骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2019-05-21 07:30


【全文掲載】町田樹が語る映画『氷上の王、ジョン・カリー』とフィギュアスケートの未来

令和のスター・フィギュアスケーターの条件は「AIに支配されない演技ができること」
【全文掲載】町田樹が語る映画『氷上の王、ジョン・カリー』とフィギュアスケートの未来
映画『氷上の王、ジョン・カリー』ジャパンプレミアに登壇した町田樹さん(左)、宮本賢二さん(右)©坂田正樹

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー映画『氷上の王、ジョン・カリー』のジャパンプレミアが5月9日、新宿ピカデリーで開催。上映後のトークコーナーでは、元フィギュアスケート選手でこの作品の字幕監修・学術協力を担当した町田樹さん、そして髙橋大輔さんや羽生結弦さんらトップスケーターの振付師として活躍する宮本賢二さんが登壇した。町田さんはカリーの魅力をはじめ、競技としてだけではない総合芸術としてのフィギュアスケートのあり方や令和に向けてのヴィジョンなど、自身の現役時代の経験を交えながら熱く語った。webDICEではおふたりによるトークの模様を全文掲載する。

スケーターの身体の美しさを極めた人物(町田)

──お二人は本作をご覧になってどんな感想をお持ちになったのでしょうか?

町田:まずなんといっても、ジョン・カリーというスケーターの身体の美しさですね。本編でも描かれていたと思いますが、彼はフィギュアスケーターと同時にバレエダンサーも志した人なのです。ですから、フィギュアスケーターとバレエダンサーというデュアルキャリアを歩んだ者にしか体現できない「美」を、ジョン・カリーが氷の上で体現していたことが、この映画から凄く伝わってきました。スケート靴を履いた人間が美しく映える身体のフォルムというものを、熟知していた人だと思いますね。

宮本:私が注目したのは、スケート自体の美しさ。力を入れずにスーッと滑るところが、簡単にマネはできないな、と。また、スケートへの情熱によって、ジョン・カリーがいろんな困難を乗り越えていく姿がとっても印象的でした。

──町田さんは今回、字幕監修・学術協力という形で本作に関わっていますが、これはどういう経緯でお話が来たのですか?

町田:かつて『Kiss & Cry』(東京ニュース通信社)という雑誌で、良質なフィギュアスケート作品を批評する「プログラムという宇宙」という連載を持っていたことがあるのですが、記念すべき第1回目に「誰を選ぼうか?」と考えたときに、すぐにジョン・カリーのことが頭に浮かんだのです。そのコラムを本作の配給会社であるアップリンクさんが注目してくださっていて、今回、お声をかけていただきました。

映画『氷上の王、ジョン・カリー』
映画『氷上の王、ジョン・カリー』ジャパンプレミアに登壇した町田樹さん

──数あるスケーターの中から、なぜジョン・カリーが町田さんの頭の中に最初に浮かんだのでしょう?

町田:芸術としてのフィギュアスケート作品ということを考えて、フィギュアスケートを通史で見ると、やはり、パッとジョン・カリーの名前がきらめきます。実はジョン・カリーとは不思議なご縁があって、ジュニア時代に初めて優勝した国際大会が、イギリスのシェフィールドで行われた「ジョン・カリー・メモリアル」大会(2007年10月18日~21日に英国シェフィールドで開催)だったのです。ジュニアグランプリで唯一優勝できた大会がそこで、私とジョン・カリーの歴史はそこから始まっています。さらに、私が『エデンの東』や『火の鳥』を踊ったときに振り付けをしてくださったフィリップ・ミルズ先生は、ジョン・カリーの先生のカルロ・ファッシさんのお弟子さんだったのです。カルロ・ファッシさんがフィリップ・ミルズ先生をバレエ界からフィギュアスケート界に招聘して、フィギュアスケートの振付家に育てたということもあって、ミルズ先生からカリーのことを聞いたりもしていました。

──いとこくらいの近さですかね(笑)、縁浅からぬ関係だったんですね。

町田:そうですね。さっき、この映画の配給をしているアップリンクさんとのメールの履歴を確認しましたら、この映画のプロジェクトが始まったのが昨年の8月でした。そこからずっと映画の字幕監修とかパンフレットにも寄稿させていただいたり、そういうお手伝いをして、約半年以上経ってしまいました。ですから、本当に今日この日を心待ちにしていました。

“完璧主義者”としての思いがスケートに出ている(宮本)

──字幕監修は初めて?

町田:初めてでした。字幕というのは短いシーンの中に視認性を高めた状態で(言葉を)入れていかなければならないので、一つのワードでいかに多くを伝えるかを意識しました。ベースは字幕の制作者が翻訳してくれていたので、フィギュアスケート用語を中心に、シーンに合うように編集させていただきました。

──宮本さんはジョン・カリーとは何か接点などおありですか?

宮本:僕も何か語りたかったんですが、名前くらいしか知らなかったので、何も(エピソードが)ないんですよね。それにしても「町田くんは綺麗にしゃべらはるなぁ」と隣で感心しながら聞いていました(笑)。

──今回改めて、映像を通して見てみると、ジョン・カリーという選手に対してどのような印象を持たれましたか?

宮本:完璧主義者という感じですね。「1つの狂いも出さない」という思いをスケートに出しているな、という印象です。本編の中でいうと、最初の『ドン・キホーテ』などは、スキッドの角度が最後、絶対にズレがないんですよね。その角度が高いと止まるタイミングが早くなるのですが、彼は曲に合わせて角度が浅いところから入って音で終わらせる。バックアウトから入るというか、スキッドも完璧にこなしているので、凄いなと思いましたね。

映画『氷上の王、ジョン・カリー』
映画『氷上の王、ジョン・カリー』ジャパンプレミアに登壇した宮本賢二さん

町田:彼の伝記を読んでいると、1976年のインスブルック冬季五輪の金メダルを、自作のプログラム『ドン・キホーテ』をノーミスで演技することで獲得しています。しかも、その前の練習でも約1ヶ月間、ずっとノーミスだったそうです。普段の練習からミスをせずに完璧なまま本番を迎え、そして金メダルを獲ったのです。例えば、私は2014年の世界選手権大会で銀メダルだったのですが、あのシーズンに1ヶ月間ノーミスし続けろと言われたら……「LOTO6(ロトシックス)」を当てるくらい難しいですね(笑)。彼は「絶対的な自信があった」と語っていますが、練習に裏打ちされた結果と美、ということですね。

──そういえば先日、フィギュアスケートの専門雑誌『ワールド・フィギュアスケート』(新書館)で、「町田樹セレクション・スペシャルアワード」という新たな連載をスタートさせたそうですね。「独断で勝手に賞を贈るアワード」というコンセプトだそうですが、もしもジョン・カリーに贈るとしたら、町田さんはどんな賞を贈りたいですか?

町田:いろいろと考えてみたのですが……「ポラリス賞」というものを贈りたいですね。ポラリスとは北極星のことなのですが、不動の基点として輝いている人、つまり、ジョン・カリーはフィギュアスケーターの誰もが目標とすべき指標だと思います。よく文学作品や芸術の分野では偉大なる作品を「キャノン」という言い方をしますけれども、まさにジョン・カリーの生み出した作品は「キャノン」と言えるかと思います。皆が目指すべきであり、学ぶべき「作品」だと思います。

“音楽をビジュアライズする”をモットーに(町田)

──本編の中に出てくるプログラムの中で、何が一番印象に残っていますか?

宮本:後半の方に出てきた『ムーンスケート』ですね。僕の表現が合っているかどうかわからないですが、スケートは音楽と一緒に滑って、相乗効果によって美しくなるものなんですが、このプログラムに関しては、一瞬の深い演技で、音楽を忘れ去る、あるいは音が消える、そんなイメージを持ったんですね。「こんな表現の仕方があるんだ!」と思って、かなり印象に残りましたね。

町田:どれも印象深いのですが、あえて言えば『牧神の午後』と、本編には出てきませんが、トワイラ・サープ振付の『アフターオール』の2作品を挙げたいと思います。『牧神の午後』は、バレエ界の巨匠ニジンスキーが振り付けをした有名な作品ですが、これにインスピレーションを受けて、『ロシュフォールの恋人たち』という映画で振り付けを担当したノーマン・マアンと一緒にカリーが作ったプログラムです。この作品は今でもいろんなスケーターに影響を及ぼしていて、その振りはよく引用されています。もちろん、私も自作振付の作品の中で、この『牧神の午後』から引用させていただいた振りは何個もあります。また、『アフターオール』という作品は、最初にコンパルソリーから始まって、次第に踊りになっていくという構成となっており、フィギュアスケートの身体の美、フォルムが目白押しです。この1作を見ただけで、フィギュアスケートで味わうことのできる身体美やフォルムの全てを堪能することができます。

映画『氷上の王、ジョン・カリー』 © New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018
映画『氷上の王、ジョン・カリー』 © New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

──お二人とも振り付けをされていますが、町田さんが「フィギュアスケートは、アーティスティック・スポーツだ」とおっしゃっているように、芸術とスポーツ、どちらの側面もあります。その二つの兼ね合いの中で、これまでどのように振り付けを考えてこられたのでしょうか?

町田:私が自分で振り付けをしたのは、競技会のプログラムではなくて、主にエキシビションやアイスショーのプログラムなのですが、そのときに最も意識したのは、優れた音楽をいかに視覚化するか、というところですね。そのために、音楽が目に見えるように振り付けを考えましたし、動作の全てが音楽に動機づけられたものとなるよう構成していきました。スケーターの身体から音楽が奏でられているかのように表現する方法もあれば、音楽のコンセプトを抽出してそれを氷上で体現する方法もあり、いろいろな形があると思いますが、私の場合は、「音楽をビジュアライズする」ということをモットーに振り付けしていました。

──宮本さんはどのように振付をされているのでしょうか。

宮本:そうですね、現役選手でいうと、基本的に点数が高くなるように、選手がもっと綺麗に見えるように、ジャンプが高く跳びやすくなるように、選手個々の状態を見ながら1つでも順位があがる、点数が出る、というものを振付師として考えます。例えば、髙橋大輔選手のエキシビジョンで『ラブレター』というのがあるんですが、彼が膝を痛め、手術をして大変な状態の中でがんばっている姿をずっと見ていたので、その体験をプログラムの中に入れて、その1曲で辛かったときの姿を見てもらいたいな、という思いで振り付けしました。

──なるほど、そういうところまでストーリーに落とし込むわけですか。

宮本:そうですね。例えば、羽生結弦選手の『天と地のレクイエム』なら、震災によって本当に大変な状況のときに、一歩ずつみんなで、少しでも前を向いてがんばっていきましょう!というメッセージを込めて作ったので、そういう思いを見ていただければという感じで作りました。ただ、そのプログラムを見てどう思うかは、あくまでもその人の自由なので、それぞれの見方で楽しんでいただければとは思っています。

──今、お二人から振り付けについて、それぞれの思いをお聞きしましたが、ジョン・カリーのカンパニーにいたローリー・ニコルさんは、髙橋選手や浅田真央さんなど、日本人選手の振り付けもしています。現在、活躍している選手たちが、ジョン・カリーから脈々と受け継いでいるものがあるとすれば何だと思いますか?

町田:やはり、フィギュアスケートは、「スポーツであると同時にアートやエンタテインメントである」ということを、誰もが当たり前のように言える今の状況があるのは、やはりジョン・カリー世代の頑張りのおかげなのかなと思いますね。本作でも描かれていましたが、1960~70年代は、男が優雅に踊ることが許されなかった、偏見があった時代。ジャネット・リンさんはみなさんご存知だと思いますが、女性スケーターは優雅に滑っていたのですが、男性スケーターにとっては難しかった。そんな偏見と戦い、そして打ち破った人がジョン・カリーなのです。私もプロとして活動していた頃は、ジョン・カリーの意志を継ぐという意味でも「フィギュアは芸術である、舞踊である」ということをなんとか社会に発信できないかと、そういう熱い思いを抱きながら、作品の創作と実演に取り組んできました。ですから、ジョン・カリーは私にとっても「ポラリス」なのです。

氷上の王、ジョン・カリー
映画『氷上の王、ジョン・カリー』 © New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

──今のフィギュアスケートを知っている人たちにとっては、逆に優雅でないスケートってイメージしにくいですよね。

町田:そうですね。昔は、男性スケーターなら、スピードをつけていかに豪快にジャンプを跳んでいくか、というところにフォーカスが当たっていたと思いますが、実際に同時代のアーカイブを見ると、「こんな世界でジョン・カリーはがんばっていたんだ」という感じが際立っていました。なんというか、特異な存在でしたね。ただ、彼だけがアートとしてのフィギュアスケートを追求したわけではなくて、同時代ではトーラー・クランストンというカナダのスケーターがいて、ジョン・カリーとはまた違ったアプローチでエンタテインメントやアートのフィギュアスケートを追求していました。また少し後の時代には、ロビン・カズンズという選手が1980年レークプラシッド冬季五輪男子シングルで金メダルを獲得し、彼もまた、自身のスター性を生かしてジョン・カリーの意志を受け継ぎながら、エンタテインメント・ビジネスをスケートの世界で起こしている。さらに1984サラエボ冬季五輪では、アイスダンスでジェーン・トービル&クリストファー・ディーンが伝説的な『ボレロ』を踊りました。1970~80年代は、まさにイギリスのフィギュアスケート界は革命児の宝庫だったのです。

スケートはいろんなジャンルとコラボが可能(宮本)

──宮本さんは、今につながるジョン・カリーの意志の継承について、どのようにお感じですか?

宮本:やはり、先ほどから名前が挙がっている浅田真央さんや羽生結弦選手などもそうですが、人を惹きつける演技力、それからスケートの伸びですね。力を入れずに滑る──どうやってスピードを出してるんだろうといつも思いますが──そういった技術的なものも受け継がれているんだろうと思います。

──ジョン・カリーから受け継がれたものが、こうして未来につながっていくんですね。宮本さんは7月に開催される源氏物語をフィギュアスケートで演じるという髙橋さん主演のアイスショー『氷艶』に振付で参加されていますね。こういったさまざまなジャンルでのコラボレーションなどの広がりについてどう思われますか?

宮本:なんというか、面白いんですよね。歌舞伎や舞台、バレエやミュージカルなどいろいろありますが、普通、ポーズを取ると動けないじゃないですか。ところがスケートはポーズを取っても移動はできるんですよね。そうなると、360度回ってお客様に演技を見せられる、ということもできるので、いろんなジャンルの方とコラボしたいなと思っています。

──本作の監督ジェイムス・エルスキンは、「この映画を作るにあたり、ジョン・カリーの映像を見て感動した。ステージパフォーマンスというものは人の心を強く震わすことができるが、たった一瞬で過ぎ去ってしまう。映像に残せば、歴史としてアーカイブできるし、この先も感動を呼び起こすことができる」と話しており、次はジョン・カリーのドラマ版も企画しているそうです。この動きは素晴らしいことだと思いますが、町田さんはどう思われますか?

町田:おそらく今、活躍している競技者に、「ジョン・カリーって知ってる?」と聞いたら、これは推測ですが90%は知らないと答えると思います。今見てもジョン・カリーという人の演技から学ぶべきことは山のようにあるので、過去の偉人の映像はちゃんと残していくという試みが、めぐりめぐって今のフィギュアスケート界の普及だったり、振興だったりにつながるはずです。そういった意味で本作は、フィギュアスケート界において、完全なドキュメンタリー映像だけで構成された最初の事例になるかもしれない。世界的に注目されている映画だと思います。また、エルスキン監督も映像で残すことが大事だとおっしゃっていますが、本当にフィギュアはもとよりスポーツ全てがそうなのですが、人間の身体運動って映像でしか記録できません。そういった意味で映像のアーカイブを構築していくことが、今後のフィギュアスケート界の課題だと考えていますし、私も取り組んでいきたいことのひとつです。

スポーツなので記録は残っていくものですが──例えば◯◯のオリンピックの優勝者が◯◯で、何点獲得して金メダルを獲った、という記録はバシッと残ります。でも映像が残っていなかったら、誰がその価値を認識することができるのでしょうか。現状のルールでは300点超えすると「凄い」と大騒ぎになりますよね。今の我々にはその価値がわかりますが、では30 年後にタイムスリップしてみましょう。そのときにもし、「◯◯の演技が300点だった」といっても、映像が残っていなかったら「?」ですよね。それって何も残していないのと一緒ですよね。

フィギュアスケートというのは競技である以上、点数化して優劣をつけることは必然なのですが、それを映像としてちゃんと残し、それとともに演技に対する言葉や情報を添えてアーカイブしていくことが一番大切なことだと考えています。その意味でもこの映画は本当に価値があると思っています。こういうアーカイブが積み重なったところに、フィギュアスケートの文化が立ち上がっていくのではないかと思っています。

映画『氷上の王、ジョン・カリー』 © New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018
映画『氷上の王、ジョン・カリー』 © New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

「技術を使って何を表現したいか?」が重要(町田)

──時代はいよいよ平成から令和に変わりまして、伊藤みどりさんが世界選手権で日本初の金メダルを獲得したのが平成元年、そして昨年、平成の終わりに羽生選手が五輪連覇を果たしました。ある意味「平成」というのが日本のフィギュアスケートの隆盛とリンクしていると言えますが、これから、令和のフィギュアスケートはどうなっていくとお考えですか?

宮本:4回転半とか、5回転の時代は来るでしょうね。ただ、技術を上げた分、芸術性も上げていかなければならないので、そこがまた難しくなるんだろうなと思いますね。

町田:宮本先生がおっしゃるように、技術は間違いなく進化すると思います。ただ、考えなくてはいけないのが、「その技術を使ってあなたは何を表現したいのですか?」というところ。振付師も競技者も、それを頭に置いておかないと、ジャンプを競い合うだけのものになってします。また、競技のほうで言うと、今後間違いなくAIが深く関与してくると思います。体操界ではAIで採点ができるように開発が進められているのですが、その技術をフィギュアスケートにも応用したい、と開発者の間でも言われているようです。オリンピック競技になっている以上、勝ち負け、優劣は、客観的に決められなければなりません。ただ、AIが好む演技ばかりしていると、機械的な表現になってしまうので、面白くなくなってしまう。なので、私は令和のスター・フィギュアスケーターの条件は、「AIに支配されない演技ができること」、そういう人がスターのポジションにつけるのではないかな、と考えています。もちろん、AIを批判しているのではなく、例えば今、回転不足なのか否かとか、スピンのレベルが取れているのかいないのか等、色々議論があって、そういった判定に対して社会でもいろんなアクションが起こっている状態です。今のルールだと採点方法がテクニカルスコア(技術点)とPCSスコア(構成点)の二つに分かれているのですが、テクニカルスコアにAIが入ればそういった問題は全く解消するので、私は技術点をAIに任せたほうがいいのではないかという見解を持っています。つまり、これからは、AIと人間の相互補完的な演技の評価システムを構築していく時代であると考えています。

──最後にメッセージをお願いします。

宮本:こうしてスケートの映画ができるというのは本当に嬉しいことです。是非みなさんもスケート場にお越しになって、スケートを体験してみてください。とっても楽しいので。その時僕が滑っていたら一言声をかけていただいて(笑)。是非リンクにいらしてください。

町田:この映画は、ジョン・カリーの身体の美、作品の美を堪能できる作品であるとともに、きらびやかな氷上の舞台の裏側では、様々な困難を抱え、それと闘いながら舞台に立つ姿が描かれています。それは今も変わりません。多くのプロフィギュアスケーターや選手が、カリーが闘ってきたことと同じような葛藤と向き合いながら氷上で演技をしています。

これからも、ぜひ氷上で活躍している選手、プロフィギュアスケーター全員を、温かい目で応援して頂けたらうれしいです。

(取材・文:坂田正樹)


本トークの様子は「J SPORTSオンデマンド」ではノーカットで5月10日(金)~5月31日(金)まで見逃し配信。この作品を配給するアップリンクの配信サービス「アップリンク・クラウド」で5月25日(土)から6月3日(月)まで無料配信する。

◆J SPORTSオンデマンド
[見逃し配信] 5月10日(金)~5月31日(金)
https://jod.jsports.co.jp/p/winter/KENJI/190426-1730L

*配信時間は変更になる場合があります。
*ノーカットでお届けします。

◆アップリンク・クラウド
[無料配信] 5月25日(土)13時~6月3日(月)13時まで
https://www.uplink.co.jp/cloud/features/1998/




映画『氷上の王、ジョン・カリー』
© New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

映画『氷上の王、ジョン・カリー』
5月31日(金)、新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、
伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影。

監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9
原題:The Ice King
字幕翻訳:牧野琴子
字幕監修・学術協力:町田樹
配給・宣伝:アップリンク

公式サイト

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