骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2010-01-17 09:46


[CINEMA] 「妻が初めて自分の気持ちを吐き出すシーンにぐさりとくる」─『シャネル&ストラヴィンスキー』クロスレビュー

シャネルの5番と「春の祭典」とのミッシングリンクを埋めるスタイリッシュで奇妙なラブストーリー
[CINEMA] 「妻が初めて自分の気持ちを吐き出すシーンにぐさりとくる」─『シャネル&ストラヴィンスキー』クロスレビュー
(c)EUROWIDE FILM PRODUCTION

CMやミュージックビデオでその才能を開花させ『ドーベルマン』(1997年)で鳴り物入りの監督デビューを果たしたヤン・クーネンらしく、前半で展開されるイゴール・ストラヴィンスキー「春の祭典」のスペクタクルな舞台から、徹底した映像美が繰り広げられる。その初演での挫折により意気消沈する天才に、彼をサポートしようと手をさしのべるココ・シャネル、そしてイゴールの妻と家族との愛憎の描かれ方も決して背徳的でなく、実にスタイリッシュなのだ。ひとつひとつがファッション・フォトのような絵になる画面は、シャネルの美意識を継承している。

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(c)EUROWIDE FILM PRODUCTION

ストラヴィンスキー一家とシャネルとの風変わりな共同生活のなか、ふたりの偉大なる才能が突き動かされるように惹かれ合う姿も、いたずらにドラマチックになることを避けているようだ。ノーブルな美しさを持つアナ・ムグラリス演じるシャネルの香水作りへ情熱を傾けるすごみさえ感じさせる姿、マッツ・ミケルセンがその苦み走った表情で表現するストラヴィンスキーという男のある種の軽さのようなものが、効果的なアンサンブルとなり迫ってくる。極めて限定された空間での物語ながら、あえて台詞での説明を避け、映像で感情の陰影を伝えようとする監督の意図は成功しているように思われる。彼の子供が庭で遊ぶ姿、妻の手紙のモノローグといった脳裏に焼き付くシーンたちが、シンプルな恋愛劇にふくらみを与えている。果たしてふたりの愛は本物だったのか?エンドロールの最後まで観たとき、あなたはどんな感想を持つだろうか。


『シャネル&ストラヴィンスキー』

2010年1月16日(土)シネスイッチ銀座Bunkamuraル・シネマ他全国公開!!

監督:ヤン・クーネン(『ドーベルマン』)
脚本・原作:クリス・グリーンハルジュ(『COCO&IGOR』竹書房文庫刊)
音楽:ガブリエル・ヤレド(『愛人/ラマン』『コールドマウンテン』『イングリッシュ・ペイシェント』『リプリー』『善き人のためのソナタ』『シルヴィア』)
キャスト:アナ・ムグラリス(『そして、デブノーの森へ』『NOVO/ノボ』)、マッツ・ミケルセン(『キング・アーサー』『007カジノ・ロワイヤル』)
1時間59分/仏語・英語・露語/35mm/カラー/ドルビーSRD/仏公開:2009年12月
提供・配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ
宣伝:アニープラネット
公式サイト



レビュー(5)


  • kouheiさんのレビュー   2010-01-08 21:43

    『シャネル&ストラビンスキー』レビュー

    1920年代、当時が淡々と描かれている作品であり、ストラビンスキーの音楽とシャネルの芸術センスが映し出される。一見華やかに感じる世界だがどこか冷淡に見え当時の産業革命に代表される生活様式の大量生産、大量消費とは一線を画す。  『春の祭典』初演を観た...  続きを読む

  • yuccaさんのレビュー   2010-01-09 17:48

    PVのような映画

       映像と音楽が印象に残った。冒頭、『春の祭典』の初演の様子は、一気に誰もの心をこの映画にに引き込ませる強烈な場面だと思う。それ以降は、あれほど大きな音は全く出てこず、静かに物語が進んでいく。  どの場面を切り取っても映像が美しい。綺麗な音楽も...  続きを読む

  • gondwanaさんのレビュー   2010-01-12 16:46

    情けない男

    見終わってすぐ、「だらしない男~」という男声が場内に響き 確かに、これでは天下のStravinskyが可哀想な感有りだと… シャネル側には都合のいい映画かもしれない。 やはり女性は強いんだろう。 それはさておき、果たして二人はそういう仲だ...  続きを読む

  • メグコさんのレビュー   2010-01-16 02:14

    『ココ・シャネル』

    『ココ・シャネル』と『ココ・アヴァン・シャネル』を観たので、ぜひ『シャネル&ストラヴィンスキー』も観たくて、試写会に参加させていただきました。 『ココ・シャネル』と『ココ・アヴァン・シャネル』の2作品についてはストーリーにダブリが多く、どち...  続きを読む

  • snow2012さんのレビュー   2010-01-17 17:29

    パリのエスプリとシャネルを堪能できます!大人の女性必見の映画!

    「花の香りではなく女の香り」を求めたシャネルNo.5誕生物語。 一大帝国を築いたファッションのカリスマがどういう愛を生きたのか、どうやって感性を研ぎ澄まして新しく香水やバレエの衣裳などを手掛けていくのか、その過程を描いています。 1913年「...  続きを読む

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