骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2008-09-18 14:57


よろずエキゾ風物ライター、サラーム海上が語るエキゾ音楽の魅力

久保田真琴さんをゲストに、恒例イベント「サラーム海上のエキゾ夢紀行」がアップリンク・ファクトリーで開催された。
よろずエキゾ風物ライター、サラーム海上が語るエキゾ音楽の魅力
  • 久保田麻琴さんプロデュースのアルバム『バリ・ドリーム』

  • 同じく久保田さんプロデュースのアルバム『沖縄・宮古の神歌』

  • ワールドミュージック・マエストロであるアーティスト久保田麻琴さん

今回、サラーム海上さんとともに登場したのは、音の錬金術師、久保田麻琴さん。『宮古島の神歌』と『バリ・ドリーム』の2枚のアルバムをプロデュースしたばかり。トークでは、久保田さんのこれらの2作品を巡る旅路が写真や映像とともに紹介された。

まず、久保田さんが話してくれたのは沖縄と自分との関係。1970年の秋に学校を休学して渡航したアメリカで、ウッドストック、サイケデリック音楽の洗礼を受けたという。特に滞在したバークレー近辺は、「毎週のようにサンフランシスコ系のバンドがライブを行い、そのリラックス感が良かった」そう。

1974年、久保田さんは再びアメリカの地を踏むことになる。その頃からエコロジーや、オーガニックといった言葉が聞こえるようになり、それが高じて聖地といわれたハワイへと旅に出てみると、「エキゾな、濃いアジア体験」を受けるに至ったという。そして、さらにアジアを見てみたいと、今度は沖縄へ。そこで喜納昌吉の『ハイサイおじさん』を見出すこととなる。

その久保田さんが30年ぶりに沖縄へ旅立ち、発見したのが宮古島の神歌。神行事は、今では沖縄全体でも殆ど残っていないという。しかし、そんな知る術もないことを知りたいという一途な思いが、今回の西原での神歌との出会いにつながったのだろうと振り返る。


会場では、3人の歌い手による神歌の収録の様子の映像が流れた。今回のCDには納められなかった、若い男女の恋の歌を披露する様子も。聖と俗とがつながっている神歌の神秘性が感じられる光景であった。

さらには、youtubeで発掘したという「伊良部の神童」少年を、実際に探して収録に至ったという逸話も。その神がかり的なパフォーマンスに、会場は驚きと、温かい笑いに包まれた。久保田さんが沖縄に戻ったのは、遠い地エチオピアで、まるでかつての日本を見ているかのような謙虚な人々に戻ったのがきっかけだという。そこで、遠くに向いていた目をもう一度振り向かせることが出来たのだと語ってくれた。

後半では、新作の『バリ・ドリーム』の制作過程が紹介された。インドネシアを旅して実感したのは、「まだまだディープなものができる」ということ。沖縄との関連性も感じられ、少数民族との関連性もミックスしていく対象にあるそうだから、今後がますます楽しみである。CDの中から、“Prayer”という曲に合わせ、サラームさんがバリで撮った写真の数々が映し出された。

最後はパキスタンからやって来たFive Star Musical Groupの日本での演奏風景が紹介された。久保田さんは、「いま、東京という辺境な地で、様々な音楽を聴くことができる。メインストリームとは違うところでライブが行われていることにもっと注目していきたい」そう。たくさんのエキゾな音楽に包まれて、和やかな雰囲気でイベントは幕を閉じた。

終了後、サラーム海上さんに話を訊いた。

―― エキゾ的なワールドミュージックは、いわゆるグローバリズムの名のもとに席巻するメジャーな音楽産業に対抗するのではなく、その境界線をゆるやかに侵食しているようにも思えが、そのことに対してどう思うか。
ワールドミュージックはもともと、インディーズがメジャーになったりすることもあるわけで、それはその通りだと思う。ただメジャーは、ワールドミュージックが売れるとは最初からあまり思っていないのではないでしょうか。

―― 9月に上梓される本の見どころについて。
もとはテレビブロスやソトコトなどの雑誌の連載が中心なので、短いコラムなんですよ。だから見開きでひとつの国とかインドネシアのガムランがあって。そこにうちの奥さんのイラストが入って、紹介したい音楽が載っています。だからトイレに持ち込んで読んでもらう位の感じで、ワールドミュージックとか民族音楽のことが初心者の人でもわかるような見開き本になっています。それと同時に入門的なものではなく、上級者の方にも読んでいただけるような内容になっていると思います。

―― サラームさんのエキゾ音楽のルーツはどこにあると思うか。
子供の頃からあやしい音楽が好きだったんですけど、インディ・ジョーンズの「レイダース/失われたアーク」の中で、インディ・ジョーンズが砂漠の真ん中でナツメヤシを放り投げるシーンがあるでしょう。そこで「アッラー、アークバル」という音が聞こえてきて、なんだこの得も言えぬ音楽は、と思って。後でそれがイスラム教のモスクから流れる祈りのコーランのフレーズだということがわかって。それでいつの間にか、中東の音楽が好きになっていったんです。

(取材・文:齋藤理恵)

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【久保田麻琴関連サイト】

・久保田麻琴(KING RECORDS)
http://www.kingrecords.co.jp/kubotamakoto/

・アルバム『宮古島の神歌』(沖縄WEBマガジンryuQ)
http://ryuqspecial.ti-da.net/e2230167.html

・アルバム『バリ・ドリーム』
http://listen.jp/store/album_4540399096858.htm

【サラーム海上関連サイト】

・サラーム海上公式サイト
http://www.chez-salam.com/
★10月下旬『エキゾ音楽超特急完全版』(文化放送メディアブリッジ)発売!

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『サラーム海上のエキゾ夢紀行』
日程:2008年10月21日(火)
時間:19:30開場 / 20:00開演
料金:2,000円(1ドリンク付)
会場:アップリンク・ファクトリー(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)[地図を表示]

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