2013-01-04

『LOOPER/ルーパー』クロスレビュー:ラストの選択をどう感じるか このエントリーを含むはてなブックマーク 

『LOOPER/ルーパー』は、近未来の“現代の自分”と“未来の自分”が対峙する卓抜した着想で作られた映画である。この設定を聞いただけでも観たくなる。暗殺者が主人公のアクション映画としての見せ場もありながら、SF世界が色々な要素で構成されていて、話がかなり複雑だ。

ユニークな設定が色々あり、近未来での目薬型のドラッグ描写など世界観も愉快だった。過去の自分が誰かに捕まって拷問されると、未来の自分の体に反映されていくアイディアも面白い。現代の自分であるジョセフ・ゴードン=レヴィットが未来の自分であるブルース・ウィリスに変化していく30年の時を一気にみせるモンタージュもとても楽しかった。

また、この映画の中での未来が描かれている中国は煌びやかで華やかな街であるのに対して、現代が描かれているアメリカは浮浪者がいる貧困を感じさせる街として出てくる。中国資本で作られた映画であることを感じさせるが、さらっと現在の社会情勢が織り込まれた世界観にもなっていると思う。

先の読めないストーリーであるが、タイトルの意味がわかるクライマックスは圧巻で映画的興奮があった。
アクション一辺倒でなく、哲学的な物語であり、愛の物語に集結させていることは見事であり、高く評価されているのも頷ける。

『LOOPER/ルーパー』は、ネタバレせずに語るのが難しいが、『恋はデジャ・ヴ』や『ミッション:8ミニッツ』などのタイムループもの映画に通じる哲学的な物語だ。
自分以外の人の人生を本当に想像し思いやり生きられるのか。
他人のことを考えて喜びを持って生きられるのか。
そういったことを観た者に問う結末には余韻が残り、深く考えさせられた。

同時に、この物語は、復讐の連鎖や愛の強さも描いていると思う。
「ルーパー」とは30年後の未来からタイムマシンにより送られてくるターゲットを葬り去る殺し屋のことである。殺し屋は人を遠ざけ、孤独にしか生きられない。そんな人物が愛を知り、守りたい人ができたことで運命は大きく変わっていく。
辛い事実を目の前に、それを受け入れ、不毛な憎しみや怒りの負のループを断つには絶対的な愛の強さなのだ、とこの映画は強く訴えかけているのではないだろうか。

しかし、私には観終わって違和感が残った。
それはタイムトラベル物特有の齟齬を感じてしまったからかも知れない。
時間軸が複雑で気になってしまうだけでなく、
タイムトラベル、未来世界、超能力、とSFにSFがさらに加わったような話を2時間にまとめるのはやっぱり無理矢理な感じが少ししたのは事実である。
それでいて語り口も上手くないと感じる部分もあってダレ場も正直あった。
設定故、仕方のないこととも言えるが、モノローグが多く、説明的なのが目に付いた。
前半の語り口なんて小説のように感じた。

このタイムトラベルに乗れるかどうかが本作の一つの鍵であり、ラストの主人公の選択にも人によって意見が分かれると思う。

それは『LOOPER/ルーパー』が生き方までをも問う映画であるからかもしれない。
賛否が分かれる映画だろうが、本作を観た後、色々と意見を交わし語りたくなる魅力があるのは間違いないと思う。
どちらにせよ2013年必見の映画の一本であると思う。

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tsunetaku

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