食事の準備をする際に必ず目にする「遺伝子組み換え不使用」の文字。しかし、それがどういった意味を持つのか、そして遺伝子組み換え作物が具体的にどのように危ないのかを知ることは難しい。この作品は、遺伝子組み換えにまつわる製品を世界で販売するアメリカの企業・モンサント社について、その企業としての姿勢という根本から疑問を投げかける。そのプロセスは、インターネットの検索エンジンを用い、ネット上に公表されている記事や情報を丹念にリサーチしていくことから始められている。この方法についてマリー=モニク・ロバン監督は、自分たちの利益を妨害する研究や訴訟を訴訟により徹底的に妨害するモンサント社からの圧力をかわすためだと説明する。

webdice_monsanto_00010
映画『モンサントの不自然な食べもの』より

こうしたアグロバイオ企業が栄える原因となっているのは、政治家・政権との癒着にある、と今作は糾弾する。種子会社を次々買収し、自らの特許を持つ遺伝子組み換え種子を各地に売り込んでいくなかで、農民たちが自殺に追い込まれていくインドのケースなどを提示しながら、この遺伝子組み換え作物の問題は、食やビジネスの問題を越えて、民主主義の根幹を揺るがす問題であることを強調する。企業の利益が個人の自由や権利よりも優先されることの問題は映画『ザ・コーポレーション』などにも詳しいが、多国籍企業の危険について知るために、そして自らの権利を守るために、TPP参加の是非が議論となっている現在、まさに〈今観るべき〉ドキュメンタリーであると言えるだろう。

webdice_monsanto 00113
映画『モンサントの不自然な食べもの』より



映画『モンサントの不自然な食べもの』
2012年9月1日(土)より、渋谷アップリンク他、
全国順次ロードショー

フランスのジャーナリスト、マリー=モニク・ロバンは、取材で世界各国を飛び回る日々を送っていた。行く先々で耳にする巨大多国籍企業「モンサント社」の黒い噂。その真偽を確かめるために、インターネットを使って情報を集め、アメリカ、インド、パラグアイ、イギリスなど現地に赴き、3年間にわたり証言を集めていった。本作は、「モンサント社」の1世紀にわたる歴史を語ると共に、現在のモンサントとその主張を、多くの証言と機密文書によって検証していく。「1ドルたりとも、儲けを失ってはならない」、その企業体質は、はたしてどんな犠牲を私たちに強いるのだろうか。そして、不利と分かりながら、巨大企業と対峙する学者や農家、多くの証言者たちの生きるための闘いは、わたしたちの闘いでもある。

監督:マリー=モニク・ロバン
カナダ国立映画制作庁・アルテフランス共同製作
原題:Le monde selon Monsanto
協力:作品社、大地を守る会、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク
2008年/フランス、カナダ、ドイツ/108分

▼『モンサントの不自然な食べもの』予告編



レビュー(5)


コメント(0)