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埼玉県 その他

2016-01-27 10:50


バンドマンがカフェをはじめる理由、埼玉・宮原「bekkan」クラウドファンド実施中

オーナーはポスト・ロック・バンドAureoleの森大地氏、内装はdownyの青木ロビン氏
バンドマンがカフェをはじめる理由、埼玉・宮原「bekkan」クラウドファンド実施中

インディーズ・レーベル「kilk records(キルク・レコーズ)」と、「kilk records」が2013年から運営する埼玉県さいたま市北区宮原のライブハウス「ヒソミネ」、そしてさいたま市大宮のレコード・ショップ「more records」が共同で新たなカフェスペース「bekkan」を2016年3月にオープン。これにあたり現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは「kilk records」「ヒソミネ」のオーナーであり、ポスト・ロック・バンドAureole(オーリオール)のメンバーとしても活動する森大地さんから、今回の新店舗オープンの経緯やショップのコンセプト、そしてクラウドファンディングについてメールでメッセージをもらった。

今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年2月22日までの期間で、100万円を目標に資金を募る。集まった資金は、オープンのための初期費用に使用される。詳細はプロジェクトページまで。

「kilk records」オーナー森大地さん
「音楽好きではない人も訪れるカフェを目指す」

──今回のプロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。

「kilk records」の運営を通じて、音楽にお金を払ってくれる音楽ファンが激減していることをしみじみと感じていました。それをさらにうちのレーベルのような音楽が好きな人に絞るとその数はさらに減ってきます。CDの売上だけで見ても5年前から現在まで平均売上枚数は明らかに下がってきています。それを実感していない音楽関係者はまずいないでしょうね。

森大地(Aureole / kilk records / ヒソミネ)
森大地さん(Aureole / kilk records / ヒソミネ)

現在売れている音楽というのは「支持している人の数が多い」ことで、日本ではそういう音楽が文化を牽引している状態です。kilkの大事な理念の一つに埋もれてしまっている素晴らしい音楽を世に広めていくというのがあるんですが、そのためには音楽に興味のない人にも伝えていくことが絶対に避けては通れない道だと考えました。

その打開策の一つが今回の一般の人が訪れるカフェを作るということです。その中で音楽の素晴らしさを伝えていきたいんです。

少し話が逸れるかもしれませんが、いわゆるアングラな位置にいる良い音楽ってアングラであることがカッコ良くてそれを一般の人に広めようとする姿勢ってどこか「ダサイ」みたいな風潮がありますよね。でも冷静に考えてみると、マニアックな音楽が一般の人々を熱狂させる光景って何て素敵なんだと思うんですよね。そしてそのメインストリームに躍り出たマニアックな音楽を、今度はまた違う新たなマニアックな音楽がシーンを塗り替える、そういう風にしていけば音楽文化はどんどん発展していくのかなと。もちろんこういう音楽が表に出るべきという答えはありませんが、今人々がJ-POPを耳にしているのと同じくらい自然な形でたくさんの種類の感動を味わえる環境が形成できれば最高ですよね。

もしかするとこの話って理想論を述べているだけに聞こえるかもしれませんが(笑)、けどそういう方向に実際に動くというのが大事なんです。ちなみに一つ強調しておきたいのは、一般の人を熱狂させるために音楽そのものを変えるというのは決してしないようにしています。それではこれまでのJ-POPシーンと同じことになってしまいます。音楽以外の伝え方の部分だけを変えるということです。

今回の「bekkan」の立ち上げもそうした「新たな伝え方を考える」ということから始まったプロジェクトだと言えます。

bekkan

──開業を埼玉県さいたま市の大宮宮原にした理由は?

宮原にはkilkが運営しているライブスペース「ヒソミネ」があります。「ヒソミネ」と「bekkan」の2つのお店を同じ駅に構えることで、できることが格段に増えてきます。

例えばヒソミネに来るお客さんや出演者の9割は埼玉以外の方なんですが、その方々にとってわざわざ宮原まで来るもう一つの理由としても「bekkan」は存在意義があると思いました。

さらに大宮にあった「more records」が今回のタイミングで「ヒソミネ」と「bekkan」の店舗内に入りますので、宮原という街で音楽三昧の1日を過ごしていただけることになるかと思います。

bekkan
「bekkan」が入居するビルの外観

あと宮原には熱い人やお店がいっぱいなんです。その方達と街自体を巻き込んだ大きな音楽イベントをやろうという話もしたりします。

──「bekkan」立ち上げにあたり、参考にしたお店はありますか?

お店ではないですが、ページアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグの提唱する「サード・プレイス(家庭や職場・学校での役割から開放され、自分らしさを取り戻せる第三の居場所)」の概念は重要視しています。音楽でもなんでもそうですが、今の時代はコミュニケーションをとっていく中で面白いことが生まれていくと思うんです。それはこれからどんな時代になっても決して変わらないことだろうなと思います。

──内装をdownyの中心人物、青木ロビンさんに依頼した理由は?

元々良くしていただいていまして、センスも人間も好きで全面的に信頼できるからですね。downyも青木さんが内装と運営を手掛ける沖縄の「jiji cafe」も最高です。

jiji cafe
青木ロビンさんが手掛ける沖縄の「jiji cafe」の内装

──音楽好きな人だけでなく、様々な人が訪れるカフェというコンセプトのために、どのようなアプローチを考えていますか?

例えば美容室で美容師さんと仲良くなると、趣味を共有したりしませんか?自分の体験したことでは美容師さんがうちのライブを見に来てくれたこともありました。CDも買ってくれました。逆に美容師さんが良いと言っていた映画を見たこともあります。友達の延長のようですが、それこそ口コミです。これまで僕が貸してあげたCDをきっかけにヘビーな音楽ファンになった学生時代の友人もいます。逆に僕にメタルの良さを力説してくれた従兄弟の兄ちゃん経由でメタル好きになった時もありました。それはお店で言うとレコード屋さんがそうですし、実際にライナスレコードなど僕の音楽人生を彩ってくれたレコード屋さんはたくさんあります。その役割を音楽好きではない人も対象にしたカフェが担ってもいいんじゃないかなと。ただしレコード屋さんと違って気をつけなければならないのは、それ目的で来てない人がほとんどだということです。求められてもいないのにオススメしたりするのではなく、何度か通っていただく中で徐々にそういう関係を築いていくのが理想ですね。

bekkan

そうなるためにはまずカフェとしての確かな信頼を得ることが必須です。食事、雰囲気、店員の対応など。でないとそもそもこの話は始まりません。飲食店経営はそう甘くはありませんし、その点は非常に重要なことだと考えています。

あとは店内でライブ演奏を行う場合、「音量設定」「演奏するアーティスト」の二点にとことんこだわるつもりです。そんな当然なことを何をいまさらというかんじかもしれませんが(笑)お客さんは会話を目的に来ている方も当然いますし、音楽を聞いていなくてもいいんです。食事を楽しむ中で自然と生演奏が始まって「あまりにリアルなBGM」というくらいでも構いません。その環境の中でお客さんの耳を惹きつけるのはアーティストの力量次第ですね。もちろんジャンルによっては向きませんし、僕のやっているAureoleもまず向かないと思います(笑)。それもあって「演奏するアーティスト」はこちらでじっくり選定させていただこうかと思っています。

他には店内でかける音楽をすぐに購入できるシステムもきちんと整えることですね。本日の店内プレイリストの紙を配布したりとか。

どれも非常に原始的なことばかりです(笑)。断言しますが決して革新的ではありません。ですがそれこそが日本のインディー・ミュージック・シーンに足りていなかった大事なことではないかと思うんですよね。


more records
more records

──最後に、リターン商品のなかでお薦めを教えてください。

「ヒソミネ × kilk recordsのコラボレーションTシャツ」「bekkanオリジナルのノベルティー工房ことりのミニカップ」「青木ロビン氏と沖縄の洋裁屋dreamiデザインによる特注制作のスタッフ用オリジナルサロン」「jiji cafeデザインの特注のお皿3枚セット」この4商品はかなりオススメです。どれもデザインがとんでもなく良いです。自分なら買います。しかもこれならけっこうな額を出してもいいと思いますよ(笑)。

bekkan
80,000円以上の協力で進呈される「jiji cafeデザインの特注のお皿3枚セット」

特殊なものとしては「バンド、アーティスト、企業向けコマーシャルプラン」「more records奈良輝臣とAureole森大地チョイスの中古CD詰め合わせと解説コメント集」「more records奈良輝臣とkilk森大地があなたの音楽ライフの成功のため2ヶ月間全力サポート」「Aureole森大地の高校生~20代の頃に作った未発表デモや最近の宅録デモを集めた音源集」あたりもオススメです。


bekkan map

「bekkan」MotionGalleryプロジェクト・ページ:
https://motion-gallery.net/projects/bekkan


▼インディーズミュージックに未来を!kilk×ヒソミネ×more recordsが作るコミュニティカフェ「bekkan」

キーワード:

morerecords / bekkan / motiongallery


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