2008-03-16

映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」
監督:若松孝二   日本

3時間の大作だが、そう長いとは感じない。初めの1時間は連合赤軍が出来るまでの経緯を年表と当時の映像や新聞を使って説明していて、あとの2時間で山岳ベースに入ってからの話し。

これまでもあさま山荘事件をあつかった映画はあったけど、「突撃!あさま山荘事件」は警察側の立場で描いた作品だったし、「光の雨」は劇中劇という形をとってしまったので、なんだか主題がボケてしまった気がする。(ただ、迫力は「光の雨」の方があった)
この「実録 連合赤軍」は、“あさま山荘事件とはなんだったのか”ってのに正面から答えようとした作品だと思う。物語の終盤、若干16歳のメンバーが言い放った一言が(たぶんあれはフィクションなんだけど)監督の総括なんだろう。

この映画、とてもよく出来た映画だと思う。下準備はかなりされているらしいし、難しい内容なのにスッキリまとめられていて、かつエンターテイメント性もある。音楽も良い!

映画としては評価するけど、映画評で書かれいるように、片寄りなく公平な立場で描かれたものだ!と言い切るのは危険だと思う。
若松監督は、当事者である坂東國男の証言を元に脚本を作ったらしいんだけど、そのせいか、坂東の印象が薄い。特にリンチシーンで目立った活躍はしていない。坂東の主観に近いから坂東の印象が薄いのかもしれないし、坂東が(意識的か無意識か)自分を擁護して話しているのかもしれない。あと考えられるのは、若松監督が坂東と直接接触したことで、坂東に特別な思い入れができたからかもしれない。
もちろん、本当に坂東は大人しい性格で積極的に「統括」に加担しなかったのかもしれないけど、坂口弘の手記「あさま山荘1972」では、かなり暴力的で猟奇的な性格に書かれていたと思う。他の何かででも、坂東は粗暴な人であるという印象を受けた。
誰かが嘘をついている、というわけではない。ただ「誰かの視点」だということだろう。

坂口と坂東のどちらがより暴力的か、なんて問題は私たち一般人にとっては、大した問題ではない。だけど、こういう小さな違いを意識して、この「事実」はどの立場からみた「事実」なのかってのを考えることが、大切なんじゃないかなと。

結局事実なんて、誰かの記録と、誰かの記憶の集合でしかないんだもんな、なんて思ったりした。

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