2008-05-07

ソクーロフはヒトラーに多くを語らせる このエントリーを含むはてなブックマーク 

ブログ「だめ日記」から
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「モレク神」をスクリーンで観た!「牡牛座」でレーニンを、「太陽」で昭和天皇を描いたソクーロフが、ヒトラーをテーマに“権力者が見せる弱さ”を描いた99年の作品。公開当時、このメインビジュアルには衝撃を受けたものだ。

ただ今回も、行こう!と思ってから少しだけ迷った。それは、引っ張り出してきた朝日新聞の切り抜きに
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ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督が、ヒトラーと愛人エバの山荘でのひとときを、独自の詩的な映像美でつづった映画
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とあったからだ。見出しなんか「詩的映像で描く病んだヒトラー」だ…睡魔に襲われそう。でもそんな心配は杞憂でした。

もちろん、まず映像が美しいんだよ!と言いたくなる気持ちはよく分かる。紗のかかった画面に(フィルターやガラスを通しているらしい)、完璧な構図、霧深い宙に、ソラリスがごとく浮かぶ山荘――ソクーロフはとにかく画をものすごく綺麗に撮る。「エルミタージュ幻想」でも、素晴らしい光景をこれでもかと堪能させ、最後に霧深い窓外のショットを持ってきてたなあと思い出す。

描かれたヒトラーに目を向けても、やっぱり眠くなるような代物では決してない。喋る喋る。あのイメージそのままで上機嫌に踊ったかと思えば怒鳴りつけたり、あと眠ったフリしたりエバにお尻を蹴られたりしてた。エバが「甘えん坊よ。私以外には誰もあなたに逆らえない」と言うと、「分かっている。私は最低の男だ」と言ったりする。

ソクーロフは、
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ヒトラーを徹底的に“ひとりの男”に引きずり降ろさなければ、歴史の悪循環は断ち切れない
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と語ったそうだが(公開時のチラシより)、私には“権力者が見せる弱さ”を上手く撮った、ぐらいのの印象だった。やっぱり皆がヒトラーに過剰に気を使い、やっぱり脱走兵への温情を求める司祭に、ヒトラーは「教会は矛盾している!死者を崇めながら、死に行く者はおらん!」と言ってどっか行っちゃう。そうしてやっぱり、最後にヒトラーはエバを残して山荘を去る。

なにか不安な気分を煽るようにずーっと嫌な音(降りしきる雨のような音や、どこかで水が滴り続ける音、遠い砲撃の音)がしているのが妙に記憶に残る。

ちなみに、今回の上映には79年の短編「ヒトラーのためのソナタ」がくっついていて、監督のヒトラーへの関心の強さが伺えた。

キーワード:

ソクーロフ / ヒトラー / モレク神


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mari

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