骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-12-26 12:44


戦場という場のリアリティ、若い兵士達の変遷する〈心の中〉のリアリティが画面に溢れている

ゲームでもフィクションでもない「戦争」を突きつけるドキュメンタリー『アルマジロ』クロスレビュー
戦場という場のリアリティ、若い兵士達の変遷する〈心の中〉のリアリティが画面に溢れている
映画『アルマジロ』より

「劇映画は先にシナリオができるが、ドキュメンタリーはシナリオが最後にできあがる」という形容があるが、今作はアフガニスタンの最前線基地にに派兵されたデンマークの若い兵士に密着したドキュメンタリーだ。国際平和活動という大義名分を掲げ参加する若者たちは、出発前の家族とのやりとりからも、まだあどけなささえ感じさせる。彼らの表情が、断続的な戦地の緊張状態に置かれ続けるなかでどのように変化していくのか。現地の人を守る、という役割から、次第に戦闘行為そのものに快感を見出すようになっていくその過程には、人間の本性が暴き出されている。モラルがズダズダになってしまうこと、それこそが戦争の恐ろしさであることを観客に突きつける。

Afghanistan - Helmand Province. Forward Operating Base (FOB) Armadillo. Danish Team 7.
映画『アルマジロ』より

生きる希薄さを埋めるために戦地へ赴くことを、兵士たちは口にする。戦場が彼らにとってのリアルになったことを、ヘルメットに付けられた小型カメラの映像による臨場感により、観る者は同じように体験する。ギリギリのる精神状態にある若者たちと同じ視点に立つこと。決して遠い国で起こっている、出会うことのない人たちの出来事ではなく、先日の衆院選の重要な争点となっていた憲法改定が自民党の圧勝により現実味を帯び始めているここ日本でも起こりえることだ。私たちは、世界各地で起こる紛争について、そしての日本これからについて、そして命の重みについてあらためて考えなくてはいけないだろう。

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映画『アルマジロ』より



映画『アルマジロ』
2013年1月19日(土)より渋谷アップリンク新宿K's cinema銀座シネパトス
ほか全国順次公開

監督・脚本:ヤヌス・メッツ
撮影:ラース・スクリー
編集:ペア・キルケゴール
プロデューサー:ロニー・フリチョフ、サラ・ストックマン
製作:フリチョフ・フィルム
デンマーク/2010年/デンマーク語、英語/カラー/35mm/105分

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/armadillo/
公式twitter:https://twitter.com/armadillo_jp
公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/armadillo.jp

▼映画『アルマジロ』予告編



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