2018-06-25

拙作『タッチストーン』が上映されるエストニアのパルヌ国際映画祭について、ちょっと調べてみたら、驚いたことが幾つかありました。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

拙作『タッチストーン』が、2018年6月25日(月)〜7月8日(日)にエストニアのパルヌで開催されるパルヌ映画祭で、Docs for Kidsというプログラムの1本として上映されます。
https://note.mu/yoshidafilms/n/nedb3b65a5344
http://mona.ee/filmfestival/index.htm
http://mona.ee/filmfestival/films2018/touch_stone_15_min.htm
https://www.facebook.com/ParnuFF

私がエストニアの「パルヌ」という地名とパルヌ映画祭について知ったのは、『阿賀に生きる』(佐藤真監督・小林茂撮影)のチラシやパンフレットなどに、「パルヌ映画祭グランプリ受賞」と書かれていたことがきっかけですが、そのようなこともあり、私にとって海外のドキュメンタリー映画祭といえば、まずはエストニアのパルヌでした。そのような映画祭で拙作が2年連続で上映されることは大変嬉しいのですが、この映画祭についてちょっと調べてみたら驚いたことが幾つかありました。

まず、パルヌ映画祭は、旧ソ連時代の1987年にレナルト・メリ(1929-2006)という日本ではあまり知られていない民族誌映画の監督が、民族誌映画や映像人類学の重要性を認識して、バルト三国で初めての映画祭として創設したのですが、驚いたことに、この人物は後にエストニア独立運動の指導者となり、エストニアの大統領になるのです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%AA

日本では旧ソ連の民族誌映画に詳しい東京シネマ新社の岡田一男さんが親交があったようで、日本でもたまにレナルト・メリの上映会が開催されています。
https://www.facebook.com/events/1638993783053527/
http://blog.livedoor.jp/ethnolo/archives/55629171.html

次に、パルヌ映画祭には、映画祭の会場での上映と同時にエストニア国営放送でも放送され、視聴者がネットや電話で投票して賞が決まるエストニア国民賞という部門があるのですが、パルヌ映画祭は、「国民全員が審査員」という部門を持つ世界で唯一の映画祭だそうです。今年は以下の6作品がエストニア国民賞にノミネートされています。
https://etv.err.ee/l/dokumentaalfilmid/xxxii_parnu_filmifestival

また、パルヌ映画祭は、パルヌでの開催が終了後、エストニア各地を巡回するのですが(今年は8か所)、その中には人口がわずか35人のManilaid/Manõjaという離島も含まれているのです。エストニアには離島が1500以上あるというのも驚きなのですが、なぜ人口35人のその島で巡回上映が行われるのかは謎です。この島は、世界無形遺産に登録されていて観光地にもなっているキヌフ島の姉妹島らしいのですが、ネット調べてみましたが、日本語の情報は見当たらず、日本語の表記も分かりませんでした。
https://en.wikipedia.org/wiki/Manilaid
http://www.kihnuinstituut.ee/en/about-us/
http://tocana.jp/2017/12/post_15331_entry.html

吉田孝行作品『タッチストーン』
(撮影・編集:吉田孝行/2017年/15分/HD/16:9/カラー&白黒)
日本のとある庭園に置かれている白い色の大きな丸い石。大理石の彫刻作品であり、その上に子ども達はよじ登って遊んでいる。「自ら進んで子ども達のために仕事をする芸術家は、間違いなく普遍的なものにまで達するのだ」というフランスの映画批評家アンドレ・バザンの言葉に着想を得て制作された。本作はまた、アンドレ・バザンが論じた映画と他芸術との美学的共生の可能性を、彫刻を対象として探求した映像作品でもある。前作『ぽんぽこマウンテン』に続いて、子ども達の姿を描いた映像作品の二作目。

【吉田孝行プロフィール】
1972年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程終了。映画美学校で映画制作を学ぶ。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを務める。ドキュメンタリー専門誌「neoneo」の編集に携わる。共著に『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(森話社)など。近作『ぽんぽこマウンテン』(2016)が、デトモルト国際短編映画祭、ジョグジャ・ネットパック・アジア映画祭、サラミンダナオ・アジア映画祭など、20か国以上の映画祭や展覧会に選出されている。イラク北部クルド自治区で開催されたスレイマニヤ国際映画祭2017で審査員を務める。新作『タッチストーン』(2017)が、2017年12月にインドネシアのジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭に選出され世界初上映される。

【Blog】https://note.mu/yoshidafilms
【Twitter】https://twitter.com/yoshidafilms
【Facebook】https://www.facebook.com/yoshidafilms
【Instagram】https://www.instagram.com/yoshidaimages/
【関連記事1】http://www.rudaw.net/english/culture/03102017
【関連記事2】http://www.cinematoday.jp/page/A0005386
【関連記事3】https://jp.sputniknews.com/opinion/201611042976112/
【関連動画】https://www.youtube.com/watch?v=a0MmTd94kZ4

コメント(0)


吉田孝行

ゲストブロガー

吉田孝行

“映像作家。これまで世界30か国以上の映画祭や展覧会で作品を発表している。近作に『タッチストーン』『エイジ・オブ・ブライト』『ある日のアルテ』『ある日のモエレ』など。共著に『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。”


関連骰子の眼

関連日記