骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2014-12-04 17:08


インド映画歴代の世界興収を塗り替えた『チェイス!』がやってきた

『きっと、うまくいく』の名優アーミル・カーンがダンス&アクションをスタントなしで熱演
インド映画歴代の世界興収を塗り替えた『チェイス!』がやってきた
映画『チェイス!』より ©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.

日本でも大ヒットした『きっと、うまくいく』で主役を演じたアーミル・カーンが金庫破りの達人という裏の顔を持つ「インド大サーカス団」の団長を演じる本作は、世界マーケットに照準を合わせた結果、歴代のインド映画の興収を塗り替えている。
世界でヒットするための共通言語である犯罪とアクション、そして復讐というわかりやすいキーワードで構成され、インド映画お得意のダンスシーンも劇中のサーカス団での舞台のダンスという設定で、違和感なく映画に溶けこませている。
また、インド映画の泥臭さに全編シカゴロケという事でハリウッド映画のテイストを加え、お正月映画として何も考えずに観て楽しめる作品に仕上がっている。さらに本作はバイク映画として楽しめる作品で、BMWのK1300RとS1000RRを使用しての現実にはあり得ないバイク・アクションも見所の一つ。
以下にハリウッドのスタッフとともにアクション大作を完成させたヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督のインタビューを掲載する。

心のもろさを表現したアーミル・カーンの演技

──主演を務めるアーミル・カーンのの役どころについて教えてください。彼の演技については満足していますか?

アーミル・カーンはシカゴのサーカス団を率いる天才的なマジックの才能を持つスター、サーヒルを演じた。アーミル・カーンが主人公を演じたことで、本作はアクション映画の枠を超え、ドラマ性の強いものとなった。彼は主人公の強さと弱さを見事に演じてくれたよ。これは私が期待したとおりだ。サーヒルはタフで力強く、世慣れており、頑固な人物だ。その一方で、胸の内には人知れず悩みを抱えている。アーミルは心のもろさを表現し、この役に奥行きを与えてくれた。実に巧みにリアルな形で演じてくれて満足している。

『チェイス!』ヴィジャイ監督
映画『チェイス!』のヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督

──アクション・シーンが多彩ですが、こだわった点や苦労した点について教えてください。

アクションの撮影はいつだって難しい。映画で見せる世界は現実には起こり得ないからだ。とはいえ劇中で起こる事象をリアルに感じてもらうため、映画の世界を作り込んでいく。スピードを伴う撮影ではハプニングは付き物だが、できるだけカメラで撮影し、古いスタイルにこだわりたい。バイクの逃走やカーチェイスは実際に人間が行っている。私としてはCGに頼るだけのアクションではなく、骨太なシーンを実際に撮影し、見応えのある世界を表現したいと思っている。

当然ながら苦労は多かった。例えばシカゴの川にかかる橋を封鎖する必要が生じた。現場で こうした問題が起こることもあったが、経験豊富なアクション監督や、撮影チームに助けられた。現場には優秀なスタントマンもいたので、スムーズに仕事ができ、いい撮影ができた。

──ダンスシーンでこだわった点や苦労した点は?

インド映画の娯楽作品においてダンスは極めて重要な要素だ。常に新しいものが求められる。ありふれたダンスでは観客が退屈するからだ。脚本にサーカスを描いたのは幸運だったと言っていい。シルク・ドゥ・ソレイユのようなサーカスを映画にしたかった。それをミュージカル仕立てにする。インド人はミュージカルを得意としているからね。ただし物語の舞台はシカゴに設定した。サーカスを映画にするのは新たな挑戦ではあったが、適材適所に有能な人材を割り当てれば不可能ではない。アクションとサーカスのシーンは、撮影開始の1年前にデザインを終えていた。これなら十分に準備ができる。そうは言ってもハプニングはつきものだ。

映画『チェイス!』
映画『チェイス!』より、サーヒル役のアーミル・カーンが乗るBMWのK1300R ©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.

アーミルがロープを握ったまま客席の上を回るシーンの撮影で、電気系統が故障し宙吊りのまま、下へ降りられなくなった。命綱をしていないからヒヤッとしたが、問題というほどの出来事ではなかった。ちょっとしたハプニングだ。それより脳内のイメージを表現することのほうが、かなりの苦労を伴う。頭の中でイメージした世界を実際に再現するのは難しい。本作ではダンスもアクションもほぼ本人に演じさせている。アーミルとカトリーナはダンス・シーンを演じたが、役者には過酷な試練だったはずだ。『チェイス!』で描いたサーカスの舞台に出るには、最低でも15年はかかる。なのにカトリーナとアーミルは3~4ヵ月でマスターした。大したものだよ。

心のもろさを表現したアーミル・カーンの演技

──シカゴでのロケはいかがでしたか?

シカゴを舞台にしたハリウッド映画は多い。私はあの街の建築が好きだ。建物に野心のようなものを感じる。高層ビルが立ち並び、街を貫くように川が流れる。見た瞬間、私はシカゴの街のとりこになっていた。私の映画の観客の多くはシカゴの街を見たことがなく、シカゴを舞台にしたインド映画もなかった。そんな理由もあって、あの街をロケ地に選んだ。シカゴにはインド人が住んでおり、作品の世界観が街によくなじむ。野心的なシカゴの街には闇があり暗さが漂う。

映画『チェイス!』
映画『チェイス!』より ©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.

──それは本作の世界観に通じる、日本はインド映画ブームですが、インド映画の魅力とは?

インド映画には心がある。いいことなのか分からないが、インド人は頭で考えるより先に心で感じてしまうところがある。インド映画に描かれる感情は人の心をつかんで離さない。それは国を問わず誰の心にも響くものだろう。それに、日本もインドと同じく古代より続く歴史ある国だ。私たちは人の尊厳や誇りを大切にして生きている。本作でも人の尊厳と誇りは極めて重大なテーマなので、皆さんの共感が得られるといい。

私の作品に限らずインド映画はカラフルだ。生き生きとして活気があってとにかく楽しい。午後にほっと一息つきたい時、私たちは映画館に入る。歌やダンスが散りばめられた、映画の世界に浸るんだ。映画が語る世界の多くは誇張されているが、そこには楽しさがある。歌や踊りはインド映画の特徴だ。こんな映画はどこにもない。映画の途中には休憩時間もある。前半では物語の重要な部分を語って、コーヒーブレイクを設けて、後半の世界に戻ってきてもらう。こんなスタイルの映画は世界中探してもないだろう。なじまない客もいるかもしれないが、この60年、インド映画はこのスタイルだ。うまくいってるのだと思う。こんな点がインド映画の特徴であり魅力だ。偏見を持たずに見てもらえば、きっとインド映画が好きになる。

BMWS1000RR
TOHOシネマズららぽーと横浜に展示されている、劇中で刑事ジャイとアリが乗るBMW S1000RR

──最後に、本作の見どころについてあらためて教えてください。

『チェイス!』はアクション映画シリーズだ。日本の皆さんに楽しんでもらえるとうれしい。本作のアクションは他のインド映画と一線を画す。アクション映画でありながら心に訴えかける物語でもある。あなたの心にも残るはずだ。

『チェイス!』は、先見の明があった男の物語だ。それを否定された男の報復の物語でもある。感情を呼び覚まし、人との関係性を描き出している。様々な要素が詰まっているから好きな部分がきっと見つかる。『チェイス!』は娯楽作品だ。ぜひ劇場で楽しんでもらいたい。バイクで疾走するように飛び乗って楽むといい。見たい人も、迷ってる人も何もかも忘れて、大騒ぎしてもらいたいね。皆さんも夢を追いかけてほしい。『チェイス!』が皆さんの心に届く映画であることを願うよ。

(オフィシャル・インタビューより)
映画『チェイス!』
映画『チェイス!』より ©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.



ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ(Vijay Krishna Acharya)
プロフィール

監督業のほか、脚本家、作詞家としても活躍している。助監督の経験の後、2004年『チェイス!』の1作目となる『Dhoom』にて脚本家デビュー。『Dhoom:2』(06)でも脚本を担当し、一躍人気脚本家となる。08年には、アクシェイ・クマール、カリーナ・カプールというスターをそろえたアクションフィルム『Tashan』を監督。本作は監督2作目にあたり、脚本、劇中歌の作詞も担当している。




映画『チェイス!』
12月5日(金)TOHOシネマズみゆき座他全国ロードショー

映画『チェイス!』
映画『チェイス!』より ©Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.

マジックとダンスを融合したゴージャスなショーを繰り広げて、シカゴ中を熱狂の渦に巻き込むサーカス団を率いる、天才トリックスター:サーヒル。その裏の顔は、幼いときに父を破滅に追い込んだ銀行への復讐を誓い、 犯行を重ねる腕利きの金庫破りだった。犯人をインド系と特定した警察は、本国から犯罪検挙率No.1の刑事ジャイとその相棒アリを投入する。しかし、捜査を開始するジャイの前に現れたサーヒルは、人生最大のトリックを隠していた……。

監督・脚本:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ
出演:アーミル・カーン、カトリーナ・カイフ、アビシェーク・バッチャン
提供:日活
配給:日活/東宝東和
原題:DHOOM:3
2013年/インド/147分(インターナショナル版)/シネスコ/ドルビーデジタル

公式サイト:http://chase-movie.jp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/chasemovie2014
公式Twitter:https://twitter.com/chasemovie2014

▼映画『チェイス!』予告編

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