骰子の眼

cinema

東京都 ------

2008-09-16 21:00


ラストの思いがけない結末に感動!『ベティの小さな秘密』クロスレビュー

ゴダールの元妻、アンヌ・ヴィアゼムスキーの原作を『アメリ』のギヨーム・ローランが脚本化。子供時代の不安と冒険心を描く“現代のおとぎ話”。
ラストの思いがけない結末に感動!『ベティの小さな秘密』クロスレビュー
©2006 – PYRAMIDE PRODUCTIONS/FRANCE 3 CINEMA/RHONE-ALPES CINEMA

長年、子供時代についての映画を撮りたいと考えていたジャン=ピエール・アメリス監督は、原作となる素材をずっと探していた。そして出会ったのが、アンヌ・ヴィアゼムスキーが親友から聞いた実話を元に執筆した小説「Je m’appelle Elisabeth」だった。監督はそこに描かれていた、孤独な女の子と精神病院から逃れてきた青年の友情に感動し、映画化に興味を持つ。同じ頃、プロデューサーのファビエンヌ・ヴォニエが、映画化の権利を手に入れプロジェクトが動き始めた。 脚本を手がけたのは、『アメリ』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたギヨーム・ローラン。アメリス監督は、その脚本にファンタジーの要素を加えていった。

ジャン=ピエール・アメリス監督に作品について話を訊いた。

ベティ

── 子供を主人公にした映画を撮った理由を教えてください。

「子供の視点を見つめなおすというのは、今回のテーマでした。大人の方には自分の子供時代を思い起こしてもらい、子供たちにはヒロインに自分自身を重ね合わせ、感情移入して欲しいと思いました」

── 原作はアンヌ・ヴィアゼムスキーの小説ですが、どう脚色しましたか?

「原作を何度も読み返し、湧き上がってきたインスピレーションを大切にしました。その上で小説にいくつか独自の要素を加えています。それは大きく3つあり、両親の不仲、犬の存在、そしてエピローグの屋根の上のシーンです。私にとって最も重要な要素である、“子供のころに感じる恐怖心”については、アンヌが小説で見事に表現してくれていました。小説というものは、そこに書かれていることをそのまま映画化するのではなく、根底にあるテーマを読み取って咀嚼しつつ、同じテーマを表現するのが大事だと思います。アンヌは、ゴダール監督と結婚していたこともあり、映画を知り尽くしている方。私の選択に全面的な信頼をおいてくれて、書き換えた部分もすべて受け入れ、評価してくれました」


── 映画化で気を配った点は?

「僕はこの作品が長編6作目になるんですが、これまではドキュメンタリータッチの映画を撮ることが多かったんです。今回は子供時代を表現するために、美術にかなりこだわりました。テーマカラーは赤と緑です。ジャック・ドゥミの『ロバと女王』に出てくる小屋の雰囲気を参考にしたりと、ヒッチコックの『レベッカ』にインスピレーションを受けたりしています。美術は、トリュフォー映画で知られるジャン=ピエール・コユ・スヴェルコです。不安と期待が入り混じった雰囲気を上手くかもし出してくれたと思います」

── 作品が完成したお気持ちをお聞かせください。

「まなざしにいろいろな感情を秘めた主人公のベティは、人と出会い、冒険をし、さまざまな問題を切り抜けて成長していきます。フランスでいくつかの学校で上映する機会があったのですが、子供たちは自分たちの感じる孤独や不安が、自分だけのものじゃないと分かったみたいです。この映画を見た様子が対話するようになったという話を聞き、嬉しく思っています。子供にも、大人にもぜひ見ていただきたい作品です」


『ベティの小さな秘密』2008年9月20日(土)よりシネセゾン渋谷他、全国順次ロードショー

監督・脚色:ジャン=ピエール・アメリス
出演:アルバ=ガイア・クラゲード・ベルージ、ステファヌ・フレイス、ヨランド・モロー、マリア・ド・メデイルシュ、他
2006年/フランス/90分
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ+アステア

『ベティの小さな秘密』公式ホームページ
阿部芙蓉美公式ホームページ


レビュー(4)


  • まいこっこさんのレビュー   2008-09-04 12:02

    ベティのやさしさ

    ライブ付の試写会にご招待頂きありがとうございました。この作品ではコドモの純粋な心と、その心がわからない両親、父親の勤める精神病院での患者との心のつながりが描かれており、決して子供向けの映画ではありません。心が透き通るようなやさしさが詰まった作品です。...  続きを読む

  • shiさんのレビュー   2008-09-04 20:07

    懐かしさがこみあげてくる作品

    確か5歳の時。 大きなお椀のような形をした滑り台と迷路がある、隣町の憧れの公園。 幼稚園の先生の引率で1回行ったきりだから、道もよくわからないし、途中に大きな道路があって、その向こうには子供たちだけでは行ってはいけないと言われていたのだけれど。 ...  続きを読む

  • kerakutenさんのレビュー   2008-09-07 00:12

    わたしがまもってあげる

    ラストの思いがけない結末には、 「どこにこんなに涙があったんだろう」 と驚くほどの涙が頬をつたって膝を濡らしました。 10歳のベティはちょっとこわがりの繊細な女の子。 大きなお屋敷に住んで、パパは精神病院の院長。 一見幸せそうにみえるけ...  続きを読む

  • michiさんのレビュー   2008-09-10 21:05

    忘れていた気持ちを思い出した映画 「ベティの小さな秘密」 

     webDICEさんにご招待いただき試写へ行ってまいりました。 ありがとうございます。  今日は試写の前に、本作のイメージソング「trip-うちへかえろ-」を歌っている阿部芙蓉美さんのスペシャルライブがありました。 ありふれた日常をイメージ...  続きを読む

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