2010-08-29

曽我部恵一の弾き語り新作『けいちゃん』は、ちょっとだけ怖い? このエントリーを含むはてなブックマーク 

 曽我部恵一の新作は身も蓋もないタイトル、たぶん最も近しい人たちからの愛称であろう『けいちゃん』。ジャケット写真もいままでに無いくらい、まるで徹夜明けに朝に微笑んでいるような生々しさ。このタイトルとジャケットは度肝抜かれました。
 近年、パラノイア的に増える名義の数々(まさかサニーデイ・サービスまで復活するとはねー!)が全て充実しているのは、テーマをバンドごとに振り分けているのが成功しているからでしょう。「幻想」はサニーデイ・サービスで、「衝動」は曽我部恵一BANDで、「メロウ」はランデヴーバンドで、と様々に振り分けられていますが今までに一切顔を見せなかった「ネガティブ」な暗い歌詞が所々に出てくるのが興味深いです。今作の“ギター一本で弾き語り”というフォークソングのコンセプトがそうさせるのか。 韻を踏み続ける歌詞の中で、つい勢いで口走ってしまったかのような吹っ切れ具合が、ちょっとだけ怖かった。

「だれもが何かに怯たまま今日を過ごしている」(“夕暮れの光”)
「死ぬってことはみずぼらしいこと」(“愛ってやつを”)
「「とてもじゃないけどきみにはムリだよ」と夜の幽霊」
「最終出口と書かれたサインがあちこちで笑う」(“夏の夜の夢”)

 他に、ここで引用していいのか迷うような歌詞まで入れると数えきれない。かと言ってアルバム自体は優しく牧歌的な曲もあり暗い印象は無く聞き易いのですが、曽我部恵一の作品で「怖い」って感情を抱いたのは初めてです。最初はただのデモテープの気分で聴いていたのですが、いつもの曲調や歌詞の世界観のなかにゴリッとした異物が結構あることに気付いてから、怖くて怖くて。でも聴いてしまう。冷やっとする夏のアルバムです。


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■曽我部恵一『けいちゃん』CD →http://amzn.to/9lMoKY
■つくづくわたしは演劇そのものより、音楽など他ジャンルから栄養や影響を受けていると痛感する日々です。劇構造とかにも通じてるんだよなあ。

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私事ですが(日記だし)9/21-26、渋谷ギャラリールデコで“視点”というイベントを上演します。
あの『トランス』のように「少人数・どこでも上演可能」な短編を3編、3つの劇団で御贈りするコンペティションです。web DICEにも公演情報が掲載されています。
前回の公演もwebDICEの記事を読んで来てくれた方が居て、アンケートでも好評だったので。ぜひご期待くださいー。
http://www.webdice.jp/event/detail/3193/

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ハセガワアユム(MU)

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“MUというユニットで劇作・演出をやってます。ゲストブロガーとして、稚拙ながら映画や音楽、雑感のつぶやきを投稿して行く感じになります。演劇用語もちらほら出るかもしれませんが、遠慮なく訊いて下さい。演劇界外の方ともコミットしたい気持ちですので、どうぞよろしく。 ”


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