2012-11-19

ガザ地区はなぜイスラエルに攻撃されているのですか このエントリーを含むはてなブックマーク 

[知恵袋]への回答 2012/11/19

<なぜパレスチナは攻撃されて
 がれきの山にされなければならないのでしょうか>

イスラエルの言によれば「ガザを実効支配しているハマスがイスラエルの人びとに対してテロリズムを仕掛けるから」です。

これは、イスラエルがただ一人主張しているわけではなく、アメリカ(イスラエルの全人口に匹敵するユダヤ人が住んでいます)でもヨーロッパの国々(過去70年近くもホロコーストを座視した償いを求められています)でも、強弱の差こそあれ多くの「政府」に支持されています。それぞれの国の市民の考えは政府とは異なることも多いですけど。

では「テロリズム」とは何かを考えてみましょう。テロリズムとは、人びとにテラー(恐怖)を引き起こすことで政治的な目的を達しようとする行為(肉体的な暴力と精神的な暴力の両方)やそのイデオロギーのことです。ただ無目的な暴力の行使ではなく、その暴力によって自分の意に従わせようとすること。つまり、目に見える暴力行為はある目的を達するための手段ですから、その暴力によって何を達成しようとしているかに注意を払う必要があります。ハマスは何を目的にイスラエルにテロ行為をしかけているのでしょう。

では現在、ハマスが実効支配する(ゆえにイスラエルの攻撃下にある)ガザ地区(パレスチナ領土の一部)とはどんなところでしょうか。

ガザ地区は地中海沿いの細長い地域で、海に面した一番長い辺が差し渡し約40キロ、内陸に向けた短い辺は6キロから10キロです。面積は名古屋市よりちょっと大きいぐらい。エジプトと国境を接する南の一部を除き、北と東はイスラエルと接し、西は地中海です。この狭い地域に150万人が生活し、人口のほぼ半数が未成年を含む子どもです。

パレスチナは1967年の第三次中東戦争以来、イスラエルの占領下にあります。国際法に違反する占領ですから、国連はイスラエルに対して何度も占領を解くように要求していますが、イスラエルは聞き入れず現在に至っています。占領下にあるパレスチナの人はイスラエルの許可なく外国に行くことはできませんし(つまり、ほぼ不可能です)、何を輸入し、何を輸出するかも独自には決められません。

ガザ地区は1994年以来周囲を壁で囲まれており、特に2006年にハマスがパレスチナ評議会選挙で勝利して以降は完全封鎖されています(選挙は国際監視団もお墨付きを与える「民主的な」ものでしたが、ハマスが勝利したとたんに国際社会から「無効化」されました)。海からはイスラエルの軍艦が常に見張っています。つまり、どこにも逃げ場はありません。水も燃料も建築資材も食糧も医薬品も、ハマスのテロを助長するとイスラエル当局が指定するだけでもうガザには入ってきません。二つのパレスチナの領土(軍事占領されている西岸地区と封鎖されているガザ地区)の行き来も自由にはできませんから、家族を尋ねることも学校や仕事場に行くこともできなくなりました。

いま、イスラエルはこのガザ地区に対して約1000ヵ所のターゲットを決めて「外科手術のように精密な(とイスラエルは言っています)ピンポイント攻撃」を加えています。その「外科手術のように正確な攻撃」で昨日、ほとんどが子どもと女性ばかりの一家11人が殺されました。その家の稼ぎ手が「ハマスの幹部だから」とイスラエルは言っていますが、その人はハマスの警察で働いていたようです。ガザは完全封鎖されているので仕事がなく(材料が手に入らないので工場なども仕事ができません)、ちゃんと給料をくれる仕事のほとんどはハマスがらみです。

このような行為こそをテロリズムと呼ぶべきだとわたしは思います。いまのような攻撃がなくても、いつ終わるとも知れない、仕事も食糧も燃料もないような生活を強いられること自体が、イスラエルによるテロリズムではないかと思います。時々鬱憤ばらしのように打ち上げるハマスのホームメイド・ロケットなど、まあ、それもテロと言えばテロでしょうが、イスラエルの1トン爆弾に比べれば子どもだましのように見えます。

では最初の疑問に戻って、なぜハマスはイスラエルにロケットを打ち込むのでしょう。「ガザの封鎖を解け」というのが第一義の理由ではないかと思います。何十年もイスラエルの占領を許してきたイスラエル国民と国際社会に対して、これを訴えるための他にどのような方法があるか、わたしにはわかりません。

http://newsfromsw19.seesaa.net/article/302713466.html?1353329908

キーワード:

パレスチナ / ハマス / イスラエル / テロ


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藤澤みどり

ゲストブロガー

藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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