骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2014-12-11 20:35


「野外映画フェス」という新たなイベントを創り出し、映画の可能性を拡張する

アップリンク配給サポートワークショップにおいて「夜空と交差する森の映画祭」佐藤大輔さんによるレポート
「野外映画フェス」という新たなイベントを創り出し、映画の可能性を拡張する
「夜空と交差する森の映画祭」当日の様子(ザ・ロックステージ)

2015年1月15日(木)より新期がスタートするアップリンクの「配給サポート・ワークショップ」は、アップリンク配給作品を例に、買い付けから契約、劇場ブッキングと宣伝、上映終了後のビジネス展開までを具体的に知ることができる全12回のワークショップ。そのうち3回は特別ゲストを招き、映画にまつわる様々なテーマを深掘りする。

11月20日にはフリーの映像作家である佐藤大輔さんをゲストに招き、10月4日に開催し大成功を収めた「夜空と交差する森の映画祭」について話を聞いた。

初開催にして1,000人を超える来場者を集めたイベント「夜空と交差する森の映画祭」の主宰者である佐藤さんは、無い物はなんでも自分で作るという根っからのクリエイター。豊富なアイデアと持ち前の行動力を生かし、ユニークな企画や映像を製作し発信している。そんな佐藤さんが、数年来夢に描いてきたのが、屋外に複数のスクリーンを設け、様々なジャンルの映画を楽しむ「野外映画フェス」である。


「映画フェス」という新たな映画体験

夏場には日本各地でも賑わいをみせる「音楽フェス」は、複数のステージを行き来することで、お目当てのバンド以外にも好きな音楽を「発見」する楽しみがあります。映画にもそんな偶然の出会いの場を提供したい、という想いが「フェス」に拘った理由です。さらに、作品それぞれに合った環境に身を置いて映画を体験する、例えば寝転んで星空を眺めながら、岩場に座って川音をBGMにといった演出が、映画館や自宅で観るときとは異なる感情を呼び起こすことができるのではないかと思っています。

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アップリンクの「配給サポート・ワークショップ」に登壇した「夜空と交差する森の映画祭」佐藤大輔さん

かつてない映画体験を提供するために、会場選びは時間をかけて慎重に行いました。30カ所以上見学した末、アクセスの良さや、充実した施設、地形の起伏の豊かさに優れた長瀞に決めました。

シネフィルの少ない映画祭

ありがたいことに、積極的に情報発信する前からボランティアとして手伝いたいという人が集まってきてくれました。チケットも好調に売れたのは、ホームページやプレスリリースの打ち出し方が、特に若い女性に受け入れられたお陰かもしれません。それにしても上映ラインナップがほぼ発表されていない段階でチケットが売り切れてしまったことからも、ただ映画に関心があるというだけではなく、この屋外イベントに期待して購入してくれた人の多さがうかがえました。根っからの映画ファンの方々の参加は少なかったと思います。
この出来事をはじめ今回の成功から、イベント主宰者としても、映像を作る者としても、映画の未来に大きな可能性を感じています。

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「夜空と交差する森の映画祭」の様子(フォレストステージ)
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「夜空と交差する森の映画祭」の様子(メインステージ前)

クラウドファンディングの手ごたえ

資金調達にCAMPFIRE(キャンプファイヤー)というクラウドファンディングのプラットフォームを利用しましたが、当初は資金獲得よりも広報宣伝の一環として考えていました。しかし当初の予算計画が甘かったので、クラウドファンディングからの資金がなければ、赤字となりイベントが成り立たなかったかもしれません。反響は大きく目標額の40万円に1ヵ月足らずで達することができました。パトロンとなってくれた方々とこまめにコミュニケーションをとることで、このプロジェクトに期待し、暖かく見守っていただけたと実感しています。

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「夜空と交差する森の映画祭」当日の様子(リバーサイドステージ)

雨の中でも続けられる五感を揺さぶる映画フェスを目指して

実は第1回イベントは、台風が接近してきたため、プログラム終了間際でやむなく全員が屋内に避難しました。苦しい決断でしたが、迅速な対応は正しかったと思っています。
将来は、雨の中でも上映を続けられるような環境を整え、より体験型の五感を揺さぶる映画フェスを目指したいです。

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「配給サポート・ワークショップ」より。「夜空と交差する森の映画祭」ではメインステージ、フォレストステージ、ザ・ロックステージ、リバーサイドステージの4つのスクリーンで47本の作品を上映した

配給サポート・ワークショップの参加者は、現役の映画監督や年間900本以上の映画を鑑賞する猛者から、映画業界とは無縁の大学生やビジネスパーソン、ボランティア活動で映画館運営に関わる主婦など、年齢も経歴も様々な約50名が参加しており、熱心に佐藤さんのお話に耳を傾けた。

質疑応答では「なぜ夏場でなく肌寒い10月に開催したのか」「予算計画のどの辺りの見積もりが甘かったのか」「将来的には法人化していくつもりか」等々、突っ込んだ質問が飛び出した。中でも、1,000人規模の初開催のイベントを、ほぼボランティアスタッフのみで運営できた秘訣は誰もが知りたかったところ。佐藤さん曰く、各分野のプロフェッショナルがボランティアとして参加してくれ、各チームを引っ張ってくれたのが大きかったようだ。

ワークショップ終了後は佐藤さんを囲んだ食事会へと自然と移行し、未来の映画フェス談義に話は尽きなかった。

(文:眞島杏子)



【関連記事】
[TOPICS]来年は行ってみたい!森の中の映画フェス(2014-11-01)
http://www.webdice.jp/topics/detail/4454/




第32期配給サポート・ワークショップ
2015年1月15日(木)スタート、参加申込受付中

アップリンク配給作品をケーススタディとして
多様な世界の価値観を伝えるアート系映画配給の今を知る

期間:2015年1月15日~2015年6月
時間:19:30~21:30
(隔週木曜日、全12回+懇親会 事前告知による日程変更あり)
会場:UPLINK FACTORY(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)
定員:50名(年齢・経験は問いません)定員に達し次第、募集を締め切ります
参加料:現金・クレジット60,000円/銀行振込60,000円+振込手数料
ナビゲーター:浅井隆(アップリンク社長)
詳細・お申込みは下記ページをご確認ください
http://www.uplink.co.jp/workshop/log/001115.php

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